研究等業績 - その他 - 千代延 俊
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Hartono B.M.
Applied Geochemistry ( Applied Geochemistry ) 189 2025年09月
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Giant offshore pumice deposit records a shallow submarine explosive eruption of ancestral Santorini
Druitt T.
Communications Earth and Environment ( Communications Earth and Environment ) 5 ( 1 ) 2024年12月
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Hazardous explosive eruptions of a recharging multi-cyclic island arc caldera
Preine J.
Nature Geoscience ( Nature Geoscience ) 17 ( 4 ) 323 - 331 2024年04月
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Mansour A.
Minerals ( Minerals ) 14 ( 3 ) 2024年03月
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Pratiwi S.D.
Biodiversitas ( Biodiversitas ) 25 ( 7 ) 3200 - 3207 2024年
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Hartono B.M.
85th Eage Annual Conference and Exhibition 2024 ( 85th Eage Annual Conference and Exhibition 2024 ) 7 4924 - 4928 2024年
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堆積物の内部変形構造解析における三次元デジタル露頭モデル構築の手法ー富山県上市町稲村に分布する下部中新統折戸凝灰岩部層の例ー
荒戸 裕之, 金子 一夫, 國香 正稔, 山本 由弦, 保柳 康一, 山田 泰広, 白石 和也, 千代延 俊, 藤田 将人, 吉本 剛瑠, 関山 優希
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2024 ( 0 ) 268 2024年
<p><b>1.はじめに</b> 著者らは,海底地すべり発生メカニズムについての研究を進めている<sup>[1~3]</sup>.その一環として実施した富山県上市町の稲村露頭(南北約80 m,東西約70 m,最大比高約30 m)の調査では,一般的な地質調査ではあまり用いられない手法を活用<sup>[3]</sup>し成果を得た<sup>[4]</sup>ので概要を報告する.</p><p></p><p><b>2.手法</b></p><p><u>(1) 覚書締結:</u>調査対象は私有地に人造された露頭であることから,地権者の理解と賛同を得るため,調査に先立って学術的・普及活動上の意義について説明を行なった.地権者との交渉には,地元のジオパーク協会の協力を得た。以上の関係は,地権者(甲),地元協力者(乙),研究代表者が所属する研究機関(丙)の<b>三者による覚書</b>として締結された.覚書は,甲は甲が所有する対象地を,乙および丙が学術研究,普及活動等に活用することを認める内容となっている<sup>[5]</sup>.</p><p><u>(2) 調査準備作業:</u>調査に先立ち,重機等を導入して露頭を覆う<b>灌木や下草類の伐採</b>と露頭前面下部に堆積した<b>崖錐被覆物の除去</b>を行った.また,露頭高所の調査を行うための仮設階段を設置した.これら各種土木作業等は,ジオパーク協会が地元町役場から紹介された地元の土木建設業者に依頼した.</p><p><u>(3) 地質調査:</u>露頭低所および仮設階段で登坂できる範囲に対しては,一般的な踏査による岩相層序解析,ならびに堆積相解析を実施した.大露頭において,地質学的注目点と空撮写真(後述)との対照を容易にするため,<b>測点明示釘</b>と樹脂製保持板(直径26mm)を注目点毎に設置した.また,詳細な堆積構造および変形構造を観察するため<sup>[6]</sup>,<b>ディスクグラインダー</b>等を用いて一部露頭面の研磨を行なった.各岩石試料採取では<b>削岩機</b>(電気ピック),<b>電動ダイヤモンドカッター</b>,<b>エンジンカッター</b>等を活用した.</p><p><u>(4) トレンチ掘削:</u>地すべり層の三次元的な分布を追跡するため,また,地すべり層の基底面(すべり面)を含む新鮮な大型試料を採取するため,調査地中央部に幅約1.5m,長さ約10m,深さ約1.2mの<b>トレンチを掘削</b>した.</p><p><u>(5) 高所地質調査:</u>露頭高所に対しては,<b>高所作業車</b>(3段ブーム、最長約30m)を用いて研究者自身が近接肉眼観察し,岩相層序解析および堆積相解析を実施した.</p><p><u>(6) 空中写真撮影:</u>露頭の全体像の把握,露頭高所の観察,ならびに三次元デジタル地質モデル製作等を目的として,<b>ドローン</b>を用いた空中写真および動画撮影を行なった.第一段階では,鉛直上空および露頭面に直角となる斜め上空からのシリーズ画像を撮影し,露頭全体で約600枚の画像を得た.