研究等業績 - その他 - 若狭 正彦
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片脚着地時の下肢回旋が足関節kinematicsに与える影響:-足関節捻挫既往肢の特徴-
南波 晃, 岡田 恭司, 若狭 正彦, 齊藤 明, 木元 稔, 越後谷 和貴, 大倉 和貴, 須田 智寛, 近藤 諒平
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46 ( 0 ) H2 - 48_1-H2-48_1 2019年
<p>【はじめに、目的】スポーツ外傷の中で足関節捻挫は最も発生頻度が高く、特に着地動作時に生じることが多いとされている。捻挫既往肢では着地時に足関節回外角度の増大や長腓骨筋の筋活動が低下することが報告されており、高い再発率との関連が示唆されている。実際のスポーツ場面では下肢回旋を伴って着地することが多く、この事が捻挫再発に関与する可能性もあるがその様な報告はない。そこで本研究の目的は捻挫既往肢における片脚着地時の下肢回旋が足関節角度や筋活動に及ぼす影響を明らかにすることである。</p><p>【方法】下肢に手術歴のない男子大学生18名(平均年齢21歳)を対象とし、複数回捻挫の既往があるものを既往群(18肢)、既往がないものを対照群(18肢)とした。課題動作は30 cm台上からの片脚着地とし、下肢回旋中間位、外旋30°位、内旋30°位の3条件とした。いずれも台の10 cm前方に着地点をマーキングし、その直上に着地させた。足関節角度は電子角度計Flexible GonioMeter(Biometrics社製)を用いて底背屈および回内外角度を測定した。筋活動は表面筋電計 Biolog DL-3100(S&ME社製)を使用し、被験筋は前脛骨筋、長腓骨筋、腓腹筋内側・外側頭の4筋とした。着地時点は足圧分布システムF-scan(ニッタ社製)を装着し、時間的に同期させ特定した。いずれも着地前後100 msecを解析区間とし、筋電図データは5 msecごとの平均振幅を算出した後、各筋の最大収縮時の値で正規化した(%MVC)。また課題動作実施前に、足関節機能として足関節機能的不安定テスト、外果距骨間離解率、アーチ高率、外返し筋力、関節位置覚を測定した。統計学的解析には両群における着地時の足関節角度、筋活動量および足関節機能の差を比較するため対応のないt検定、Mann-WhitneyのU検定を用い、また各群とも下肢回旋の条件間での足関節角度の差を一元配置分散分析を用いて検討した。解析ソフトはSPSS22.0を使用し、有意水準5%とした。</p><p>【結果】捻挫既往群では対照群に比べ足関節機能的不安定性テストが有意に低値(85.3 ± 4.5 vs. 99.5±1.2 ; p<0.001)を示し、外果距骨間離解率が有意に高値(15.0 ±4.5 vs. 7.8± 3.9 ; p<0.05)であった。着地時の足関節角度は、内旋30°位での着地前100~50 msecにおいて捻挫既往群が対照群に比べ底屈角度が有意に大きく(p<0.05)、着地後40~60 msecにおいて回外角度が有意に大きかった(p<0.05)。また着地後40~60 msecでは、捻挫既往群で前脛骨筋の筋活動量が有意に高値(38% vs. 27% ; p<0.05)を示した。しかし下肢回旋の条件間においては、各群とも3条件間で有意差は認められなかった。</p><p>【結論(考察も含む)】捻挫既往肢における下肢内旋位での片脚着地では、着地前の足関節底屈角度増大および着地後の回外角度増大と前脛骨筋の過活動が生じることが明らかとなり、この事が足関節捻挫の再発へとつながる可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は秋田大学医学部倫理委員会の研究指針に沿って実施した。また対象者には事前に研究目的や意義、研究方法について十分に説明し書面にて同意を得た。</p>
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脳性麻痺児おける歩行の非計画停止での重心と圧中心の分析:- 典型的発達青年との比較 -
木元 稔, 齊藤 明, 岡田 恭司, 水戸部 一孝, 齋藤 正親, 川野辺 有紀, 堀岡 航, 佐々木 美帆, 坂本 仁, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46 ( 0 ) J - 45_1-J-45_1 2019年
<p>【はじめに】</p><p>脳性麻痺(cerebral palsy; 以下、CP)児では、自立歩行が可能でも、歩行を急停止することが困難である症例がみられる。CP児と典型的発達児では歩行における身体の重心や圧中心の運動学的特性が異なることが知られているが、歩行停止においてそれらを分析した報告はない。</p><p> 本研究の目的は、CP児での非計画的な歩行停止における、重心と圧中心の移動距離を計測・解析し、典型的発達青年との違いを明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>対象は痙性両麻痺型CP児10名(年齢は11.3±2.91歳;性別は男7名、女3名; 粗大運動能力分類システムはレベルⅠが7名、レベルⅡが3名)と、典型的発達青年男性6名(年齢は19.7±0.41歳)である。</p><p> 歩行路は7.5 mとし、床反力計5台、赤外線カメラ8台、プロジェクター、スクリーンを設置した。WorldViz社製Vizardを用いて、被験者が床反力計を踏んだら、スクリーンへの投影画像が緑色から赤色へ直ちに変化する課題提示システムを構築した。実施課題は、①スクリーンの色が緑色のままであれば自己選択速度での歩行を継続、②赤色に変わった場合は可能な限り早く止まる、の2つとした。</p><p> 歩行停止時点の定義は、重心の移動速度が0.1 m/s以下になった時とした。解析指標は、歩行停止指示時での歩行速度、歩行停止指示から停止までの時間・歩数・距離、重心や圧中心の移動距離(軌跡・前後・左右)とし、CP児と典型的発達青年を比較した。</p><p>【結果】</p><p>CP児では歩行停止までに有意に長い時間を要し(1.25±0.19 vs 0.94±0.03 s; p=0.001)、停止に至るまでの歩数が多かった(2.5±0.6 vs 1.0±0歩; p<0.0001)。典型的発達青年は片足を前方に接地し歩行を停止させるが、CP児は全例とも両足の前後接地位置をほぼ揃え停止した。</p><p> 圧中心の軌跡移動距離は、CP児と典型的発達青年との間で有意な差は認められなかった。しかし、重心の軌跡・前後移動距離や圧中心の前後移動距離はCP児が1.3〜1.4倍大きく(p値は0.016〜0.035)、重心の左右移動距離は約2.0倍(p<0.001)、圧中心の左右移動距離は約4.3倍大きかった(p<0.001)。</p><p>【考察】</p><p>CP児では歩行停止時に重心の左右移動が過大であり、これを制御するために圧中心を左右へ大きく移動させ、バランスを制御していると考えられる。圧中心を左右に大きく移動させるには、歩行停止時に下肢を側方へ振り出すことが必要であるが、この停止方法ではより長い時間と多くの歩数を要すると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,被験者と保護者に文書を用いて口頭で説明を行い,同意が得られた方のみを対象とした。</p>
