学会等発表 - 池本 敦
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アケビに含有される機能性成分と種子油の健康油としての可能性
池本 敦 [招待有り]
日本脂質栄養学会 オンライン講演会(シンポジウム) (オンライン) 2025年01月 - 2025年01月 日本脂質栄養学会
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アケビ及びその種子油に含有される機能性成分
池本 敦 [招待有り]
日本脂質栄養学会 第33回大会 (じゅうろくプラザ(岐阜県岐阜市)) 2024年08月 - 2024年08月 日本脂質栄養学会
一般的な食用油脂の主成分はトリアシルグリセロール(TG)であり、90%以上の含量である。他にTG以外の脂肪酸・アシルグリセロール誘導体やステロール類が数%含まれるが、その他に原材料由来の成分や製造工程で産生される物質などが微量に含まれている。本演題では、我々が開発に取り組んだアケビ種子油(アケビ油)を例に、油脂中に含有される機能性成分を紹介する。
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短期熟成法によるしょっつるの製造と脂肪酸組成の変化
鈴木悠生、池本 敦
日本脂質栄養学会 第33回大会 (じゅうろくプラザ(岐阜県岐阜市)) 2024年08月 - 2024年08月 日本脂質栄養学会
しょっつる(塩魚汁)は、秋田県で製造されるハタハタ(鰰)を使った伝統的な魚醤である。伝統的な製造法はシンプルであり、魚に塩を添加して樽に漬け込み、時々撹拌しながら1~4年の長時間熟成させる。そのため、熟成中にドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸が酸化分解され、原材料の魚と比較してしょっつるのオメガ3系脂肪酸の組成は低下している。本研究ではこうした酸化分解を防ぐことを目的に、短期熟成法によりしょっつるや他の魚を原料とした魚醤を製造し、多価不飽和脂肪酸の組成を分析したので報告する。
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オメガ3系脂肪酸供給食肉としてのウサギ肉の可能性
池本 敦 [招待有り]
日本脂質栄養学会 食用油脂安全性委員会 第3回ミニシンポジウム (岐阜薬科大学(岐阜市、オンライン)) 2024年01月 - 2024年01月 日本脂質栄養学会 食用油脂安全性委員会
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アセチル基含有油脂であるアケビ種子油のインクレチン分泌に及ぼす影響
池本 敦
日本脂質栄養学会 第32回大会 (川越プリンスホテル(埼玉県川越市)) 2023年09月 - 2023年09月 日本脂質栄養学会
【目的】秋田の伝統油であるアケビ種子油(AKB)は主成分が1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)がであり、リパーゼで分解されにくいために消化吸収率が低く肥満予防に有効である。脂質等の栄養素に応答し消化管から分泌されたインクレチン(GIPやGLP-1)は、インスリン分泌を促進しエネルギー代謝を調節する。本研究では、AKBがインクレチン分泌に及ぼす影響を解析した。
【方法】培養細胞系ではマウス小腸上皮由来のSTC-1細胞、マウスによる解析では10週齢の雄性C57BL/6Jを使用た。単回経口投与の場合、2mg/gグルコース(Glu)を経口投与し、トリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、AKBを2mg/gそれぞれ同時に投与した。長期摂食試験では、重量比30%の牛脂を添加した高脂肪食を対照群(HF)とし、その10~20%をDAGまたはAKBで置換して8週間給餌した。採血後に調製した血漿を用いて、GIP及びGLP-1をELISA法により測定した。
【結果】STC-1細胞のGlu刺激によるGLP-1分泌は油脂の添加で促進されたが、TAGやDAGと比較してAKBの促進効果が最も高かった。マウスへの単回経口投与では、血糖値上昇抑制及びインスリン分泌促進作用が各種油脂にあったが、いずれもAKBが最も高い効果を示した。一方、GIP分泌はTAGにより促進すされたが、DAGやAKBは促進しなかった。長期摂食試験では、飼料TAGの10%~20%をAKBに置換すれば、体重増加や内臓脂肪蓄積を抑制する効果が得られた。
【考察・結論】AKBはGLP-1分泌は促進するがGIP分泌は促進しなかった。GIPは上部小腸のK細胞から、GLP-1は下部小腸と大腸に存在するL細胞から分泌される。TAGを摂取すると、両者の分泌が促進されることが報告され、リパーゼによる分解で生じた遊離脂肪酸が分泌を促進すると考えられている。一方、加水分解効率の低いAKBは吸収されないまま下部小腸に移行しやすく、GLP-1分泌促進効果が高くなると考えられる。この性質を利用すれば、通常の食用油脂の10~20%をAKBに置換することで肥満抑制効果が得られると考えられる。 -