これらを三次元モデリングソフト「pix4Dmapper」に取り込んで<b>三次元地質モデル</b>化し,パソコン上での露頭全体像の把握に用いた.第二段階では、より高解像度のシリーズ画像を1,000枚以上撮影した.ドローンオペレーションは,地元および関西圏の専門業者に委託した.</p><p><u>(7) 三次元地質モデル製作:</u>第二段階のドローン画像からは,Metashapeモデルを作成した.このモデルは,<b>Agisoft Viewer</b>(フリーウェア)に読み込むことで,パソコン上で自由に回転,拡大縮小が可能である.さらに,解釈線を書き加えることができモデルデータとともに回転,拡大縮小できることから,全ての形態的な特徴を,肉眼観察点を起点として同モデル上で追跡し一括して整理した.</p><p></p><p><b>3.結果</b></p><p> 稲村露頭の折戸凝灰岩部層は前期中新世の火山砕屑岩類からなり<sup>[7]</sup>,下位からA~Gの7ユニット(A, E~G:凝灰岩および凝灰角礫岩,B~D:凝灰質砂岩泥岩互層)に区分される.8層(D1~8)の凝灰質砂岩鍵層と挟在する凝灰質泥岩層からなるユニットDは,露頭北部では南方向への滑動により布団を畳むように折り曲げられ,褶曲軸面付近に形成される低角逆断層によって上盤側が下流へ衝上して,8層全体ないしその一部,ならびに逆転した一部が繰り返すことによって層厚を増している.ユニットEの凝灰岩および凝灰角礫岩中には,直下のユニットD上部から剥離された砂岩泥岩互層がブロック状,スランプ状に変形して取り込まれている. </p><p></p><p><b>謝辞:</b>英修興産有限会社,立山黒部ジオパーク協会の諸氏,有限会社きんた,鉄建建設株式会社に心より感謝する.なお,当該調査には科研費B(19H02397)の一部を使用した. </p><p></p><p><b>文献:</b> <b>[1]</b> 荒戸, 2018, 地質学会要旨, 110, <b>[2]</b> 荒戸, 2022, 石技誌, 87, 136, <b>[3]</b> 荒戸他, 2023, 堆積学会要旨, 9, <b>[4]</b> 荒戸他, 2023, 地質学会要旨, T-6-P20, <b>[5]</b> 金子他, 2023, 地質学会要旨, T-3-O-4, <b>[6]</b> 荒戸他, 2024, 地質雑, 130, 167, <b>[7]</b> 金子, 2001, 地質雑, 107, 729.</p>
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富山県上市町の下部中新統稲村水中地すべり堆積物の内部変形構造から推定される滑動メカニズム
荒戸 裕之, 山本 由弦, 保柳 康一, 金子 一夫, 國香 正稔, 山田 泰広, 白石 和也, 千代延 俊, 藤田 将人, 吉本 剛瑠, 関山 優希
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2024 ( 0 ) 243 2024年
<p><b>1.はじめに</b></p><p> 著者らは,海底地すべりの堆積学的な理解と運動学的なモデルの構築を目的に研究を進めている<sup>[1など]</sup>.その一環として,富山県上市町の稲村露頭(南北約80 m,東西約70 m,最大比高約30 m)に分布する下部中新統稲村水中地すべり堆積物の内部変形構造の調査を実施している<sup>[1~4]</sup>.その結果,滑動および変形様式が明らかになってきたので概要を報告する.</p><p></p><p>2.手法</p><p> 一般的な岩相層序ならびに堆積相解析に加え,詳細な堆積構造および変形構造を観察するため一部露頭面の研磨を行なった<sup>[1]</sup>.その結果に基づき,滑動体を構成する砂岩層全8層(鍵層D1~D8)を区別し,露頭全体にわたって追跡した<sup>[2]</sup>.鍵層砂岩の追跡は,肉眼観察地点を起点としてドローン画像から作成した三次元モデル上で行った<sup>[4]</sup>.露頭高所については,高所作業車を用いた近接肉眼観察を併用した<sup>[1, 2]</sup>.</p><p></p><p>3.結果(図参照)</p><p><u>(1) 層序・構造:</u>下部中新統折戸凝灰岩部層は,前~中期中新世の日本海拡大期に富山県から能登半島にかけて形成された北東-南西方向のリフト帯<sup>[5など]</sup>南東縁に堆積した複数の単源火山砕屑岩類と関連堆積物からなる福平層の一部層であり,調査地では堆積後の後背地の隆起によって北~北西に約10~25度傾斜している<sup>[6]</sup>.</p><p><u>(2) 岩相・ユニット区分:</u>稲村露頭の折戸凝灰岩部層は,岩相の特徴等に基づき下位からA~Gの7ユニットに区分される.</p><p><b>A:</b>塊状無層理の凝灰岩・凝灰角礫岩層からなる.</p><p><b>B, C:</b>プロデルタ成の凝灰質砂岩泥岩互層からなり,Aを覆う.砂岩・泥岩とも数cm~数10cmの層厚を有し,堆積時のslide等による変形は受けていない.</p><p><b>D:</b>Cを覆い,B,Cとほぼ同等の岩相を有する.ユニット内の逆断層より北側は激しい変形を受けているが,南側ではほとんど変形を受けておらず下位ユニットと調和的な走向傾斜を有する.</p><p><b>E:</b>凝灰岩,凝灰角礫岩の基質に,D上部の砂岩泥岩互層,泥岩などが変形してスランプ状,もしくはブロック状に取り込まれている.D由来のブロックの量および変形度合いは場所によって大きく異なる.</p><p><b>F, G:</b>凝灰岩,凝灰角礫岩からなり,Eを覆う.場所によってE上部の堆積物がF基底面を突き破ってF内に取り込まれている場合がある.