研究等業績 - 原著論文 - 小川 泰正
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堆積岩類からの重金属類の水溶出試験に対する粒径の影響
小川泰正,山田亮一,山崎慎一,井上千弘,土屋範芳
資源地質 63 ( 3 ) 125 - 131 2013年11月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
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Interpretation of mineral zoning in submarine hydrothermal ore deposits in terms of coupled fluid flow-precipitation kinetics model
N. Shikazono, H. Kawabe, Y. Ogawa
Resource Geology 62 ( 4 ) 352 - 368 2012年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
黒鉱鉱床中で,重晶石は鉱床上部に,石英は鉱床下部に分布する.このような分布が生じる理由は,化学平衡モデルからは説明できない.一方で,熱水,海水の流動性を考慮した完全混合モデルによる沈殿速度計算では,実際の黒鉱鉱床で見られる鉱物間の分離が起こり得ることが判明した.また,海水,熱水の混合により段階的に地球化学条件が変化する多段階モデルによる速度論計算では,海底下での熱水と海水の混合により沈殿し得ることが示され,海底面上で生成すると考えられる重晶石との産状の違いと一致する結果となった.
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東北地方太平洋沖地震による岩手,宮城,福島県沿岸域の津波堆積物のヒ素に関するリスク評価
土屋範芳,井上千弘,山田亮一,山崎慎一,平野伸夫,岡本敦,小川泰正,渡邊隆広,奈良郁子,渡邉則昭,東北地方津波堆積物研究グループ
地質学雑誌 118 ( 7 ) 419 - 430 2012年07月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波によりもたらされた津波堆積物を,岩手県久慈市から福島県南相馬市まで広範囲に採取し,ヒ素による環境問題の可能性を評価した.溶出試験後の溶液は濁っており,また,人工海水による溶出値よりも高かったことから,ヒ素は微細コロイドとして津波堆積物として放出された可能性がある.また,限外ろ過(3kDa)を行なっても,以前としてヒ素濃度は高かったため,超微細コロイド,あるいは溶存成分として水溶液中では存在している可能性が高い.
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The role of hydrous ferric oxide precipitation in the fractionation of arsenic, gallium, and indium during the neutralization of acidic hot spring water by river water in the Tama River watershed, Japan
Y. Ogawa, D. Ishiyama, N. Shikazono, K. Iwane, M. Kajiwara, N. Tsuchiya
Geochimica et Cosmochimica Acta 86 367 - 383 2012年06月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
秋田県渋黒川―玉川は玉川温泉由来の酸性水が流入する.流下過程のpHが上昇するに従い,鉄水酸化物が生成され,上流から下流に向けてヒ素,ガリウム,インジウムの順でこれらに吸着される.これらを吸着した鉄水酸化物は下流の玉川ダムによる人造湖(宝仙湖)湖底に沈殿する.ヒ素,ガリウムは上流部で吸着されることから,河川流域の堆積物に広範囲に分布するのに対し,玉川ダムによる人造湖(宝仙湖)入口付近で吸着するインジウムは宝仙湖湖底に選択的に濃集される.また,鉄の酸化反応は暖かい季節に起こりやすいので,ヒ素,ガリウムは夏場により効率的に吸着される傾向がある.
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酸性河川中でのレアメタル(In, Ga) および有害元素(As, Pb) の吸着,分別挙動に関する実験的研究
梶原雅博,小川泰正,土屋範芳
資源地質 63 ( 3 ) 167 - 180 2011年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
酸性~弱酸性条件下において,鉄水酸化物,アルミニウム水酸化物,鉄アルミニウム混合酸化物を用いて,ヒ素,ガリウム,インジウム,鉛の吸着実験を行った.全般的な傾向として,塩酸,硝酸酸性条件では各元素の吸着特性に大きな違いは現れなかったが,硫酸酸性下ではより低いpH条件で吸着されることが判明した.また,酸性温泉が流入する河川で見られるような塩酸,硫酸混酸条件下での実験では,硫酸が少し混入するだけで,硫酸酸性条件で行った実験とほとんど同じ結果が得られた.
