研究等業績 - その他 - 木元 稔
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変形性膝関節症における膝伸展筋力の増加と筋内健アーチ率の減少について
高橋 裕介, 大沢 真志郎, 新出 卓斗, 鎌田 哲晃, 齊藤 公男, 松永 俊樹, 島田 洋一, 岡田 恭司, 齋藤 明, 木下 和勇, 瀬戸 新, 若狭 正彦, 木元 稔, 佐藤 大道, 柴田 和幸
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>大腿直筋の筋内腱は超音波短軸像上でcomma shaped hyperechoic bandと呼ばれる弧形(アーチ)として描出できる。我々はこれまでに横断的な調査で,健常成人では筋収縮で筋内腱のアーチが直線に変化し,収縮時のアーチが少ないほど筋力が高いことを報告した。しかし,筋内腱の形態変化が筋力の変化に対応するかは明らかになっていない。そこで,本研究は変形性膝関節症患者を対象に筋力トレーニングで筋内腱の形態が変化するかを検証した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はKellgren-Lawrence分類IIの変形性膝関節症患者12名16肢(Mean±SD;72±13歳,156.3±10.9cm,65.0±11.7kg,以下OA肢)であった。対象者は筋力トレーニングとしてstraight leg raising運動(以下,SLR)を1日5秒×20回,1ヵ月間実施した。SLR前後で超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS)を用いた大腿直筋の撮像をした。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を3回ずつ記録した。得られた超音波画像から筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)および筋厚を測定した。統計学的検討では3回測定の平均値を用いた。介入前後の膝伸展筋力,安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚を比較するために対応のあるt検定,収縮時アーチ率を比較するためにWilcoxonの符号付き順位検定を行った。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>OA肢では,膝伸展筋力はSLR前19.7±7.5kgとSLR後22.5±10.2kg,収縮時アーチ率はSLR前7.6±6.0%とSLR後3.5±5.1%であり,いずれも有意差を認めた(p<0.05)。安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚はSLR前後で有意差を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>SLRにより膝伸展筋力の増加と収縮時アーチ率の減少を認め,筋力トレーニングによる筋内腱の形態変化を明らかにした。本研究では有意な筋厚の増大は認められず,介入期間が1ヵ月であったことから筋肥大は生じていないと考えた。したがって筋内腱の観察は筋肥大とは異なる筋力増強メカニズムを反映する可能性があり,新しい筋機能評価の一助となると考える。</p>
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齊藤 明, 岡田 恭司, 髙橋 裕介, 柴田 和幸, 大沢 真志郎, 佐藤 大道, 木元 稔, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>成長期野球肘の発症には投球時の肘関節外反が関与し,その制動には前腕回内・屈筋群が作用することが知られている。成長期野球肘おいては投球側の円回内筋が硬くなることが報告されており,特に野球肘の内側障害ではこれらの硬い筋による牽引ストレスもその発症に関連すると考えられている。しかしこれらの筋が硬くなる要因は明らかにされていない。そこで本研究の目的は,成長期の野球選手における前腕屈筋群の硬さと肘関節可動域や下肢の柔軟性などの身体機能および練習時間との関係を明らかにすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>A県野球少年団に所属し,メディカルチェックに参加した小学生25名(平均年齢10.7±0.7歳)を対象に,超音波エラストグラフィ(日立アロカメディカル社製)を用いて投球側の浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さを測定した。測定肢位は椅子座位で肘関節屈曲30度位,前腕回外位とし,硬さの解析には各筋のひずみ量に対する音響カプラーのひずみ量の比であるStrain Ratio(SR)を用いた。SRは値が大きいほど筋が硬いことを意味する。身体機能は投球側の肘関節屈曲・伸展可動域,前腕回内・回外可動域,両側のSLR角度,股関節内旋可動域,踵殿距離を計測し,事前に野球歴と1週間の練習時間を質問紙にて聴取した。また整形外科医が超音波診断装置を用いて肘関節内外側の骨不整像をチェックした。統計学的解析にはSPSS22.0を使用し,骨不整像の有無による各筋のSRの差異を比較するため対応のないt検定を用いた。次いで各筋のSRと各身体機能,野球歴や練習時間との関係をPearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を求めて検討した。有意水準はいずれも5%とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>参加者のうち肘関節内側に骨不整像を認めた者は4名(野球肘群),認められなかった者は21名(対照群)であった。浅指屈筋のSRは2群間で有意差を認めなかった(1.01±0.29 vs. 0.93±0.23;p=0.378)が,尺側手根屈筋のSRでは野球肘群が対照群に比べ有意に高値を示した(1.58±0.43 vs. 0.90±0.28;p<0.001)。浅指屈筋のSRと各測定値との相関では,各身体機能や野球歴,練習時間のいずれも有意な相関関係は認められなかった。尺側手根屈筋のSRも同様に各身体機能や野球歴との間には有意な相関関係を認めなかったが,1週間の練習時間との間にのみ有意な正の相関を認めた(r=0.555,p<0.01)。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>成長期の野球選手において浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さは,肘・股関節可動域や野球歴とは関連がないことが明らかとなった。一方,1週間の練習時間の増大は尺側手根屈筋を硬くし,このことが成長期野球肘の発症へとつながる可能性が示唆された。</p>
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Influence of head and neck extension on single-leg landing
Takuwa R.
Rigakuryoho Kagaku ( Rigakuryoho Kagaku ) 32 ( 1 ) 93 - 96 2017年
〔目的〕頭頸部伸展位が片脚着地動作に及ぼす影響を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,健常成人女性31名(平均20.1歳)とした.高さ30 cm台からの片脚着地動作を,頭頸部屈曲伸展中間位と,頭頸部伸展位の2条件で行った.片脚着地時の最大の膝関節屈曲と外反角度,体幹前後屈,側屈角度,および着地位置を測定し,条件間で比較した.〔結果〕頭頸部伸展位での着地では頭頸部屈曲伸展中間位の着地に比べて最大膝関節外反角度が有意に大きかった.最大膝屈曲角度と体幹前後屈,側屈角度,着地位置には有意差はみられなかった.〔結語〕頭頸部伸展位での片脚着地動作は膝関節外反角度を増大させ,非接触型前十字靭帯損傷の一要因となると推察された.