</p><p><u>(3) ユニットDの変形様式:</u>Dの互層は,堆積学的特徴の異なるD1~D8の8層の凝灰質砂岩鍵層と挟在する凝灰質泥岩層からなる.砂岩層の層厚はそれぞれ12~52cm程度で,基底部の極粗粒から細粒へ上方細粒化し凝灰質泥岩層へ漸移する.凝灰質泥岩層は,見かけ上,12~60cm程度の層厚をもつ.露頭北部の同ユニットは,南方向への滑動により布団を畳むように折り曲げられ,褶曲軸面付近に形成される低角逆断層によって上盤側が下流へ変位して,8層全体ないしその一部,ならびに逆転した一部が繰り返すことによって層厚を増している.</p><p></p><p>4.稲村水中地すべりの滑動・変形モデル</p><p> 以上の観察結果を合理的に説明する滑動・変形モデルとして,以下のような過程を検討中である.</p><p><b>[a] </b>F(or G)堆積後の早い時期にD基底の泥岩層中にすべり面が形成され,ある場所から上流側が南へ傾斜する当時の斜面下方へ滑動を開始する,</p><p><b>[b]</b> 滑動開始当初,D互層は地すべり先端部にランプ背斜を形成して互層の一部が下流側の滑動しないDに乗り上げて滑動による短縮を解消する,</p><p><b>[c]</b> 短縮が進行するとランプ背斜は横臥褶曲に成長し,それでも短縮量を補償しきれなくなるとすべり面が上位へ分岐し低角逆断層となってさらに乗り上げていく,</p><p><b>[d]</b> さらに滑動が継続し短縮量が増えると,新たなランプ背斜・横臥褶曲が順次上流側に形成され(オーバーステップ状),こうした変形が累積することでDの層厚が不均質となる,</p><p><b>[e]</b> Dの層厚が不均質化することでE以上の上載圧力に不均衡が生じて低比重のDとより高比重の上位層との境界面が不安定になり,互層上部の一部が変形しながらEの凝灰岩中に取り込まれていく,</p><p><b>[f]</b> Eと上位のFの境界面も不安定になるが,両ユニット間の比重差は大きくないため,大規模な取り込みには発達しない.</p><p></p><p>謝辞:英修興産有限会社,立山黒部ジオパーク協会の諸氏,有限会社きんた,鉄建建設株式会社に心より感謝する.なお,当該調査には日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)(一般)(19H02397)の一部を使用した.</p><p></p><p><b>文献:[1]</b>荒戸ほか, 2023, 堆積学会要旨, 9-10, <b>[2]</b>荒戸ほか, 2023, 地質学会要旨, T-6-P20, <b>[3]</b>金子ほか, 2023, 地質学会要旨, T-3-O-4, <b>[4]</b>荒戸ほか, 2024, 地質雑, 130, 167-168, <b>[5]</b>竹内, 2021,地質雑, 127, 145-164, <b>[6]</b>金子, 2001, 地質雑, 107, 729-748.</p>
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秋田県大館市比内に分布する中新統珪質泥岩の石灰質ナンノ化石層序と石油根源岩能力
松浦 三偲郎, 大柳 快晴, 安藤 卓人, 千代延 俊
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2024 ( 0 ) 249 2024年
<p>秋田県の沿岸部には珪質泥岩からなる女川層が広く分布し,秋田県下に存在する油田群の石油根源岩として多様な研究がなされてきた。女川層珪質泥岩のもつ石油根源岩能力は,海生珪藻を起源にもつタイプIIケロジェンを主とし,全有機炭素量(TOC)を1〜4%程度含むことが知られている。また,県下内陸部にも同層準の珪質泥岩は広く分布しており同様の見解がなされている。ところで,黒鉱鉱床が拡がる秋田県北部の北鹿地域にも珪質泥岩が分布することは古くから知られているが,それら珪質泥岩の層位学的検討や有機地球化学的検討は,金属鉱床地域であったことからも多くはない。そこで,本研究では秋田県大館市比内地域に分布する珪質泥岩を主体とする一通層から産出する石灰質ナンノ化石を用いて層位学的関係を明らかにし,ロックエバル分析法による同層準の石油根源岩能力を評価する目的で検討を行った。一通層の岩相は,下部で暗灰色から淡灰色で塊状もしくは一部層理の発達する珪質硬質泥岩を主として,凝灰質礫岩および砂岩を挟在する。上部では暗灰色塊状な軟質泥岩からシルト岩,さらに最上部では砂岩へと上方粗粒化を示す。また上部のシルト岩および砂岩から,保存状態は悪いものの,石灰質ナンノ化石<i>Catinaster calyculus</i>,<i>Reticulofenestra</i>属,<i>Sphenolithus</i>属が産出した。ロックエバル分析から,本層の珪質泥岩中の全有機炭素量(TOC)は平均で1.64wt%,最大で2.59wt%を示す。とくに暗灰色の岩色を呈する岩相において平均で1.99wt%と高い値を示した。また,Hydrogen Indexは498〜683(mg/g)を示し,ケロジェンタイプはタイプ Iを主体とする。以上の結果から,一通層最上部に堆積した砂岩相は石灰質ナンノ化石基準面NN8〜9に相当し,一通層の堆積年代の上限が約10Maであることが明らかとなった。従来から一通層は,珪質泥岩を主体とする岩相から女川層相当層とされており,本結果により北鹿地域に分布する女川層相当層の堆積年代上限が規定された。一方で,ロックエバル分析では本層下部の珪質泥岩に含まれるケロジェンが湖沼性生物を起源であることを示し,一般的な女川層のケロジェンタイプとは異なる結果を得た。石灰質ナンノ化石が産出することとケロジェンタイプが湖沼性を示すことは矛盾する結果ではあるものの,これらの結果は当時の海水準変化や堆積盆地の形状など様々な要因を示している可能性が指摘でき,北鹿地域の女川層相当層の広域的な検討が今後の課題としてあげられる。</p>