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Progress of hydration reactions in olivine-H2O and orthopyroxenite-H2O systems at 250 degrees C and vapor-saturated pressure
A. Okamoto, Y. Ogasawara, Y. Ogawa, N. Tsuchiya
Chemical Geology 289 ( 3-4 ) 245 - 255 2011年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
海洋底における蛇紋岩化作用は地球内部の水循環の重要なプロセスであるが反応メカニズムはよくわかっていない.本研究では、250℃、飽和蒸気圧下において、かんらん石−水系の水熱反応実験を行った。溶液組成と反応生成物量の詳細な分析により、時間とともにシリカ濃度が低下し、より物質移動が少なく、体積膨張率が大きくなる反応へ変化することを明らかにした。反応組織は天然の産状と類似しており、破壊を伴いながら加水反応が進行していることが示された.
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Influence of carbon structure of the anode on the production of graphite in single-walled carbon nanotube soot synthesized by arc discharge using a Fe–Ni–S catalyst
H. Nishizaka, M. Namura, K. Motomiya, Y. Ogawa, Y. Udagawa, K. Toji, Y. Sato
Carbon 49 ( 11 ) 3607 - 3614 2011年09月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes : CNTs)は非常に優れた機械的・熱的・電気的特性を有する,極めて興味深い材料であり,その合成方法は数種類あるが,アーク放電法において陽極に黒鉛化度の異なる炭素棒を用いて、SWCNTs を合成した.陽極炭素材料のグラファイト結晶構造と形状が,得られるスス中のグラファイト不純物の結晶構造と形状に影響することを明らかにした.
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偏光式エネルギー分散型蛍光X線分析による土壌および底質中の微量元素の同時分析
山崎慎一,松波寿弥,武田晃,木村和彦,山路功,小川泰正,土屋範芳
分析化学 60 ( 4 ) 315 - 323 2011年04月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
粉末ペレット化した岩石,土壌試料中の微量成分を波長分散型蛍光X線分析し,湿式分解により溶液化した後にICP質量分析装置,ICP発光分析装置により求めた値と比較した.Ni,Cu,Zn,Rb,Sr,Nb,Cs,Ba,La,Ce,Ndに関しては,両手法で求めた測定値は概ね一致した.これらの元素に比べ,V,Y,Pb,Thは得られた値は多少異なった.他方, Cr,Zr,Snは湿式分解中に気化するか,あるいは分解が不十分なため,過小評価する可能性が極めて高い.Coは鉄のKβ線による干渉が著しいため,蛍光X線分析には適していない.
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Seasonal and spatial distribution of trace elements in the water and sediments of the Tsurumi River in Japan
K.M. Mohiuddin, K. Otomo, Y. Ogawa, N. Shikazono
Environmental Monitoring and Assessment 184 265 - 279 2011年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
神奈川県鶴見川から20地点より河川水,河川堆積物試料を採取し,化学分析,逐次抽出を行った.全般的傾向として,下流ほど人為的に排出された重金属類が多く濃集していることがわかった.また,重金属類の移動しやすさは,カドミウム>亜鉛>鉛>銅>コバルト>クロム>モリブデン>ニッケルの順であった.これらの結果より,より汚染が進むと,河川環境に大きな影響を与え得ることが示唆された.
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東北地方北部の金属鉱床に 随伴する高インジウム鉱石の形成条件
山田亮一,吉田武義,掛川武,奈良郁子,小川泰正
資源地質 60 ( 3 ) 153 - 164 2010年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
秋田県北鹿地域に点在する鉱山から採取した鉱石の化学分析を行ったところ,高インジウム鉱床の探査指針として,(1)マグマ水が大きく関与する高温かつ還元的熱水から閃亜鉛鉱が沈殿するやや酸化的な環境へと急激な環境変化が行われた場,(2)高温かつ還元的な熱水から放出されたインジウムが開放されず,閃亜鉛鉱に取り込まれるまで保持される環境,が示唆された.しかし,これらの条件を満たす地質環境の場でも,インジウムの濃集が確認できないところもあることから,インジウム濃集過程に関わるさらなる研究が不可欠である.
