研究等業績 - その他 - 佐竹 將宏
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筋強直性ジストロフィーⅠ型患者の代謝と身体組成の関連性
菊地 和人, 佐竹 將宏, 岩澤 里美, 鈴木 瞭平, 照井 佳乃, 信太 春人, 井上 拓人, 手賀 和輝, 小林 道雄, 和田 千鶴
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) A-57_1 - A-57_1 2019年
<p>【背景・目的】筋強直性ジストロフィー(DM1)患者における脂肪量指数(FMI)および除脂肪量指数(FFMI)などの身体組成は、安静時エネルギー消費量(REE)を変化させる要因であると考えられる。先行研究では、REEと全身のFFMI、Muscular Disability Rating Scale(MIRS)とFMIにそれぞれ有意な正の相関を示し、FMIと呼吸機能には有意な負の相関を示したと報告されている。しかし、REEと身体組成に関する報告はまだ少ない。本研究の目的はDM1患者におけるREEと身体組成の関連を明らかにすることである。</p><p>【方法】当院入院中の歩行不能なMIRS5の男性DM1患者10名(年齢50.6±7.5歳、BMI20.5±2kg/m<sup>2</sup>、CTGリピート数1271±510回、FIM74.6±23.2点、%VCは50±15%)を対象とした。代謝の測定には、携帯型呼気ガス代謝モニター(MetaMax3B:CORTEX社製)を使用した。基礎代謝量(BEE)はHarris-Benedictの式で推定し、REEは安静臥位のエネルギー消費量(EE)とした。身体組成を二重エネルギーX線吸収測定法で得られた全身及び四肢の除脂肪量と脂肪量を身長の二乗で除したFFMIとFMIを算出した値とした。統計解析はREEとBEEの比較を対応のあるT検定、REE及び基礎情報と身体組成の関連をPearsonの相関係数と偏相関係数を用いて検討し、有意水準は5%未満とした。</p><p> </p><p>【結果】REEと全身FMI、全身FFMI、上肢FMI、下肢FMI、上肢FFMI、下肢FFMIに相関関係を認めなかった。REEは1088±200kcal、BEEは1345±229kcalで、BEEと比較してREEは有意に低値を示した(p<0.05)。BMIと上肢FFMI(r=0.74、p<0.05)、下肢FFMI(r=0.89、p<0.01)にそれぞれ有意な正の相関を認めた。CTGリピート数と下肢FMIに有意な負の相関を認めた(r=-0.79、p<0.01)。%VCと全身FFMIに有意な正の相関を認めた(r=0.67、p<0.05)。</p><p> </p><p>【考察および結論】REEとFFMIの関連はなかった。BMIは四肢の骨格筋量を反映し、重症な患者ほど下肢の脂肪萎縮を呈していたことが示唆された。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は対象者に対して、研究の目的と方法、期待される効果、研究協力に関する利益、不利益を伝えたうえで異議申し立て可能であること、また個人の人権擁護においても患者を特定できる情報を一切用いないことを口頭及び紙面にて説明し同意を得た。本研究は、国立病院機構あきた病院倫理審査の承認(No.29-5)を受け、ヘルシンキ宣言に基づいて実施した。</p>
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転倒歴を有する高齢者に対する小型3軸加速度計を用いた二重課題歩行能力の検討
鈴木 瞭平, 佐竹 將宏, 岩澤 里美, 菊地 和人, 木元 裕介, 照井 佳乃
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) C-92_2 - C-92_2 2019年
<p>【はじめに、目的】</p><p>近年は、歩行中に一つの課題の遂行を求める、二重課題(Dual Task;以下DT)歩行が着目されている。DT歩行では高齢者は若年者と比較し、歩行速度や安定性の低下、姿勢動揺が増大することなどが報告されている。 DT歩行において転倒に着目した研究は散見されるが、歩行中の体幹動揺性や左右対称性について加速計を用いて着目した研究は少ない。そのため、本研究では高齢者のDT歩行における歩行能力について、転倒歴による違いを明らかにすることを目的とした。</p><p> </p><p>【方法】</p><p>対象者は歩行補助具を使用せず16m以上独歩可能な65歳以上の高齢者54名(男性17名、女性37名)であった。</p><p> 対象者の背中に専用ベルトで小型加速度計を第6胸椎部および第3腰椎部の2か所に装着し、快適歩行とDT歩行を実施した。計測機器は8チャンネル小型無線モーションレコーダー(MVP-RF8-HC-500;マイクロストーン社製、45mm×45mm×18mm)を使用した。得られた加速度より、歩行周期変動係数(Coefficient of Variability;以下CV)、三軸平均Root Mean Square(以下RMS)、Lissajous Index(以下LI)を算出した。DT歩行として、減算課題を課した減算歩行と、ボール運び課題を課したボール運び歩行の2種類を実施した。</p><p> その他、心身機能評価として、30秒chair-stand test(以下CS-30)、Timed Up and GO test(以下TUG)、Mini Mental State Examination(以下MMSE)、Trail Making Test(以下TMT)を実施した。</p><p> </p><p>【結果】</p><p>対象者の内、転倒歴のある者は11名であった。CS-30、TUG、MMSE、TMTは転倒歴の有無で有意な差は認められなかった。また、快適歩行、ボール運び歩行において歩行速度、CV、RMS、LIそれぞれで転倒群、非転倒群に有意な差は認められなかった。