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脳性麻痺児における歩行の非計画停止動作:– 健常青年との比較 –
木元 稔, 若狭 正彦, 岡田 恭司, 水戸部 一孝, 齋藤 正親, 川野辺 有紀, 木元 美沙子, 堀岡 航, 坂本 仁, 齊藤 明
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46 ( 0 ) I - 103_2-I-103_2 2019年
<p>【はじめに、目的】脳性麻痺(cerebral palsy; 以下、CP)児では、自立歩行が可能でも歩行停止が困難である症例がみられる。学校や地域生活において急停止を要する時、それが困難である場合は衝突や転倒につながる危険性がある。しかし、CP児での歩行停止動作が健常者のそれとどのように異なるかは知られていない。本研究の目的は、CP児での非計画的な歩行停止動作を3次元動作解析装置を用いて解析し、健常青年との違いを明らかにすることとした。</p><p>【方法】対象は痙性両麻痺型CP児10名(年齢 11.3±2.91歳;性別 男7名、女3名; GMFCS レベルⅠ 7名、レベルⅡ 3名)と、健常青年男性6名(年齢 19.7±0.41歳)である。</p><p>歩行路は7.5 mとし、床反力計5台、赤外線カメラ8台、プロジェクター、スクリーンを設置した。WorldViz社製Vizardを用いて、被験者が床反力計を踏んだら、スクリーンへの投影画像が緑色から赤色へ直ちに変化する課題提示システムを構築した。</p><p>実施課題は、①スクリーンの色が緑色のままであれば自己選択速度での歩行を継続、②赤色に変わった場合は可能な限り早く止まる、とし被験者には課題の提示順序を盲検化した。身体重心移動の速度が1.0 m/s以下となった時点を歩行停止と定義し、得られた指標をCP児と健常青年間で比較した。</p><p>【結果】CP児は健常青年よりも歩行停止の指示提示時における歩行速度が遅いにもかかわらず(1.20±0.16 vs 1.45±0.14 m/s; p=0.009)、歩行停止までに有意に長い時間を要し(1.25±0.19 vs 0.94±0.03 s; p=0.001)、距離に差はないものの歩数が多かった(2.5±0.6 vs 1.0±0歩; p<0.0001)。関節の最大角度は、CP児において膝関節屈曲が大きかったが(49.3±14.2 vs 34.3±8.1 deg ; p=0.034)、足関節底屈は小さかった(3.3±14.6 vs 15.4±4.9 deg; p=0.032)。関節モーメントの最大値は股関節伸展(0.65±0.46 vs 0.31±0.06 Nm/kg*m; p=0.028)、外転(0.96±0.41 vs 0.58±0.11 Nm/kg*m; p=0.019)、足関節底屈モーメント(0.76±0.23 vs 0.50±0.06 Nm/kg*m; p=0.021)がCP児で有意に大きかった。床反力ベクトル角度の最大値は、CP児で有意に小さかった(18.8±4.3 vs 26.5±2.3 deg; p=0.002)。</p><p>【考察】歩行停止では、停止に要する力を適切な方向に発揮することが求められる。CP児では歩行停止時に関節モーメントが大きいものの、足関節底屈角度が小さいまま、膝関節を大きく屈曲していた。また、垂直軸から後方への床反力ベクトル角度は、健常青年では平均26.5度、CP児では平均18.8度であり、CP児ではより垂直方向に力を発揮していた。つまり、CP児では、歩行停止時に後方へ力を発揮することが難しいため、停止までの時間を要すると考えられる。</p><p>【結論】CP児では、歩行停止時に進行方向とは逆方向への力の発揮が難しく、歩行停止が困難であると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,被験者と保護者に文書を用いて口頭で説明を行い,同意が得られた方のみを対象とした。</p>
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腹部大動脈瘤患者の術前うつと歩行能力:-地域在住高齢者の比較-
越後谷 和貴, 加賀屋 勇気, 阿部 芳久, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46 ( 0 ) A - 95_1-A-95_1 2019年
<p>【背景および目的】腹部大動脈瘤患者においては、瘤破裂に対する恐怖感から必要以上に日常生活活動に制限をかける者もいる。抑うつは身体活動のみならず歩行能力にも影響を及ぼす可能性があるため、腹部大動脈瘤患者の術前うつを評価し、手術前後の歩行能力を地域在住高齢者と比較することを目的とした。</p><p> </p><p>【方法(または症例)】対象は待機的手術が行われた患者2名(症例A:64歳、男性、人工血管置換術施行、症例B:74歳、男性、ステントグラフト内挿術施行)および地域在住高齢者10名(70歳、BMI25.2、女10名)とした。術前うつは老年期うつ病評価尺度(GDS)で評価した。歩行能力は10m快適歩行速度、10m快適歩行における足圧分布で評価し、術前・術後にそれぞれ3回測定した。なお、足圧分布は足長に対する足圧中心軌跡の移動距離比である%Longを算出し、比較に用いた。対象者はいずれも下肢に整形疾患や中枢疾患のない者を選択した。</p><p> </p><p>【結果】GDSは症例Aで7点、症例Bで0点、高齢者で2点であった。10m快適歩行速度は症例Aで術前0.7m/sec、術後1.0m/sec、症例Bで1.2m/sec、1.3m/sec、高齢者で1.3m/secであった。また%Longは症例Aで術前70.8%、術後74.9%、症例Bで術前72.4%、術後71.9%、高齢者79.0%であった。</p><p> </p><p>【考察および結論】術前にうつ傾向を示した症例Aでは、うつ傾向を示さなかった症例Bおよび高齢者に比べ、術前後の10m快適歩行速度が低値を示す傾向にあった。また術前の足圧中心軌跡の移動距離比はうつ傾向を示した症例Aで低値を示す傾向にあった。うつ傾向の患者では術前の歩行能力が低下している可能性があるため、今後は症例数を増やし検証する必要がある。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】書面で説明を行い、同意書を得た上で開始した。測定中は理学療法士が傍に着き、事故のないように配慮した。</p>