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竜の口層の堆積岩における重金属類の溶出挙動および形態変化に及ぼす風化の影響
須藤孝一,米田剛,小川泰正,山田亮一,井上千弘,土屋範芳
応用地質 51 ( 4 ) 181 - 190 2010年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
風化,未風化海成堆積物を用いて,環境省告示18号試験を行ったところ,風化試料の方がカドミウムの溶出が多かった.同様に,未風化試料を湿度100%,30℃にて強制的に酸化(風化)したところ,カドミウムの溶出量が上昇した.人工的風化試料を用いて逐次抽出を行ったところ,岩石成分との結合力が弱い交換態へと,化学形態が変化していることが判明した.これらのことから,環境省告示18号試験により溶出リスクを評価するには,岩石の風化状況,保存法なども検討する必要があることが示唆される.
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The application of dynamic reaction cell (DRC) ICP-MS in chromium and iron determinations in rock, soil and terrestrial water samples
Y. Ogawa, S. Yamasaki, N. Tsuchiya
Analytical Sciences 26 ( 8 ) 867 - 872 2010年08月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
アンモニアガスをDRC-ICP-MSの反応ガスとして用いて,土壌,岩石,河川水中の鉄,クロム分析の適用の可能性評価を行った.アルゴン起因の干渉が深刻な質量数52,56を用いても,効果的にアルゴン起因の干渉イオン生成を抑制できるため,多くの環境試料中のごく微量の両元素の定量分析において効果があることが確認された.一方で,カルシウムとアンモニアの反応による新たな干渉イオンを避けるため,質量数54を用いることで,大理石中の微量な鉄分析に適用できることを見出した.
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Rapid simultaneous multi-element determination of soils and environmental samples with polarizing energy dispersive X-ray fluorescence (EDXRF) spectrometry using pressed powder pellets
H. Matsunami, K. Matsuda, S. Yamasaki, K. Kimura, Y. Ogawa, Y. Miura, I. Yamaji, N. Tsuchiya
Soil Science and Plant Nutrition 56 ( 4 ) 530 - 540 2010年08月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
粉末ペレット化した岩石,土壌試料中の成分を波長分散型蛍光X線分析し,湿式分解による溶液分析の結果と比較した.CaO,K2O, TiO2, MnO, Fe2O3, Ni, Zn, Rb, Sr,Cs,Ba,Ceに関しては,両手法で求めた測定値は概ね一致した.これらの元素に比べ,Na2O,MgO,Co,Sb,Prは得られた値は多少異なったが,湿式分析には時間がかかり,有害な試薬を用いることを考慮すると,粉末ペレットを用いた分析は,実用の可能性はあると言える.他方, Cr,Zr,Snは湿式分解中に気化するか,あるいは分解が不十分なため,過小評価する可能性が極めて高いことがわかった.
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福島県内に流通する家畜ふん堆肥中の微量元素濃度の実態
松浪寿弥,小川泰正,山崎慎一,三浦吉則
日本土壌肥料学会誌 80 ( 3 ) 250 - 256 2009年06月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
福島県に流通する家畜ふん堆肥122試料の化学分析を行ったところ,牛ふん堆肥,鳥ふん堆肥,豚ふん堆肥では,含有成分が異なっており,ヒ素,鉛,カドミウムなどは全般的に低濃度であった.しかし,鳥ふん堆肥では,銅,亜鉛濃度が高いものもあり,それらの堆肥を施用するときは土壌汚染に注意する必要があることがわかった.
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Relationship between weathering, mountain uplift, and climate during the Cenozoic as deduced from the global carbon-strontium cycle model
H. Kashiwagi, N. Shikazono, Y. Ogawa
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 207 ( 1-2 ) 139 - 149 2008年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
新生代における、グローバル炭素-ストロンチウム循環モデルを考案した.ストロンチウム循環については,地下水フラックス,玄武岩の風化,ヒマラヤの風化を組み入れた.初期中新世までの87Sr/86Srの増加パターンは,始新世/漸新世境界,中期中新世,および漸新世/中新世境界における,高緯度での大陸の氷河化の時期におおよそ対応する結果となった.