しかし、減算歩行において歩行速度は転倒群で1.3±0.2m/s、非転倒群で1.4±0.2 m/sとなり、転倒群が有意に低かった。また、胸椎と腰椎のRMSは転倒群でそれぞれ7.3±2.6 m/s <sup>2</sup>、7.2±2.6 m/s <sup>2</sup>、非転倒群でそれぞれ5.3±2.0 m/s <sup>2</sup>、5.2±2.0 m/s <sup>2</sup>となり、転倒群では胸椎と腰椎のRMSは有意に高いことが認められた。CV、LIでは転倒群、非転倒群に有意差は認められなかった。</p><p> </p><p>【結論】</p><p>転倒群では減算歩行の歩行速度と胸椎・腰椎RMSでのみ、非転倒群と有意差が認められたことから、転倒リスクの高い者は減算歩行において体幹動揺性が増大する可能性が示唆された。したがって、高齢者に対して減算歩行を実施し、歩行速度やRMSを評価することで、CS-30やTUG、快適歩行では評価できない転倒リスクを評価することができる可能性が示唆された。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は秋田大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(受付番号1761)を得ている。対象者へは本研究の目的と内容を書面および口頭で説明し、書面にて同意を得た上で実施した。</p>
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Approaches to cough peak flow measurement with duchenne muscular dystrophy
Kikuchi K.
Respiratory Care ( Respiratory Care ) 63 ( 12 ) 1514 - 1519 2018年12月
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Shioya T.
Respiratory Investigation ( Respiratory Investigation ) 56 ( 4 ) 292 - 306 2018年07月
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Saito M.
Rigakuryoho Kagaku ( Rigakuryoho Kagaku ) 33 ( 4 ) 569 - 576 2018年
〔目的〕筋腱温存法とDall法のTHA術式で身体機能と体幹,骨盤傾斜角度の経時的変化を比較検討した.〔対象と方法〕MIS群7例9股,Dall群14例14股を対象にROM,筋力,10 m歩行時間,HHS,歩容を術前,術後1週,2週,4週で評価し,比較対照は健常群10例10股とし経時的推移を分析した.〔結果〕術後4週でMIS群は股関節伸展,外転筋力が回復しDall群は外転筋力が遅延した.MIS群の体幹,骨盤傾斜は改善しDall群の骨盤傾斜は残存した.両術群は健常群より有意なROM制限,筋力低下,体幹傾斜がみられた.〔結語〕Dall群に比べMIS群の筋力回復や歩容改善が早かった。THA術式の相違は術後の経過に影響があり,早期から長期的に継続できるような運動内容で指導する必要がある.
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塩谷 隆信, 川越 厚良, 高橋 仁美, 佐野 正明, 照井 佳乃, 佐竹 將宏
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 ( 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 ) 28 ( 0 ) 103s - 1-103s-1 2018年
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Evaluation of gait symmetry using a tri-axial accelerometer in stroke patients
Terui Y.
NeuroRehabilitation ( NeuroRehabilitation ) 42 ( 2 ) 173 - 180 2018年
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Terui Y.
International Journal of COPD ( International Journal of COPD ) 13 3957 - 3962 2018年
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Sumikawa A.
Rigakuryoho Kagaku ( Rigakuryoho Kagaku ) 33 ( 4 ) 561 - 567 2018年
〔目的〕新規3軸加速度計DynaPort MoveMonitor(DMM)の姿勢・動作判定の妥当性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常大学生26名を対象とし,DMMにてCycling(自転車運動)が正しく判定される時間の割合を求めた.Sitting(座位),Standing(立位),Walking(歩行),Stair Walking(階段昇降)について感度の算出,およびBland-Altman分析を行った.〔結果〕自転車運動の正しく判定される割合は約3割であった.歩行と階段昇降の感度は各々80%以上であり,座位と立位を合わせた静的動作としての感度が88.5%だった.〔結語〕DMMにより自転車運動時間の約3割が正しく判定され,座位と立位は合わせて結果を判断する必要性が示唆された.