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鹿児島県沖永良部島に分布する琉球層群の層序
武田 与, 山田 茂昭, 千代延 俊, 淺原 良浩, 高柳 栄子, 井龍 康文
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2024 ( 0 ) 316 2024年
<p>中琉球および南琉球の島々に広く分布する琉球層群は,主に,第四紀更新世にサンゴ礁から陸棚にかけての一帯で堆積した炭酸塩堆積物より構成されている.琉球列島では,琉球層群主部の堆積後(約0.45 Ma以降)に島々が隆起に転じたため,間氷期のみならず氷期に形成された堆積物までもが陸上で観察可能である.このような条件から,琉球列島はサンゴ礁地質を研究するために,理想的なフィールドと評価されている.中でも中琉球の島々では琉球層群が広範囲に分布し,その分布標高は200 mにも達するため,同層群の層序・堆積過程・年代に関する研究が数多く行われてきた.</p><p> 中琉球に位置する沖永良部島に分布する琉球層群の層序は野田(1984)およびIryu et al. (1998)によって報告されている.しかし,両研究間には不一致が多い.特に,同層群中部に存在する砂岩の層位学的位置に関する見解が異なっており,同島におけるサンゴ礁形成史(例えば,サンゴ礁が形成された回数)に違いがある.また,Iryu et al. (1998)では,本島東部の地質図が示されておらず,正式な層序記載も行われていない.</p><p> そこで,本研究では,近年の琉球層群の堆積学的・生層序学的研究成果を参照しつつ,沖永良部島全域の琉球層群の層序と年代を明らかにし,その堆積過程を明らかにすることを目的とした.本研究では,地表の露頭に加え,地下ダム建設事業に伴い掘削されたボーリングコア(8本)中の琉球層群の層序も併せて観察した.また,地表およびコア試料の石灰質ナンノ化石年代とSr同位体年代を検討し,堆積年代を決定した.</p><p> 沖永良部島の琉球層群の最下位には,著しい陸水性続成作用を被り赤色を帯びた石灰岩から成るサンゴ石灰岩および礫質石灰岩が認められる.この変質石灰岩は,層厚10 m以下で,ボーリングコアにのみ認められる.本島に分布する琉球層群の大部分は,Iryu et al. (1998)の沖永良部島層に相当する堆積物で,本研究では3つのユニットに区分した.最下部のユニット1は,ボーリングコアのみにみられ,主に砂質石灰岩と砕屑性石灰岩よりなり,礫質石灰岩および砂質石灰岩を基質とする礫岩を伴う.本ユニットは,現時点ではボーリングコアでのみ確認されているが,本島の北海岸で基盤岩が急峻な地形を成す湾門浜や内喜名浜に分布する砂礫岩の一部が,本ユニットに含められる可能性がある.ユニット2およびユニット3は,浅海相(サンゴ石灰岩)と沖合相(主に石灰藻球石灰岩と砕屑性石灰岩により構成される)よりなり,石灰岩の累重様式と水平分布から,1回の海水準変動で(低海水準期から海進期を経て高海水準期・海退期までの時期に)形成された堆積体と判断される.ユニット2およびユニット3は,それぞれ,Iryu et al. (1998)の沖永良部島層下部ユニットおよび上部ユニットに対応する.ユニット3堆積時には,海進期初期に大山(現在の沖永良部島の最高所)から非石灰質砕屑物砂岩がもたらされた,これは海岸部から標高125 m付近まで追跡される.ユニット1とユニット2は不整合関係,ユニット2とユニット3は一部整合・一部不整合の関係にある.</p><p> 最下位の変質石灰岩からは,1.05 ± 0.40 MaというSr同位体年代が得られた.また,ボーリングコアに見られるユニット1の砂質石灰岩から石灰質ナンノ化石が検出された.その結果,石灰質ナンノ化石の産出層準は,Sato et al. (2009)の基準面5〜3(0.85–0.45 Ma)に対比されることが判明した.この結果に,先行研究の石灰質ナンノ化石生層序の検討結果を併せると,ユニット2は海洋同位体ステージ(MIS)18〜17,ユニット3はMIS16〜17に対比される.MIS16は,中期〜後期更新世で深海底の底生有孔虫δ18O値が最も低く,同δ18O値と海水準に線形の関係を仮定すれば,中期〜後期更新世の中で,最も海水準が低かったと想定することが可能であり,ユニット2とユニット3が沖永良部島の多くの地点で不整合関係にあることが合理的に説明される.なお,MIS16の低海水準期に関連した琉球層群中の不整合関係は,沖縄本島中南部や徳之島でも認められる.ユニット1はMIS19前後の堆積物と推定されるが,礫質堆積物が主体のため,その堆積過程を特定するに至っておらず,海洋同位体ステージとの対応関係に至っていない.</p><p>引用文献</p><p>Iryu et al., 1998, Spec. Publ. Int. Sed. Ass., no. 25, 197–213.</p><p>野田, 1984, 地質雑, 90, 261–270.</p><p>Sato et al., 2009, Proc IODP, 303/306.</p>
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Watanabe N.
Progress in Earth and Planetary Science ( Progress in Earth and Planetary Science ) 10 ( 1 ) 2023年12月
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Madokoro H.
Sensors (Basel, Switzerland) ( Sensors (Basel, Switzerland) ) 23 ( 21 ) 2023年10月
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Yoshimoto T.