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下肢回旋方向が片脚着地の足圧に与える影響
新出 卓斗, 齊藤 明, 岡田 恭司, 若狭 正彦, 木元 稔, 柴田 和幸, 鎌田 哲彰, 大倉 和貴, 佐藤 大道, 髙橋 裕介
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) H2-245_2 - H2-245_2 2019年
<p>【はじめに、目的】</p><p>足関節捻挫は競技種目を問わず発生頻度が高く,スポーツにおける代表的な外傷の1つである.受傷後は疼痛により長期にわたり競技からの離脱を強いられることもあり,また足関節に慢性的な不安定症を生じることが多く再発率が高いとされており,受傷・再発の予防が重要である.足関節は外反方向に比べ内反方向に脆弱な関節であり足関節捻挫の約8割が内反型だとされている.先行研究から足関節捻挫と足圧の外側偏移などが示唆されている.下肢回旋は着地時の足圧に影響を与えると考えられるが十分な検討は行われていない.そこで本研究は着地における下肢回旋方向が足圧に与える影響を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人30名(男性:15名、女性15名:22 ± 1歳)とした.課題動作は30cm台上からの片脚着地とし,下肢の回旋は1)中間位、2)外旋位、3)内旋位の3条件とした.回旋は外旋,内旋共に中間位より30°とし着地点にマーキングしその直上に着地させた.着地の際は下肢のみ回旋させ体幹の回旋が生じないように保持させた.着地における足圧変位を足圧分布測定システム(F-scanⅡ / ニッタ社製)で測定した.足部の最内側を0としたときの着地時の内外側方向における足圧中心位置を足幅で除し%着地点とした.%着地点はその値が大きいほど足部の外側で着地したことを示している.また足部の内外側方向における足圧中心の移動量を求め,それを足幅で除し%移動量とした.%移動量は負の値となると内側に移動したことを示し,正の値となると外側に移動したことを示す.それぞれの測定結果における各条件の差をBonferroniの多重比較法を用いて検定した.</p><p>【結果】</p><p>%着地点は中間位 47.9 ± 5.3%,外旋位 47.5 ± 8.5%,内旋47.7 ± 14.6%となり有意差はなかった.%移動量は中間位 - 1.6 ± 8.2%,外旋位 - 16.2 ± 10.4%,内旋19.2 ± 12.8%となり外旋位が他の肢位より有意に小さく(各<i>p</i> < 0.01),内旋位が他の肢位より有意に大きかった(各<i>p</i> < 0.01).</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>着地時の足圧はいずれの下肢回旋方向でも47%であり,足部の内外側方向における中心で着地していることが分かった.しかし,着地後の足圧変位には下肢回旋方向により差が見られた.中間位ではほとんど変位が見られなかったが,外旋位では内側方向に,内旋位では外側方向に足圧中心が変位した.下肢内旋でみられた足圧中心の外側への変位は足部外側の荷重圧を増加させ足関節内反捻挫の受傷リスクを高める可能性があると考えられる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には事前に研究目的や意義,方法について十分に説明し,書面にて同意を得た.また本研究は秋田大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て実施した(受付番号 : 1770).</p>
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回復期リハビリ開始前より自立歩行が可能であった片麻痺患者の足圧分布の特徴
越後谷 和貴, 皆方 伸, 長谷川 弘一, 若狭 正彦, 木元 稔, 齊藤 明, 大倉 和貴, 須田 智寛, 南波 晃, 岡田 恭司
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) E-183_2 - E-183_2 2019年
<p>【目的】</p><p> 脳卒中後片麻痺患者のうち、リハビリ開始時に杖なしで自立歩行が可能な患者では、歩行パターンに何らかの異常を有しても、歩行自立の妨げにはならない程度の異常と言える。よってこれらの異常を定量的に明らかにできれば、片麻痺患者に歩行自立を許可する基準となると考えられる。近年、簡便かつ定量的に歩行パターンを評価できるツールとして足圧分布が種々の疾患で広く調べられており、片麻痺患者でも応用が期待できる。本研究の目的は、回復期リハビリ開始前から自立歩行が可能であった片麻痺患者の歩行パターンを、足圧分布を用いて解析し、自立歩行を許可しうる異常を明らかにすることである。</p><p>【方法】</p><p> 回復期リハビリテーションを受けた脳卒中後患者31名のうち、入院時に杖なしで歩行が自立していた右片麻痺患者8名(自立歩行群;男6名、女2名、平均年齢62 ±7歳、梗塞4名、出血4名)と、75歳未満の地域在住者で下肢に整形疾患のない14名(健常群;男7名、女7名、64 ± 6歳)を対象に足圧分布測定システム(F-scan Ⅱ、ニッタ社製)を用いて、10 m 快適歩行における足圧分布、および歩行速度を計測した。足圧分布のデータより、踵、足底中央、中足骨、母趾、第2-5趾の5領域の荷重圧比、足圧中心軌跡の足部長軸方向の移動距離比である%Long をそれぞれ3回計測し、平均値を算出した。統計学的検討では健常群と比較した入院時の特徴を明らかにするため、荷重圧比、%Long、歩行速度の群間比較に対応のないt 検定を用いた。また荷重圧比、%Long と歩行速度との相関をSpearman の順位相関係数で検討した。解析ソフトはSPSS 21 を用い、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p> 健常群に比べ、自立歩行群では右足(麻痺側)の足底中央への荷重圧比が高値(健常群2.9 ± 1.7% vs.自立歩行群 8.3 ± 6.4%)を示し、第2-5趾への荷重圧比が低値(8.8 ± 4.0% vs. 5.4 ± 1.5%)で、%Longは低値(78.7 ± 7.4% vs. 70.1 ± 8.3%)を示した(それぞれp = 0.008,p = 0.014,p = 0.030)。