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回復期脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習の即時効果:─非免荷型トレッドミル歩行練習との比較─
佐藤 瑞騎, 倉田 昌一, 岩倉 正浩, 大倉 和貴, 新田 潮人, 照井 佳乃, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
理学療法学 ( 日本理学療法士学会 ) 45 ( 3 ) 197 - 202 2018年
<p>【緒言】片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)の即時効果を明らかにする。【方法】片麻痺患者10 名(平均年齢71 ± 11 歳)にBWSTT と非免荷型トレッドミル歩行練習(以下,FBWTT)を施行し,10 m 歩行試験の結果を比較・検討した。評価項目は歩行速度,歩幅,歩行率,左右・上下重心移動距離,左右・上下RMS,麻痺側脚・非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数とし,3 軸加速度計を用いて抽出した。【結果】BWSTT により最大歩行速度,歩幅,歩行率,麻痺側脚の1 歩行周期変動係数,上下RMS が有意に改善した。また同様の項目と非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数においてBWSTT がFBWTT より有意な改善が認められ,歩行速度変化率は歩行率変化率と正の相関が認められた。【結論】BWSTTは片麻痺患者に対して歩行能力向上の即時効果が期待され,FBWTTよりも有意であった。また歩行速度の改善は歩行率の改善が寄与していた。</p>
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慢性閉塞性肺疾患に対する吸気筋トレーニングの効果:運動耐容能向上群と非向上群の比較
大倉 和貴, 柴田 和幸, 岩倉 正浩, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 若林 育子, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 ( 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 ) 27 ( 3 ) 342 - 348 2018年
<p>【目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,呼吸リハビリテーションに吸気筋トレーニング(IMT)を追加することにより運動耐容能が向上した症例と向上に乏しい症例の特徴を比較すること.</p><p>【方法】IMTを3ヶ月以上実施した安定期COPD患者25名を6分間歩行距離(6MWD)の増加量により運動耐容能向上群(IG)と非向上群(SG)の2群に後方視的に分けた.IMT開始前後に最大吸気口腔内圧(PImax),大腿四頭筋筋力を測定,6分間歩行試験(6MWT)を実施し,測定値の差を比較した.</p><p>【結果】IGではSGと比較して,平均年齢が低く,IMT開始前の大腿四頭筋筋力が高く,6MWT後の呼吸困難が強かった.また,IMT期間前後のPImax,6MWT後の呼吸困難の改善量が大きかった.</p><p>【結論】IMTを追加併用することで運動耐容能の向上が期待される症例の特徴を示した.IMTを推奨するエビデンスレベルは高くないが,適応症例を検討することで有効なトレーニングになると考える.</p>
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伊東 知晃, 佐竹 將宏, 佐々木 紀葉, 大倉 和貴, 高橋 仁美, 塩谷 隆信
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 ( 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 ) 27 ( 3 ) 323 - 329 2018年
<p>本研究の目的は,1日1回の漸増的多段階負荷による吸気筋トレーニング(IMT)の効果を検討することであった.健常成人28名(男性13名,女性15名,年齢20.8±1.2歳,BMI 20.8±2.1)を対象に,PImaxの30%,50%,70%負荷を順次30呼吸ずつ行う多段階負荷群(多段階群),50%PImaxで30呼吸を3セット行う一定負荷群(一定群),15%PImaxで30呼吸を3セット行う対照群の3群に分け,1日1回,4週間実施した.評価項目は呼吸機能,呼吸筋力(PImax,PEmax),呼吸筋耐久力(Ppeak,Ppeak/Plmax),運動耐容能であった.その結果,多段階群,一定群ともにPImaxとPpeakが有意に増加した.また,多段階群と一定群には差はみられなかった.1日1回のIMTは有効であり,また多段階負荷を用いることで高負荷をかけても強い疲労感がなく行えることが示唆された.</p>
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福井 智子, 大倉 和貴, 高橋 亜紀穂, 堀水 湧, 伊東 知晃, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 ( 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 ) 27 ( 3 ) 349 - 352 2018年
<p>【目的】吸気筋トレーニング(IMT)の一種である吸気抵抗負荷呼吸において,負荷圧の違いによる呼吸筋活動の特性を明らかにすること.</p><p>【方法】健常若年男性20名に,最大吸気口腔内圧(PImax)の0%(無負荷),20%,40%,60%,80%の各負荷圧で吸気抵抗負荷呼吸を実施させた.その際に,横隔膜の筋厚変化率(∆Tdi%)を超音波画像診断装置,肋間筋と胸鎖乳突筋の筋活動を表面筋電図にて測定した.筋活動は,最大等尺性収縮の交流実効値に対する百分率(%MVC)を算出した.</p><p>【結果】∆Tdi%は,PImaxの40%の負荷で最も高値となり,60%以上の負荷では有意に減少した.肋間筋と胸鎖乳突筋の%MVCは,負荷圧の増加に伴って増大する傾向がみられた.</p><p>【結論】吸気抵抗負荷呼吸法にてIMTを施行する際に,横隔膜のトレーニングを主目的にする場合は,∆Tdi%が最も高値となる40%PImax前後の負荷圧が適し,60%PImax以上の負荷圧では努力吸気筋優位のトレーニングとなることが示唆された.</p>
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Takahashi J.