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Geochemical behavior of rare earth elements in hydrothermally altered rocks of Kuroko mining area, Japan
N. Shikazono, Y. Ogawa, M. Utada, D. Ishiyama, T. Mizuta, N. Ishikawa, Y. Kubota
Journal of Geochemical Exploration 98 ( 3 ) 65 - 79 2008年09月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
黒鉱鉱床が点在する地域に酸性岩は広く分布する.秋田県大館市より採取した酸性岩中の希土類元素の化学分析を行った.希土類元素は熱水変質を受けてもほとんど溶出することはないが,熱水変質レベルが高くなるに従って,軽希土類元素が増加する傾向が見られた.黒鉱鉱床の探鉱の指標にAlteration Index,酸素同位体比などがあるが,統計解析を行った結果,希土類元素の増加は,これらの指標と高い相関性があることから,希土類元素が新たな探鉱の指標となり得ることを見出した.
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地圏における重金属類の分布と岩石からの移行プロセスにおける化学形態に関する基礎的検討
土屋範芳,狩野真悟,小川泰正,山田亮一
地学雑誌 116 ( 6 ) 864 - 876 2007年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
科学振興調整費「産学官共同研究の効果的な推進プログラム」における“地圏環境インフォマティクスのシステム開発”において,開発中の地理情報システムGENIUSを用いて視覚的に汚染状況を表すことで,鉱山開発に伴う人為的要因と表層変質帯からの重金属類の溶出と2つの要因があることがわかった.また,鉱山から離れた地点でも,重金属類が高濃度に検出された.風化岩石から,重金属類はコロイド粒子として放出されることを考えると,真溶存種,コロイド粒子といった重金属類の移動形態解明の必要性が示唆される.
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多段階ろ過からみた風化粘板岩からの元素溶出挙動
小川泰正,原淳子,土屋範芳,丸茂克美,駒井武
資源地質 57 ( 1 ) 15 - 24 2007年06月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
土壌中からの有害元素溶出リスク評価に関しては,環境省に定められた規定があるが,岩石に対してはリスク評価法が確立されていない.評価法確立するにあたり,岩石の風化レベルの違いが溶出に対してどのように影響を与えるのかを調べた.風化レベルの異なる黒色粘板岩を用いて,環境省告示18号試験に準じた方法で溶出試験を行った後,0.45,0.2μm,限外ろか(100kDa)を連続的に行ったところ,未風化岩石からは,真溶存種として重金属類が溶出するのに対し,風化岩石からはコロイド粒子として環境中に放出されることが判明した.
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Mechanism of sekko ore formation in the Kuroko massive sulfide-sulfate deposits of northern Japan based on anhydrite and gypsum analyses
Y. Ogawa, N. Shikazono, D. Ishiyama, H. Sato, T. Mizuta, T. Nakano
Mineralium Deposita 42 ( 3 ) 219 - 233 2007年02月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
黒鉱鉱床産硬石膏中は,ストロンチウム含有量,同位体比,コンドライト規格希土類元素パターンより,2つのタイプに大別される.どちらの硬石膏も,生成温度,熱水/海水混合比など大きな違いはないものと推測されることから,初生的にはType I硬石膏が生成されたものと考えられる.一方で,顕微鏡観察を行った結果,Type IIの硬石膏には再結晶を起こした痕跡が確認された.また,硬石膏水和により2次的に生成した石膏中も,Type IIと類似する特徴を有するものが存在していた.以上の結果より,Type IIの硬石膏は,Type Iが熱水に富んだ条件の中で再結晶をする過程で,軽希土類元素が溶出したものと推測される.
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熱水変質に伴う希土類元素の地球化学的挙動:熱水系におけるAm,Cmの移行遅延に対する示唆
鹿園直建,小川泰正
原子力バックエンド研究 13 ( 1 ) 3 - 11 2006年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
黒鉱鉱床が点在する地域に酸性岩は広く分布する.秋田県大館市より採取した酸性岩中の希土類元素の化学分析を行った.希土類元素は熱水変質を受けてもほとんど溶出することはなく,一部希土類元素が熱水から岩石へと付加されたと思われる兆候が見られた.一方で,アメリシウム,キュリウムなどの超ウラン元素は天然には存在せず,高レベル放射性廃棄物の地層処分の際には,化学的性質が類似する希土類元素の天然環境での挙動から予想する必要がある.上記の結果より,処分地付近で熱水活動が起こったとしても,アメリシウム,キュリウムは熱水中にはほとんど移行しないものと推測される.