左足(非麻痺側)では足底中央への荷重圧比が高値(2.8 ± 2.1% vs. 8.2 ± 8.1%)を示し、%Longは低値(77.8 ± 6.8% vs. 68.2 ± 6.1%)を示した(それぞれp = 0.034,p = 0.004)。自立歩行群で歩行速度は低値(1.3 ± 0.2 m/sec vs. 1.0 ± 0.2 m/sec)を示した(p = 0.006)。</p><p> 歩行速度は右足の踵(rs = .49,p = 0.022)、%Long(rs = .45,p = 0.035)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.56,p = 0.007)とは有意な負の相関を示した。また左足の踵(rs = .56,p = 0.007)、%Long(rs = .49,p = 0.022)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.60,p = 0.003)とは有意な負の相関を示した。</p><p>【考察】</p><p> 健常群に比べ自立歩行群では麻痺側、非麻痺側とも足底中央への荷重圧比が高く、足部長軸方向への移動距離比である%Longが低値で、かつ%Longと歩行速度との相関性が注目された。脳卒中後患者では両側の%Longが健常者の85%程度あれば、自立歩行を許可することが可能と考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 書面で説明を行い、同意書を得た上で開始した。測定中は理学療法士が傍に着き、事故のないように配慮した(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター倫理審査委員会28-5)。</p>
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片脚着地時の下肢回旋が足関節kinematicsに与える影響
南波 晃, 岡田 恭司, 若狭 正彦, 齊藤 明, 木元 稔, 越後谷 和貴, 大倉 和貴, 須田 智寛, 近藤 諒平
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) H2-48_1 - H2-48_1 2019年
<p>【はじめに、目的】スポーツ外傷の中で足関節捻挫は最も発生頻度が高く、特に着地動作時に生じることが多いとされている。捻挫既往肢では着地時に足関節回外角度の増大や長腓骨筋の筋活動が低下することが報告されており、高い再発率との関連が示唆されている。実際のスポーツ場面では下肢回旋を伴って着地することが多く、この事が捻挫再発に関与する可能性もあるがその様な報告はない。そこで本研究の目的は捻挫既往肢における片脚着地時の下肢回旋が足関節角度や筋活動に及ぼす影響を明らかにすることである。</p><p>【方法】下肢に手術歴のない男子大学生18名(平均年齢21歳)を対象とし、複数回捻挫の既往があるものを既往群(18肢)、既往がないものを対照群(18肢)とした。課題動作は30 cm台上からの片脚着地とし、下肢回旋中間位、外旋30°位、内旋30°位の3条件とした。いずれも台の10 cm前方に着地点をマーキングし、その直上に着地させた。足関節角度は電子角度計Flexible GonioMeter(Biometrics社製)を用いて底背屈および回内外角度を測定した。筋活動は表面筋電計 Biolog DL-3100(S&ME社製)を使用し、被験筋は前脛骨筋、長腓骨筋、腓腹筋内側・外側頭の4筋とした。着地時点は足圧分布システムF-scan(ニッタ社製)を装着し、時間的に同期させ特定した。いずれも着地前後100 msecを解析区間とし、筋電図データは5 msecごとの平均振幅を算出した後、各筋の最大収縮時の値で正規化した(%MVC)。また課題動作実施前に、足関節機能として足関節機能的不安定テスト、外果距骨間離解率、アーチ高率、外返し筋力、関節位置覚を測定した。統計学的解析には両群における着地時の足関節角度、筋活動量および足関節機能の差を比較するため対応のないt検定、Mann-WhitneyのU検定を用い、また各群とも下肢回旋の条件間での足関節角度の差を一元配置分散分析を用いて検討した。解析ソフトはSPSS22.0を使用し、有意水準5%とした。</p><p>【結果】捻挫既往群では対照群に比べ足関節機能的不安定性テストが有意に低値(85.3 ± 4.5 vs. 99.5±1.2 ; p<0.001)を示し、外果距骨間離解率が有意に高値(15.0 ±4.5 vs. 7.8± 3.9 ; p<0.05)であった。着地時の足関節角度は、内旋30°位での着地前100~50 msecにおいて捻挫既往群が対照群に比べ底屈角度が有意に大きく(p<0.05)、着地後40~60 msecにおいて回外角度が有意に大きかった(p<0.05)。また着地後40~60 msecでは、捻挫既往群で前脛骨筋の筋活動量が有意に高値(38% vs. 27% ; p<0.05)を示した。しかし下肢回旋の条件間においては、各群とも3条件間で有意差は認められなかった。</p><p>【結論(考察も含む)】捻挫既往肢における下肢内旋位での片脚着地では、着地前の足関節底屈角度増大および着地後の回外角度増大と前脛骨筋の過活動が生じることが明らかとなり、この事が足関節捻挫の再発へとつながる可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は秋田大学医学部倫理委員会の研究指針に沿って実施した。また対象者には事前に研究目的や意義、研究方法について十分に説明し書面にて同意を得た。</p>
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脳性麻痺児おける歩行の非計画停止での重心と圧中心の分析
木元 稔, 岡田 恭司, 水戸部 一孝, 齋藤 正親, 川野辺 有紀, 堀岡 航, 佐々木 美帆, 坂本 仁, 若狭 正彦, 齊藤 明
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) J-45_1 - J-45_1 2019年