Sleep and Biological Rhythms ( Sleep and Biological Rhythms ) 15 ( 3 ) 235 - 241 2017年07月
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特集 在宅における呼吸リハビリテーション COPDにおける包括的呼吸リハ・プログラムについて
塩谷 隆信, 岩倉 正浩, 照井 佳乃, 上村 佐知子, 高橋 仁美, 佐竹 将宏
地域リハビリテーション ( 三輪書店 ) 12 ( 6 ) 460 - 466 2017年06月
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佐竹 將宏, 塩谷 隆信
総合リハビリテーション ( 株式会社医学書院 ) 45 ( 6 ) 655 - 658 2017年06月
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Okura K.
Respirology ( Respirology ) 22 ( 2 ) 301 - 306 2017年02月
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3軸加速度計の体幹加速度波形を用いたCOPD患者の歩行時のバランス能力評価
照井 佳乃, 岩倉 正浩, 川越 厚良, 大倉 和貴, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 上村 佐知子, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 ( 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 ) 27 ( 1 ) 59 - 64 2017年
<p>【目的】体幹加速度から求めたLissajous Index(LI)を用いCOPD患者の歩行時体幹運動の左右対称性を評価しLIの有用性を検討した.</p><p>【方法】対象はCOPD患者16名,健常者21名とした.3軸加速度計を腰部に装着し 10 mを2回歩行した.左右・上下加速度からLIを求め,COPD患者の呼吸機能,下肢筋力,片脚立位保持時間を測定した.COPD患者のLIの検者内信頼性と絶対的信頼性,LIと身体機能評価との関連を検討した.</p><p>【結果】平均LIはCOPD患者34.2±19.2%,健常者21.1±14.1%で,健常者よりもCOPD患者において有意にLIが大きかった.COPD患者におけるLIの検者内信頼性が認められ,系統誤差はみられなかった.COPD患者のLIは片脚立位保持時間と有意な相関を認めた.</p><p>【結論】COPD患者における歩行のバランス能力評価として体幹加速度波形を用いたLIの有用性が示唆された.</p>
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者への咳介助方法の違いによるCough Peak Flowの比較とその信頼性の検討
菊地 和人, 佐竹 將宏, 木元 裕介, 岩澤 里美, 鈴木 瞭平, 小林 道雄, 和田 千鶴, 塩谷 隆信
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者における咳介助には,徒手介助や機械による咳介助(MI-E)がある。MI-Eは国内外のガイドラインで推奨されており,咳のピークフロー(CPF)が最も高いと結論付けられている。一方で,咳介助方法には,MI-Eの他に徒手介助やMI-Eに徒手介助を加えた咳介助(MAC)もあるが,これらの方法を用いてCPFを比較検討した報告は少ない。加えて,CPFの値はピークフローメータ(PFM)とMI-Eのディスプレイで示されるが,これらの測定値の信頼性を確認した報告が少ない。そこで,本研究の目的は,効果的な咳介助方法を得るためにすべての介助方法の測定値を比較すること,そしてCPFの信頼性を検討することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,当院入院中の気管切開していないDMD患者12名(機能障害度ステージVIII,年齢34±8歳)とした。効果的な咳介助を得る方法として,自力,徒手介助(呼気介助,吸気介助,全介助),MI-E,MACでのCPFを測定して比較した。自力と徒手介助のCPFは,PFM(フィリップス社製)に接続したスパイロメータ(AS507;ミナト社製)で測定し,MI-EとMACのCPFは,MI-Eの機器(カフアシストE70;フィリップス社製)に接続したスパイロメータで測定した。統計解析には,1元配置分散分析及び多重比較検定(Tukey法)を用いた。次に,CPFの信頼性を調べるために,徒手介助の際に表示されたPFMとスパイロメータのCPF,MI-Eの機器とスパイロメータのCPFの相対信頼性と絶対信頼性をSpearmanの順位相関係数検定とBlamd-Altman分析を用いて検討した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>自力咳と咳介助におけるCPFは,自力59±35l/min,呼気介助113±32l/min,吸気介助170±30l/min,全介助224±62l/min,MI-E199±40l/min,MAC240±38l/minであった。