Tectonophysics ( Tectonophysics ) 862 2023年09月
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松田 博貴, 林田 将英, 千代延 俊, 山﨑 誠, 佐々木 圭一
地質学雑誌 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 129 ( 1 ) 153 - 164 2023年03月
<p>琉球列島には,泥質岩からなる上部中新統〜下部更新統島尻層群とサンゴ礁複合体堆積物からなる下部〜上部更新統琉球層群が広く分布し,その境界部にはその中間的な岩相を示す下部更新統知念層が局所的に分布する.これまで知念層は沖縄島中南部でのみ分布が知られていたが,鹿児島県喜界島において知念層に対比できる地層が,新たに発見された.いずれの露頭でもコケムシ片に富む石灰質泥岩・砂岩,ないし砂質石灰岩からなり,堆積年代は1.71〜1.39 Maを示し,下位の島尻層群早町層,上位の中部更新統琉球層群百之台層と明瞭な境界で接している.下位の早町層とは顕著な傾斜不整合の関係にあり,島尻層群堆積後に傾動・削剥が起きたことが示唆される.これに対し,上位の琉球層群との間には傾動運動を示唆する構造差はなく,知念層堆積後,相対的海水準低下に伴い陸化した後,陸源性砕屑物の供給が減少する堆積環境へと変化したと考えられる.</p>
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Increasing Recoverable Oil in Northern Afghanistan Kashkari Oil Field by Low-Salinity Water Flooding
Mahdi Z.
Energies ( Energies ) 16 ( 1 ) 2023年01月
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(エントリー)静岡県相良-掛川油田地域における下部~中部中新統の石灰質ナンノ化石層序と地質構造
三村 匠海, 北條 龍生, 千代延 俊
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2023 ( 0 ) 449 2023年
<p><b>【はじめに】</b>日本列島の太平洋側では,海洋プレートの沈み込みに伴う付加体が広く形成され,それを基盤とする前弧海盆が分布している。本研究対象地域の静岡県掛川地域は,典型的な前弧海盆とされ,新第三系が厚く堆積している。本地域の相良-掛川堆積盆は,三倉層群・瀬戸川層群を付加体として,倉真層群・西郷層群がそれらを被覆している(三村・千代延, 2022)。前弧海盆では,海洋底が酸化的になりやすいために堆積物中の有機物が分解されやすく,また,地殻熱流量が低いプレート沈み込み帯に位置するため,一般的に石油システムの成立は難しいとされている。しかし,本堆積盆には相良油田が胚胎しており,その石油根源岩層準は付加体である三倉層群や被覆層である倉真層群松葉層であると指摘されている(上田ほか, 2007)。さらに,最近の探査では,前弧海盆の付加体に由来する油・ガスの存在が示されている。石油システムを検討するには,基盤岩とそれを被覆する堆積物の層序を明らかにし,堆積盆の発達過程を理解することが極めて重要である。埋積最初期とされる倉真・西郷両層群の生層序は,斎藤(1960)や茨木(1986),柴ほか(2020)の浮遊性有孔虫化石の研究があり,下部中新統とされてきた。しかし,倉真・西郷両層群および基盤岩である三倉・瀬戸川両層群において,地域間層序対比に有効な石灰質ナンノ化石層序の報告はない。そこで,本講演では,各層群の石灰質ナンノ化石層序の結果について紹介し,本堆積盆における基盤岩と被覆層の構造について議論する。<b>【研究地域および手法】</b>静岡県掛川市北部~島田市南西部において,83ルートで地表踏査を行い,823試料を採取した。石灰質ナンノ化石層序の検討のため,泥岩とシルト岩はスミアスライド法で,砂岩は沈降法で処理し,1,500倍の透過型生物顕微鏡を用いて検鏡した。鑑定においては,無作為に200個体を抽出し,石灰質ナンノ化石の鑑定を行った。また,時代決定に有効な種については,加えて検鏡を行った。また,熱履歴の検討を行うためにRock-Eval分析を行った。<b>【結果および考察】</b>全層準を通して石灰質ナンノ化石の産出は少なく,保存状態は悪い。産出した石灰質ナンノ化石は13属18種であった。最も多産したのは,<i>Reticulofenestra</i>属,続いて,<i>Discoaster</i>属,<i>Sphenolithus abies</i>となった。本堆積盆の基盤をなす三倉層群神尾層上部,瀬戸川層群童子沢層上部において,それぞれ5属5種が散逸的に産出した。本堆積盆を埋積する倉真層群では,8属14種のうち,ほとんどの種において,下部で散逸的に産出し,中部で産出せず,上部で散逸的に産出した。また,西郷層群では,7属12種が下部~中部でほとんど産出せず,上部で比較的連続的に産出した。時代決定に有効な種に注目すると,<i>Cyclicargolithus floridanus</i>が瀬戸川層群上部および倉真・西郷両層群で産出し,<i>Sphenolithus heteromorphus</i>が倉真・西郷両層群で産出した。Martini(1971)および三田・高橋(1998)より,瀬戸川層群は<i>C. floridanus</i>の少なくとも産出範囲内に,倉真・西郷両層群はNN5帯(中期中新世)に対比される。