<p>【はじめに】</p><p>脳性麻痺(cerebral palsy; 以下、CP)児では、自立歩行が可能でも、歩行を急停止することが困難である症例がみられる。CP児と典型的発達児では歩行における身体の重心や圧中心の運動学的特性が異なることが知られているが、歩行停止においてそれらを分析した報告はない。</p><p> 本研究の目的は、CP児での非計画的な歩行停止における、重心と圧中心の移動距離を計測・解析し、典型的発達青年との違いを明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>対象は痙性両麻痺型CP児10名(年齢は11.3±2.91歳;性別は男7名、女3名; 粗大運動能力分類システムはレベルⅠが7名、レベルⅡが3名)と、典型的発達青年男性6名(年齢は19.7±0.41歳)である。</p><p> 歩行路は7.5 mとし、床反力計5台、赤外線カメラ8台、プロジェクター、スクリーンを設置した。WorldViz社製Vizardを用いて、被験者が床反力計を踏んだら、スクリーンへの投影画像が緑色から赤色へ直ちに変化する課題提示システムを構築した。実施課題は、①スクリーンの色が緑色のままであれば自己選択速度での歩行を継続、②赤色に変わった場合は可能な限り早く止まる、の2つとした。</p><p> 歩行停止時点の定義は、重心の移動速度が0.1 m/s以下になった時とした。解析指標は、歩行停止指示時での歩行速度、歩行停止指示から停止までの時間・歩数・距離、重心や圧中心の移動距離(軌跡・前後・左右)とし、CP児と典型的発達青年を比較した。</p><p>【結果】</p><p>CP児では歩行停止までに有意に長い時間を要し(1.25±0.19 vs 0.94±0.03 s; p=0.001)、停止に至るまでの歩数が多かった(2.5±0.6 vs 1.0±0歩; p<0.0001)。典型的発達青年は片足を前方に接地し歩行を停止させるが、CP児は全例とも両足の前後接地位置をほぼ揃え停止した。</p><p> 圧中心の軌跡移動距離は、CP児と典型的発達青年との間で有意な差は認められなかった。しかし、重心の軌跡・前後移動距離や圧中心の前後移動距離はCP児が1.3〜1.4倍大きく(p値は0.016〜0.035)、重心の左右移動距離は約2.0倍(p<0.001)、圧中心の左右移動距離は約4.3倍大きかった(p<0.001)。</p><p>【考察】</p><p>CP児では歩行停止時に重心の左右移動が過大であり、これを制御するために圧中心を左右へ大きく移動させ、バランスを制御していると考えられる。圧中心を左右に大きく移動させるには、歩行停止時に下肢を側方へ振り出すことが必要であるが、この停止方法ではより長い時間と多くの歩数を要すると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,被験者と保護者に文書を用いて口頭で説明を行い,同意が得られた方のみを対象とした。</p>
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脳性麻痺児における歩行の非計画停止動作
木元 稔, 岡田 恭司, 水戸部 一孝, 齋藤 正親, 川野辺 有紀, 木元 美沙子, 堀岡 航, 坂本 仁, 齊藤 明, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) I-103_2 - I-103_2 2019年
<p>【はじめに、目的】脳性麻痺(cerebral palsy; 以下、CP)児では、自立歩行が可能でも歩行停止が困難である症例がみられる。学校や地域生活において急停止を要する時、それが困難である場合は衝突や転倒につながる危険性がある。しかし、CP児での歩行停止動作が健常者のそれとどのように異なるかは知られていない。本研究の目的は、CP児での非計画的な歩行停止動作を3次元動作解析装置を用いて解析し、健常青年との違いを明らかにすることとした。</p><p>【方法】対象は痙性両麻痺型CP児10名(年齢 11.3±2.91歳;性別 男7名、女3名; GMFCS レベルⅠ 7名、レベルⅡ 3名)と、健常青年男性6名(年齢 19.7±0.41歳)である。</p><p>歩行路は7.5 mとし、床反力計5台、赤外線カメラ8台、プロジェクター、スクリーンを設置した。WorldViz社製Vizardを用いて、被験者が床反力計を踏んだら、スクリーンへの投影画像が緑色から赤色へ直ちに変化する課題提示システムを構築した。</p><p>実施課題は、①スクリーンの色が緑色のままであれば自己選択速度での歩行を継続、②赤色に変わった場合は可能な限り早く止まる、とし被験者には課題の提示順序を盲検化した。身体重心移動の速度が1.0 m/s以下となった時点を歩行停止と定義し、得られた指標をCP児と健常青年間で比較した。</p><p>【結果】CP児は健常青年よりも歩行停止の指示提示時における歩行速度が遅いにもかかわらず(1.20±0.16 vs 1.45±0.14 m/s; p=0.009)、歩行停止までに有意に長い時間を要し(1.25±0.19 vs 0.94±0.03 s; p=0.001)、距離に差はないものの歩数が多かった(2.5±0.6 vs 1.0±0歩; p<0.0001)。関節の最大角度は、CP児において膝関節屈曲が大きかったが(49.3±14.2 vs 34.3±8.1 deg ; p=0.034)、足関節底屈は小さかった(3.3±14.6 vs 15.4±4.9 deg; p=0.032)。関節モーメントの最大値は股関節伸展(0.65±0.46 vs 0.31±0.06 Nm/kg*m; p=0.028)、外転(0.96±0.41 vs 0.58±0.11 Nm/kg*m; p=0.019)、足関節底屈モーメント(0.76±0.23 vs 0.50±0.06 Nm/kg*m; p=0.021)がCP児で有意に大きかった。床反力ベクトル角度の最大値は、CP児で有意に小さかった(18.8±4.3 vs 26.5±2.3 deg; p=0.002)。</p><p>【考察】歩行停止では、停止に要する力を適切な方向に発揮することが求められる。CP児では歩行停止時に関節モーメントが大きいものの、足関節底屈角度が小さいまま、膝関節を大きく屈曲していた。また、垂直軸から後方への床反力ベクトル角度は、健常青年では平均26.5度、CP児では平均18.8度であり、CP児ではより垂直方向に力を発揮していた。つまり、CP児では、歩行停止時に後方へ力を発揮することが難しいため、停止までの時間を要すると考えられる。</p><p>【結論】CP児では、歩行停止時に進行方向とは逆方向への力の発揮が難しく、歩行停止が困難であると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,被験者と保護者に文書を用いて口頭で説明を行い,同意が得られた方のみを対象とした。</p>
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腹部大動脈瘤患者の術前うつと歩行能力
越後谷 和貴, 加賀屋 勇気, 阿部 芳久, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 46S1 ( 0 ) A-95_1 - A-95_1 2019年