多重比較の結果,自力と比べて呼気介助(P<0.05),吸気介助(P<0.01),全介助(P<0.01),MI-E(P<0.01),MAC(P<0.01)と有意な増加を認め,呼気介助と比べて吸気介助(P<0.05),全介助(P<0.01),MI-E(P<0.01),MAC(P<0.01)と有意な増加を認め,吸気介助に比べて全介助(P<0.05),MAC(P<0.01)で有意な増加を認めた。PFMとスパイロメータからのCPFの相関関係は,自力(r=0.93,P<0.05),呼気介助(r=0.97,P<0.05),吸気介助(r=0.8,P<0.05),全介助(r=0.96,P<0.05)であった。MI-EとスパイロメータからのCPFの相関関係は,MI-E(r=0.94,P<0.05),MAC(r=0.98,P<0.05)であった。Bland-Altman分析では,どちらの方法も比例誤差を認めず,PFMとスパイロメータからのCPFにのみ負の加算誤差が認められた。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>咳介助の比較では,ガイドラインで最もCPFが高いと言われているMI-EよりもMACや全介助の方がCPFが高かった。CPFの信頼性は,MI-EとPFMともに高い可能性が示唆された。</p>
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健常成人に対する二つの3軸加速度計を用いた二重課題下の歩行特性の検討
鈴木 瞭平, 佐竹 將宏, 木元 裕介, 岩澤 里美, 菊地 和人
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>高齢者や脳損傷患者に対して減算課題などの二重課題を課した歩行では,運動に必要な情報処理能力が制限され,バランスや歩容に支障をきたすことがいわれている。近年,小型加速度計を用いて二重課題下における歩行特性を評価する研究が行われている。それらは小型加速度計を第3腰椎部に装着した研究がほとんどであるが,上部体幹と骨盤の2か所に着目して歩行特性をみた研究は少ない。そこで,本研究では減算課題を課した二重課題下で上部体幹と骨盤の2か所の動きに着目し,歩行特性の変化を検討することを目的とした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象者は健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢28.2±4.0歳)であった。3軸加速度計(8チャンネル小型無線モーションレコーダーMVP-RF8-HC-500;マイクロストーン社製)を,第6胸椎部と仙骨部の2か所に装着した。対象者は前後3mの助走路と減速路を設けた10mの直進路を快適速度で歩行し,single task(快適歩行)とdual task(減算課題を課した歩行)の2種類をそれぞれ2回測定した。3軸加速度計から一歩行周期あたりの平均左右幅,上下幅,前後幅,水平面軌跡長,前額面軌跡長,矢状面軌跡長,歩行周期時間,および歩行速度,歩行周期変動係数(CV),Root mean square(RMS)を算出した。解析には専用のソフトウエア(体幹2点歩行動揺計MVP-WS2-S;マイクロストーン社製)を使用した。統計はsingle taskとdual taskの算出結果を対応のあるt検定を用いて分析した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>10m快適歩行速度はsingle taskで1.4±1.0m/s,dual taskで1.5±1.1m/sとなり,有意差がみられなかった。第6胸椎部の左右幅はsingle taskで31.6±8.0mm,dual taskで26.9±8.5mm,水平面軌跡長はsingle taskで86.9±12.0mm,dual taskで75.5±17.9mmと,いずれも有意に低下した(p<0.05)。仙骨部においてはどの測定値も有意差がみられなかった。歩行周期時間,CV,RMSも有意な差がみられなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究では二重課題によって,第6胸椎部では左右幅および水平面軌跡長の有意な低下がみられたが,仙骨部の移動量には変化がみられなかった。このことから,健常者において二重課題を与えると骨盤の動きに変化はみられないが,上部体幹の動きは抑制して歩行していることが考えられた。よって,骨盤と上部体幹が異なる変化をする可能性があることから,骨盤と胸椎部の両方の評価の重要性が示唆された。転倒リスクのある高齢者では二重課題を与えるとバランスや歩容に支障をきたすことから,小型加速度計を用いて2か所で計測することで,より詳細な歩行評価が可能になると考えられた。</p>