Chiyonobu et al.(2017)は,房総堆積盆の最初期の被覆層である三浦層群木の根層は,NN5帯から埋積を開始したと指摘している。すなわち,本地域は房総半島と同じ構造発達史を持つ可能性が示唆される。 また,Rock-Eval分析によって得られたT<sub>max</sub>は,三倉層群,瀬戸川層群,倉真・西郷両層群で,それぞれ平均464℃,449℃,435℃であった。 以上より,基盤である付加体の年代においては幅があるものの,三倉・瀬戸川両層群と倉真・西郷両層群では,温度構造に大きな差があるため,地質構造的に大きなギャップがあると指摘できる。基盤岩と被覆層の年代ギャップは,今後検討を進めていく。 〈引用文献〉・Chiyonobu et al., 2017, Tectonophysics, 710-711・茨木, 1986, 地学雑, 92(2)・Martini, 1971, Proceedings of the 2nd Planktonic Conference・三村・千代延, 2022, JAPT2022講演要旨集・三田・高橋, 1998, 地学雑, 104(12)・斎藤, 1960, 東北大学理地質学古生物学教室研究邦文報告, 51・柴ほか, 2020, 地球科学, 74・上田ほか, 2007, 石技誌, 72(4)</p>
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(エントリー)堆積岩物性と応力逆解析から明らかにする宮崎層群の発達史
吉本 剛瑠, 大森 康智, 千代延 俊, 張 鋒, 山本 由弦
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2023 ( 0 ) 117 2023年
<p>島弧前縁に広がる前弧海盆は、地質学的に長期間安定して存在することから、沈み込み帯の地質情報を連続的に保存すると期待される。これらの運動の記録は、堆積岩物性としてだけでなく、断層などの地質構造として保存される。本研究は、新第三系前弧海盆堆積物の宮崎層群において、最高被熱温度と圧密降伏応力、古応力方向を検討した。それらの結果から、宮崎層群にみられる特異な隆起過程とそれを支配するテクトニクスを考察する。 宮崎層群は、砂岩泥岩互層の岩相が側方に変化するため、砂岩優勢の南部(青島相)、等量の中央部(宮崎相)、泥岩優勢の北部(妻相)の3相に区分されている。泥岩の空隙率は、南部から北部にかけて15%から30%まで増加する(青島相:15.9%,宮崎相:25.5–26.9%,妻相:26.1–31.6%)。 ビトリナイト反射率を用いて、堆積岩の最高被熱温度を検討した。算出された最高被熱温度は、約5–6 Maに堆積した同時異相で比較した場合、南部ほど高い値を示した(青島相:97–116°C,宮崎相:85–99°C,妻相:80–94°C)。また各相において、下部ほど高温である傾向が見られた。 堆積岩の最大有効応力を検討するため、泥岩を対象に<i>K<sub>0</sub></i>圧密試験を実施した。泥岩の側方を拘束し鉛直方向に圧密させていくと、泥岩が経験した最大有効応力を圧密降伏応力として算出できる。上述の同時異相で比較した場合、圧密降伏応力は南部ほど明瞭に大きかった(青島相:38.2 MPa,宮崎相:13.8–16.2 MPa,妻相:13.6–15.5 MPa)。圧密降伏応力から計算される堆積物の最大埋没深度は、青島相で3600 m、宮崎相と妻相で1400–1600 mである。宮崎相と妻相の埋没深度は、層序から期待される値とほとんど一致した。したがって、青島相は宮崎層群の深部に由来し、宮崎層群南部が局所的に隆起することでこれらが地表に露出したことが明らかになった。宮崎層群南部の古応力を復元するため、青島相において76条の小断層を観察し、応力逆解析を実施した。小断層のうち、25条について断層方位・滑り方向・滑りセンスが確認できた。そのほか滑り方向が不明なデータを51条取得した。解析はHough変換による応力逆解法 [1]を用いた。解析の結果、青島相全域において、ほぼ鉛直方向のσ<sub>1</sub>軸とNW–SE方向のσ<sub>3</sub>軸が検出された。宮崎層群北部においてもE–WからNW–SE方向のσ<sub>3</sub>軸が報告されていることから [2]、これは宮崎層群全域に共通すると考えられる。一方で、青島相と宮崎相の境界付近では、上記の応力方向に加えてNE–SW方向のσ<sub>3</sub>軸が検出された。境界付近の宮崎相においても同様のσ<sub>3</sub>軸が報告されていることから [2]、この応力方向は青島相と宮崎相の境界に固有のものである可能性が高い。この境界付近の特異な古応力は、九州―パラオ海嶺の沈み込みに起因すると考えられる。宮崎層群全域に見られる古応力は、海溝に直行したσ<sub>3</sub>軸であり、プレート沈み込みやスラブロールバックに起因すると考えられている [2]。一方で、境界付近で検出された古応力は、σ<sub>2</sub>軸が九州―パラオ海嶺の沈み込み方向と並行であり、この地域へ海山が沈み込むことによってσ<sub>2</sub>軸の方向が局所的に変化したことを示唆する。 青島相の局所的な隆起は、南九州地域の反時計回り回転運動と、九州―パラオ海嶺の沈み込みに起因すると考えられる。約200万年前、宮崎層群を含む南九州地域は、約30°の反時計回り回転運動を経験した [3]。この際、南九州地域は3つのブロックに分かれて回転し、その境界の1つが宮崎相と青島相の境界に一致する。