<p>【背景および目的】腹部大動脈瘤患者においては、瘤破裂に対する恐怖感から必要以上に日常生活活動に制限をかける者もいる。抑うつは身体活動のみならず歩行能力にも影響を及ぼす可能性があるため、腹部大動脈瘤患者の術前うつを評価し、手術前後の歩行能力を地域在住高齢者と比較することを目的とした。</p><p> </p><p>【方法(または症例)】対象は待機的手術が行われた患者2名(症例A:64歳、男性、人工血管置換術施行、症例B:74歳、男性、ステントグラフト内挿術施行)および地域在住高齢者10名(70歳、BMI25.2、女10名)とした。術前うつは老年期うつ病評価尺度(GDS)で評価した。歩行能力は10m快適歩行速度、10m快適歩行における足圧分布で評価し、術前・術後にそれぞれ3回測定した。なお、足圧分布は足長に対する足圧中心軌跡の移動距離比である%Longを算出し、比較に用いた。対象者はいずれも下肢に整形疾患や中枢疾患のない者を選択した。</p><p> </p><p>【結果】GDSは症例Aで7点、症例Bで0点、高齢者で2点であった。10m快適歩行速度は症例Aで術前0.7m/sec、術後1.0m/sec、症例Bで1.2m/sec、1.3m/sec、高齢者で1.3m/secであった。また%Longは症例Aで術前70.8%、術後74.9%、症例Bで術前72.4%、術後71.9%、高齢者79.0%であった。</p><p> </p><p>【考察および結論】術前にうつ傾向を示した症例Aでは、うつ傾向を示さなかった症例Bおよび高齢者に比べ、術前後の10m快適歩行速度が低値を示す傾向にあった。また術前の足圧中心軌跡の移動距離比はうつ傾向を示した症例Aで低値を示す傾向にあった。うつ傾向の患者では術前の歩行能力が低下している可能性があるため、今後は症例数を増やし検証する必要がある。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】書面で説明を行い、同意書を得た上で開始した。測定中は理学療法士が傍に着き、事故のないように配慮した。</p>
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Ultrasonographic morphological changes in the prefemoral fat pad associated with knee osteoarthritis
Kazuyuki Shibata, Kyoji Okada, Masahiko Wakasa, Isao Saito, Akira Saito, Yusuke Takahashi, Hiromichi Sato, Hitomi Takahashi, Takeshi Kashiwagura, Yoshiaki Kimura
Journal of Medical Ultrasound ( Journal of Medical Ultrasound ) 26 ( 2 ) 94 - 99 2018年04月
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Isao Saito, Kyoji Okada, Masahiko Wakasa, Hidekazu Abe, Akira Saito
Gait and Posture ( Gait and Posture ) 59 83 - 88 2018年01月
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ABE Ryusei, KIMOTO Minoru, WAKASA Masahiko, SAITO Akira, NAMBA Akira, OKADA Kyoji
Rigakuryoho Kagaku ( Rigakuryoho Kagaku ) 33 ( 1 ) 59 - 64 2018年
〔目的〕側方への片脚着地時の足関節と後足部角度および下腿の筋活動を捻挫既往肢と健常肢で比較分析すること.〔対象と方法〕足関節捻挫の既往のある20肢(捻挫既往群,男性11肢,女性9肢,平均年齢21.2歳)と捻挫の既往のない20肢(既往なし群,男性12肢,女性8肢,平均年齢21.2歳)の40肢を対象とした.高さ30 cm台から30 cm側方への片脚着地動作を行わせ,その際の足関節底背屈と後足部回内外角度,また下腿筋の筋電図を計測した.〔結果〕既往なし群に比べ捻挫既往群では,着地前の底屈角度と着地後の回外角度および前脛骨筋の筋活動の値が有意に高値であった.〔結語〕前脛骨筋の過剰な活動により,足関節捻挫既往肢での着地後の後足部回外は過大となっており,足関節の再捻挫を引き起こす可能性が高いと考えられる.
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Wakako ITO, Takashi KANBAYASHI, Kazumi SHIMIZU, Sachiko U. ITO, Masahiko WAKASA, Yuichi INOUE, Tetsuo SHIMIZU, Seiji NISHINO
Gazzetta Medica Italiana Archivio per le Scienze Mediche ( Gazzetta Medica Italiana Archivio per le Scienze Mediche ) 176 ( 5 ) 257 - 264 2017年05月
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Influence of head and neck extension on single-leg landing
TAKUWA Ryosuke, OKADA Kyoji, WAKASA Masahiko, SAITO Akira, KIMOTO Minoru, KAMADA Tetsuaki
Rigakuryoho Kagaku ( Rigakuryoho Kagaku ) 32 ( 1 ) 93 - 96 2017年
〔目的〕頭頸部伸展位が片脚着地動作に及ぼす影響を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は,健常成人女性31名(平均20.1歳)とした.高さ30 cm台からの片脚着地動作を,頭頸部屈曲伸展中間位と,頭頸部伸展位の2条件で行った.片脚着地時の最大の膝関節屈曲と外反角度,体幹前後屈,側屈角度,および着地位置を測定し,条件間で比較した.〔結果〕頭頸部伸展位での着地では頭頸部屈曲伸展中間位の着地に比べて最大膝関節外反角度が有意に大きかった.最大膝屈曲角度と体幹前後屈,側屈角度,着地位置には有意差はみられなかった.〔結語〕頭頸部伸展位での片脚着地動作は膝関節外反角度を増大させ,非接触型前十字靭帯損傷の一要因となると推察された.
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変形性膝関節症における膝伸展筋力の増加と筋内健アーチ率の減少について
高橋 裕介, 大沢 真志郎, 新出 卓斗, 鎌田 哲晃, 齊藤 公男, 松永 俊樹, 島田 洋一, 岡田 恭司, 齋藤 明, 木下 和勇, 瀬戸 新, 若狭 正彦, 木元 稔, 佐藤 大道, 柴田 和幸
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>大腿直筋の筋内腱は超音波短軸像上でcomma shaped hyperechoic bandと呼ばれる弧形(アーチ)として描出できる。我々はこれまでに横断的な調査で,健常成人では筋収縮で筋内腱のアーチが直線に変化し,収縮時のアーチが少ないほど筋力が高いことを報告した。しかし,筋内腱の形態変化が筋力の変化に対応するかは明らかになっていない。そこで,本研究は変形性膝関節症患者を対象に筋力トレーニングで筋内腱の形態が変化するかを検証した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はKellgren-Lawrence分類IIの変形性膝関節症患者12名16肢(Mean±SD;72±13歳,156.3±10.9cm,65.0±11.7kg,以下OA肢)であった。対象者は筋力トレーニングとしてstraight leg raising運動(以下,SLR)を1日5秒×20回,1ヵ月間実施した。SLR前後で超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS)を用いた大腿直筋の撮像をした。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を3回ずつ記録した。得られた超音波画像から筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)および筋厚を測定した。統計学的検討では3回測定の平均値を用いた。介入前後の膝伸展筋力,安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚を比較するために対応のあるt検定,収縮時アーチ率を比較するためにWilcoxonの符号付き順位検定を行った。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>OA肢では,膝伸展筋力はSLR前19.7±7.5kgとSLR後22.5±10.2kg,収縮時アーチ率はSLR前7.6±6.0%とSLR後3.5±5.1%であり,いずれも有意差を認めた(p<0.05)。安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚はSLR前後で有意差を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>SLRにより膝伸展筋力の増加と収縮時アーチ率の減少を認め,筋力トレーニングによる筋内腱の形態変化を明らかにした。本研究では有意な筋厚の増大は認められず,介入期間が1ヵ月であったことから筋肥大は生じていないと考えた。したがって筋内腱の観察は筋肥大とは異なる筋力増強メカニズムを反映する可能性があり,新しい筋機能評価の一助となると考える。</p>
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急性期脳血管疾患患者におけるBerg Balance ScaleおよびMini-Balance Evaluation Systems Testについて
菊谷 文子, 伊東 一章, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに】</p><p></p><p>急性期病院において早期に病棟ADLを獲得することは廃用症候群の予防,今後の転帰先を考慮する上でも重要である。病棟内ADLの自立判定基準としてバランス能力の評価であるBerg Balance Scale(以下BBS)がよく用いられている。BBSには天井効果があり,また静的なバランス能力しか評価できないためADLにつながるような包括的なバランス能力を評価する指標としては不十分である。日本語版Mini-Balance Evaluation Systems Test(以下Mini-BESTest)は,予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,動的歩行の4つのセクションから構成されており,高い信頼性,妥当性,治療反応性が報告されている。さらには天井効果がなく,歩行完全自立か否かの判別能に関してもMini-BESTestのほうが優れている傾向を示している。BBSとMini-BESTestには高い相関があると言われているが,急性期脳血管疾患において報告は少ない。今回BBSとMini-BESTestを比較したので以下に報告する。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は2016年6月1日から同年9月まで当院に脳血管疾患で入院した患者17名(男性10名,女性7名)。脳血管疾患の既往がある者,整形疾患を有する者,検査内容が理解できない者を除外した。平均年齢は68±15歳,対象者の内訳は脳梗塞7名,脳出血5名,その他(くも膜下出血,慢性硬膜下血腫など)5名で,身体的特徴はNational Institute of Health Stroke Scale 0~6点が12名,7~14点が4名,15点以上が1名で測定日は平均11±6日だった。評価尺度はBBSおよびMini-BESTestを採用した。BBS,Mini-BESTestともに平均値,項目ごとの難易度(減点のある対象者の割合)を求め,さらにMini-BESTestは各セクションの得点率を求めた。BBSとMini-BESTestの合計点からPearsonの積率相関係数を求めた。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>BBSの平均値は32.5±19.8点(1~50点),難易度60%以上は両手前方,80%以上は360°方向転換,踏み台昇降,片脚立ち,タンデム立位。Mini-BESTestの平均値は10.8±8.4点(0~22点),難易度50%未満が静止立位(開眼,固い地面),座位から立位,斜面台,各セクションの得点率は,予測的姿勢制御48.0±35.8%,反応的姿勢制御22.5±27.0%,感覚機能54.9±39.4%,動的歩行31.8±28.3%,Mini-BESTestはBBS(r=0.91)と強い相関を認めた。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>急性期脳血管疾患患者においてBBSとMini-BESTestは慢性期脳卒中患者と同様に高い相関関係を示した。またBBSでは満点者はなく,Mini-BESTestでは無得点者がいたことやBBSにはない要素である反応的姿勢制御と動的歩行の得点率が低い傾向を示した。したがって,急性期においてBBSとMini-BESTest両者を計測することは有用であると思われるが,測定時期を考慮することや症例数を増やし運動機能別比較や疾患別の特徴をみる必要もあると考えられた。</p>