したがって、青島相は他相と異なるブロック上で独立して運動したと考えられる。また九州―パラオ海嶺は、宮崎層群堆積途中の5 Ma頃に宮崎沖で沈み込み始め、現在は宮崎層群の直下に沈み込んでいる。青島相の局所的な隆起は、海山沈み込みとそれに伴う海山の局所的なアンダープレートによって引き起こされたと解釈できる。 宮崎層群の局所的な隆起とそれに付随する断層運動は、海嶺沈み込みの痕跡を記録している可能性がある。 参考文献 [1] Yamaji+, <i>Journal of Structural Geology</i> <b>28</b>, 980-990, 2006. [2] Yamaji, <i>Tectonophysics</i> <b>364</b>, 9-24, 2003. [3] Kodama+, <i>Geology</i> <b>9</b>, 823-826, 1995.</p>
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ロックエバル分析による短時間地質温度計の可能性
山本 由弦, 小林 唯乃, 関山 優希, 吉本 剛瑠, 千代延 俊, Bowden Stephen
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2023 ( 0 ) 181 2023年
<p>地質学が貢献する地震防災・減災に向けて、ある断層が引き起こす地震の最大ポテンシャルを評価することが重要である。そのためには、過去の事象を記録している地震断層からも動力学パラメータを抽出することが求められる。近年注目されているのが、「断層に記録された温度異常」である。断層の摩擦発熱は、断層のすべり速度と量を示す。しかしながら、過去に活動した地震断層から発熱量を正確に抽出することは困難である。定量的に検討可能な地質温度計として従来から広く用いられてきたのは、ビトリナイト反射率である。ケロジェンの一種で高分子化合物であるビトリナイトは、温度上昇あるいはその温度継続時間とともに、芳香族環の秩序性が増加し、反射率が増加する。問題となるのは、(1)その現象が短時間でも実現するのか不明であること(反応速度論の問題)、そして(2)石油生成領域から外れる高温領域(>300℃)は温度実測との比較実績がなく、データを外挿していることである(摩擦発熱に期待される高温領域における指標信頼性の問題)。現状は、短時間温度上昇を記録する温度指標の確立と検証が求められている。本研究は、堆積物中のケロジェンが、被熱温度に応じて遊離炭化水素を排出する反応に注目し、ロックエバル分析を用いた短時間地質温度計の可能性について現状を報告する。 本研究は、静岡県東部から山梨県南部に分布する上部中新統の富士川層群において、小規模な閃緑岩脈(幅<1.5 m)周辺の泥質岩を対象にロックエバル分析を実施した。またそこから採取した泥質岩と標準物質を用いた室内加熱試料に対しても、分析を実施した。これらから、ロックエバル分析を用いた短時間地質温度計の可能性を検討した。 対象とする閃緑岩脈は、富士川層群の砂泥礫岩互層と約〜40度斜交して貫入しており、ほぼ垂直の傾斜を示す。5枚の泥質岩単層を設定し、岩脈の伸びに対して直交方向に距離を測定しつつ連続的にサンプリングを行った。その結果、S2量は、岩脈近傍で極端に減少するものの、その中で距離との相関は認められなかった。また、当初期待していたTmax値については、岩脈との距離相関が得られなかった。ケロジェンの熟成には微生物の働きが貢献していると考えられているが、短時間加熱にはTmaxが反映されないことが明らかになった。一方、S2量の極端な減少は、本来ロックエバル内のオーブンで分解されるべき炭化水素が、火成岩貫入に伴う被熱異常で「事前に」分解してしまったことを意味する。我々が北海道渡島半島で検討した石英斑岩周辺の堆積岩からは、岩脈に向かって減少していくS2量が確認されており、高い全炭素量を含む堆積岩であれば、S2量が温度計として使用できる可能性は残っている。 一方、residual organic carbonの一部である、S4CO<sub>2</sub>は、5層準いずれも岩脈近傍で明瞭な減少を示した。距離を岩脈の厚さで規格化した場合、0.5または1よりも外側では10-12 mg CO<sub>2</sub>/grockで均質であるが、その内側では約10.00-0.05 mg CO<sub>2</sub>/grockを示した。興味深いことに、岩脈に向かうS4CO<sub>2</sub>の減少は、前述のS2のそれと両立しないことが確かめられた。すなわち、熱源に向かうS4CO<sub>2</sub>の減少が確認されるのは、岩脈周辺のS2量が極端に少ない(<0.1 mg/grock)場合にのみ確認された。 上記の天然試料の計測結果を、実験室内の短時間加熱実験で再現できるか、検証を実施した。2種類の試料(①富士川の岩脈から十分に離れた泥質岩で、S4CO<sub>2</sub>量は10-12 mg CO<sub>2</sub>/grock、②ロックエバルのキャリブレーション用標準試料IFP16000)を準備し、有酸素および無酸素下の2通りの加熱方法で、300℃で10<sup>3</sup>、10<sup>4</sup>、10<sup>5</sup>、10<sup>6</sup>秒の加熱をし、それら試料を分析した。その結果、加熱時間の増加とともに無酸素条件の加熱ではS2量の段階的な減少が、有酸素下のそれではS4CO<sub>2</sub>量の段階的減少が認められた。 これらの結果は、2つの可能性を示している。1つめは、加熱条件の違いによって、S2もしくはS4CO<sub>2</sub>量が短時間被熱の温度計として有用である可能性である。もう1つは、2指標を比較することによって、その被熱イベントが酸化・還元環境下であったかを示しうる点である。たとえば、酸化条件下で起こる加熱は、間隙水の存在や地震発生時に水素が発生する減少と関連している可能性がある。 さらに、本手法は従来の指標と比べて実験室内で再現できるという明確なアドバンテージも確かめられた。当日は、加熱時間を固定して温度を変化させた実験の結果も発表する予定である。</p>