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統合失調症患者におけるADL評価:FIMとRehabの関連と影響因子について
一関 優, 畠山 和利, 渡邉 基起, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
研究論文(その他学術会議資料等)
<p>【はじめに,目的】慢性期の統合失調症(Schizophrenia;以下Sz)は,日常生活・対人関係・問題解決の能力低下が起こるとされている。Szの評価の中でも精神科リハビリテーション行動尺度(Rehabilitation Evaluation of Hall and Baker;以下Rehab)は汎用性や信頼性,妥当性が高い。しかし,Rehabは理学療法領域で十分認識されておらず,FIMとの関連性について述べた報告は渉猟しうる限りない。本研究の目的は,慢性期SzのFIMとRehabの関連性を明らかにすることである。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】対象は慢性期Sz 31例(男性18例,女性13例,平均年齢49.0±12.0歳)である。評価はFIMおよびRehabを用いた。Rehabは,日常生活動作や社会的活動性などの項目で構成される。1週間以上患者を観察し,合計点が0-40点「社会生活が可能」,41-64点「中等度困難」,65-144点「社会生活が困難」と分類される。比較的評価項目が少なく(23項目),評定基準が示されている。統計はSPSSver20を用い,FIMとRehab各項目の関連性をSpearmanの相関係数を用いて検定した。その後,Rehab合計点が65点以上の患者に対し,重回帰分析を行った。有意水準はp<0.05とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】FIM大項目での関連は,FIMセルフケア・Rehabセルフケア(r=-0.65),FIMコミュニケーション・Rehab言葉の分かりやすさ(r=-0.592),FIM合計・Rehab合計(r=-0.528)で有意に負の相関がみられた。Rehab合計点が65点以上であった患者は,31例中18例だった。重回帰分析の結果,Rehab合計点・FIMセルフケア合計点(β:-0.723,p=-0.02),Rehab合計点・FIM小項目間では整容(β:-0.684,p=0.009)とトイレ動作(β:-051,p=0.027)が抽出された。</p><p></p><p></p><p></p><p>【考察】FIMとRehabのセルフケアやコミュニケーション,合計点に負の相関がみられた。慢性期Szは,身辺整理や周囲に対する関心が欠如するとされている。本研究はこれを支持する結果だった。重回帰分析から,Rehab合計点はFIMセルフケア合計点が,FIM小項目では整容とトイレ動作が抽出された。これは活動性や問題解決能力の低下など,複数要因からセルフケアに助言・援助が必要であるためと考える。Rehabは,評価期間と項目内容からSzを詳細に評価が出来る。しかし,FIMのトイレ動作と整容の2点に着目すると,短時間で容易にRehab全体の点数が把握できる可能性がある。</p><p></p><p>【結語】慢性期SzのFIMとRehabの合計点は関連していた。他の要因など検討の余地はあるが,互換性が期待できる。さらに,Szはトイレ動作と整容の2点に着目すると全体の点数が推測出来る可能性がある。</p>
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齊藤 明, 岡田 恭司, 髙橋 裕介, 柴田 和幸, 大沢 真志郎, 佐藤 大道, 木元 稔, 若狭 正彦
理学療法学Supplement ( 公益社団法人 日本理学療法士協会 ) 2016 ( 0 ) 2017年
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>成長期野球肘の発症には投球時の肘関節外反が関与し,その制動には前腕回内・屈筋群が作用することが知られている。成長期野球肘おいては投球側の円回内筋が硬くなることが報告されており,特に野球肘の内側障害ではこれらの硬い筋による牽引ストレスもその発症に関連すると考えられている。しかしこれらの筋が硬くなる要因は明らかにされていない。そこで本研究の目的は,成長期の野球選手における前腕屈筋群の硬さと肘関節可動域や下肢の柔軟性などの身体機能および練習時間との関係を明らかにすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>A県野球少年団に所属し,メディカルチェックに参加した小学生25名(平均年齢10.7±0.7歳)を対象に,超音波エラストグラフィ(日立アロカメディカル社製)を用いて投球側の浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さを測定した。測定肢位は椅子座位で肘関節屈曲30度位,前腕回外位とし,硬さの解析には各筋のひずみ量に対する音響カプラーのひずみ量の比であるStrain Ratio(SR)を用いた。SRは値が大きいほど筋が硬いことを意味する。身体機能は投球側の肘関節屈曲・伸展可動域,前腕回内・回外可動域,両側のSLR角度,股関節内旋可動域,踵殿距離を計測し,事前に野球歴と1週間の練習時間を質問紙にて聴取した。また整形外科医が超音波診断装置を用いて肘関節内外側の骨不整像をチェックした。統計学的解析にはSPSS22.0を使用し,骨不整像の有無による各筋のSRの差異を比較するため対応のないt検定を用いた。次いで各筋のSRと各身体機能,野球歴や練習時間との関係をPearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を求めて検討した。有意水準はいずれも5%とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>参加者のうち肘関節内側に骨不整像を認めた者は4名(野球肘群),認められなかった者は21名(対照群)であった。浅指屈筋のSRは2群間で有意差を認めなかった(1.01±0.29 vs. 0.93±0.23;p=0.378)が,尺側手根屈筋のSRでは野球肘群が対照群に比べ有意に高値を示した(1.58±0.43 vs. 0.90±0.28;p<0.001)。浅指屈筋のSRと各測定値との相関では,各身体機能や野球歴,練習時間のいずれも有意な相関関係は認められなかった。尺側手根屈筋のSRも同様に各身体機能や野球歴との間には有意な相関関係を認めなかったが,1週間の練習時間との間にのみ有意な正の相関を認めた(r=0.555,p<0.01)。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>成長期の野球選手において浅指屈筋,尺側手根屈筋の硬さは,肘・股関節可動域や野球歴とは関連がないことが明らかとなった。一方,1週間の練習時間の増大は尺側手根屈筋を硬くし,このことが成長期野球肘の発症へとつながる可能性が示唆された。</p>