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大学,民間企業,自治体,ジオパークの連携によって再出現した巨大スランプ露頭
金子 一夫, 荒戸 裕之, 山本 由弦, 山田 泰広, 白石 和也, 千代延 俊, 保柳 康一, 國香 正念, 吉本 剛瑠, 関山 優希
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2023 ( 0 ) 47 2023年
<p>立山黒部ジオパーク(以後,立黒)は,『高低差4000 mロマン 富山の中の地球へ行こう』をテーマにした,富山県東部の9市町村にまたがるジオパークである.日本海から北アルプスまで,43のジオサイト,40の文化サイト,28の自然サイトを有しているが,地形的特徴からジオサイトがなかなか見学に行けない山岳地帯に多い感は否めない.そのため市街地から近く,児童生徒の学習にも使え,手軽に見学できるジオサイトの開拓が望まれていた. 今回,富山県中新川郡立山町の中心部から車で15分程の稲村にある産廃場跡地を整備したところ,スランプ構造の全容が観察できる大露頭(南北約80 m,東西約70 m,高さ約30 mの範囲に内向き斜面の崖が「凡」字形に配列している)が出現し,それを一般公開することができた.ここに至るまでの主な経緯は,2000年頃:最初の地権者により採土場として掘削を開始.’05年:新上市町誌(新上市町誌編集委員会編,2005)に「折戸凝灰岩層,海底火山灰の堆積した緑色凝灰岩の地層」として,スランプ構造の写真が掲載される.’05-’10年?:現地権者が瓦の粉砕施設をつくり,稼働するも程なく中止.産廃場に使うがこれも中止.以後,遊休地.’21年2月:立黒のジオパーク再認定決定.審査員から身近なジオサイトの開発を望まれる.5月:立黒研究教育部会で予備調査を行い,巨大なスランプ構造が灌木と崖錐堆積物にかなり被覆されているものの,ジオサイトになりうると判断.6月:地権者に立ち入りの許可を得ると同時に,町役場にジオサイト化に向けて協力を要請.11月:役場担当から,露頭の学術的評価が欲しいとの要請で,立黒が保柳に現地調査を依頼.保柳から情報を得た荒戸,立黒学術顧問竹内章富山大学名誉教授も加わり現地調査.地元紙が露頭を写真入りで報道.’22年1月:荒戸がボーリングコア採取の許可を得たい旨.地権者との交渉をジオパークに依頼.同時に,荒戸が代表を務める『海底地すべりモデルの構築:日高沖「静内海底地すべり堆積体」の発生機構と運動様式』(科研費番号 19H02397)の研究チームに,当該露頭の調査研究を提案.立黒が地権者にボーリングコア採取を説明.許可を得る.4月:勉強会を実施し,崖錐堆積物を取り除けば,スランプの構造を立体的に研究できる大露頭が出現する可能性が議論される.5月:町民向け現地説明会の実施と地元紙,ケーブルテレビの報道.6月:現地調査を実施し,重機を使って整備工事を行い,研究を進めることを確認.これを受けて,立黒が地権者に調査方法を説明,実施の承諾を得る.7月:町役場に露頭整備にあたる業者の紹介を依頼し,それに基づき見積もりを徴取.8月:露頭の整備,調査,整備後の立黒の利用に関して,地権者,荒戸が所属する秋田大学,立黒で覚書を締結.9月:整備工事開始し,十日程で終了.その後,予備調査.ステップ設置,底面のトレンチの工事を追加で依頼.10月:チームでの調査.地元小学5・6年生全員が見学.11月:チームでの調査.分析用試料の採取.説明看板の内容の検討を開始.下旬にステップの撤去とトレンチの埋め戻し.12月:ワークショップの開催.解説看板の土台の設置.’23年4月:解説看板,安全ポールコーンの設置.同時に立入禁止の柵を撤去し,一般公開の開始.5月:立黒ジオガイド向け現地研修会の開催.調査は継続中. 露頭の調査開始から一般公開まで極めて順調であったは要因は,・科研費の一部を露頭整備に使用し,そのまま見学対象となった.・地権者との交渉や町役場と現場周辺住民への説明,調査前後の整備及び撤収作業の立ち合いは立黒が担当.・露頭が県道のすぐ脇にあり,駐車スペースも十分で,大型重機による作業が可能.・露頭整備を請け負った業者が現場から車で15分の距離で,高所作業車,発電機,排水ポンプ,高圧洗浄機など急な要望にも対応.・地権者との覚書の締結で,現場の大規模な改変が可能となる. 一方,残る問題点は,・すでに泥岩部が剥離し始めており,何もしなければ10数年で整備前の状態に戻ると思われるが,保全する費用の目処が立っていない.・以前の施設の残骸を撤去しきれていない. ジオサイトにはその保全が求められるので,この露頭をジオサイトとして維持するためには,上記問題点の解消が必要である.謝辞:同地での調査と一般公開を快諾くださった英修興産有限会社と,調査作業諸事にご協力頂いた有限会社きんたに心より感謝申し上げます.文献:新上市町誌編集委員会編,2005,新上市町誌.上市町,921p.</p>