エゴマ搾油残渣の給餌によるウサギ肉のオメガ3系脂肪酸の強化
熊谷 美玖、菅原 伶那、千葉 哲也、池本 敦
日本脂質栄養学会 第32回大会 (川越プリンスホテル(埼玉県川越市)) 2023年09月 - 2023年09月 日本脂質栄養学会
【目的】秋田県大仙市中仙地区では、中仙ジャンボうさぎ(日本白色種秋田改良種)が食肉として利用されているが、近年飼育数が急激に減少し、他の食肉と比較してた優位性を確立することが課題となっている。うさぎの飼育に際しては、コーンや大豆などのオメガ6系のリノール酸が多い素材を原材料とした子牛用の市販濃厚飼料(スターターモーレット)が使用されている。本研究では、うさぎ肉の健康機能を高めるためにオメガ3系脂肪酸を強化することを目的とし、エゴマ搾油残渣を混合した飼料を使用し、給餌期間による効果を比較したので報告する。
【方法】ウサギを通常飼料として子牛用の市販濃厚飼料(スターターモーレット)を使用して飼育した。8ヵ月齢から重量比30%のエゴマ搾油残渣を混合し、0.5、1、2、3ヵ月飼育した。屠畜・精肉した後、食用肉として用いる背(ロース)の部分の筋肉と肝臓を採取し、クロロホルム-メタノールで脂質成分を抽出した。脂肪酸をメチルエステル誘導体に変換し、ガスクロマトグラフィーで脂肪酸添組成を分析した。
【結果】通常飼料で飼育されたウサギ肉の脂肪酸組成は、α-リノレン酸が2.88%であった。エゴマ搾油残渣を30%混合した飼料を給餌することで、α-リノレン酸は2ヶ月までの期間で2倍以上に大きく増加し、3ヵ月ではそれ以上の顕著な増加は見られなかった。EPAは1ヶ月単位で増加量がほとんど同じであり、DHAは1ヶ月までの期間で大きく増加し、その後一定の値となった。オメガ3系脂肪酸の総計は、2ヶ月までの期間で大きく増加して2倍以上になり、その後はあまり増加しなかった。ウサギ肝臓においても同様の変化が観察された。
【考察・結論】ウサギの通常飼料にエゴマ搾油残渣を30%添加した飼料を使用した場合、食肉中のオメガ3系脂肪酸組成の増加は0.5~1ヵ月の給餌では不十分であり、2ヵ月の期間が必要であることが分かった。ウサギ肉の主要なオメガ3系脂肪酸はα-リノレン酸であり、EPA及びDHAはそれぞれα-リノレン酸の7~10%、15~30%程度であった。各オメガ3系脂肪酸で増加パターンに相違があり、それらの詳細な解析が今後の検討課題である。 -
秋田の伝統食であるアケビ種子油の健康機能性
池本 敦
日本家政学会東北・北海道支部 第66回研究発表会 (秋田大学(秋田市、オンライン)) 2023年09月 - 2023年09月 日本家政学会東北・北海道支部
秋田の伝統的食用油として利用されていた歴史のあるアケビ種子油は、主成分が1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)であり、天然では稀なアセチル基含有油脂であることを見出した。これまでの研究で、1,2-DAGAはリパーゼで分解されにくいために消化吸収率が低く、体脂肪が付きにくく太りにくい特性を有していることが明らかになった。同様の性質を人工合成した1,3-ジアシルグリセロ-2-アセテート(1,3-DAGA)が有することも分かり、アセチル基含有油脂は肥満予防に有用であることが分かった。しかし、小腸における消化・吸収や代謝特性は不明である。
アケビ種子油の主成分であるDAGAはリパーゼで加水分解される速度がトリアシルグリセロール(TG)の約半分であり、消化分解されにくいために小腸における吸収効率が低いことが想定されている。そこで本研究では、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞株を用いて、腸管腔側と基底膜側を区別できるカップ式インサートを使用した培養器具を使用し、脂質の消化・吸収過程を測定する実験系を検討した。
培地にトリアシルグリセロール(TG)を添加した場合と比較して、DAGAを添加した場合は、リパーゼにより生成する遊離脂肪酸(FFA)の量が顕著に低かった。生成したFFAは細胞に取り込まれ、細胞内でTGに再合成された後、リポタンパク質に組み込まれて基底膜側に分泌される。この分泌されるTG量は、腸管腔側にTGを添加した場合と比較して、DAGAを添加した場合では顕著に低い値を示した。
以上のように、DAGAはリパーゼにより消化されにくく、吸収後に小腸上皮細胞から分泌されるTG量も低くなることが培養細胞系で示された。今後、秋田の伝統食であるアケビ種子油を肥満予防効果を有する健康志向型食用油脂として展開していくことを目指す。 -
エゴマ搾油残渣添加飼料で育成した中仙ジャンボうさぎの脂肪酸組成と食肉としての活用
池本 敦 [招待有り]
全国うさぎネットワーク総会 (大仙市役所中仙支所(秋田県大仙市)) 2022年10月 - 2022年10月 全国うさぎネットワーク
大仙市中仙地区で使用されているウサギ飼料の分析から、必須脂肪酸バランスに課題があることを見出し、その改善に着手した。これまで使用されてきた飼料は子ウシ用濃厚飼料であり、ベースにトウモロコシや大豆油かすを使用してるため、n-6系脂肪酸のリノール酸が過剰であり、n-3系脂肪酸のα-リノレン酸含量が少ないのが課題であった。
そこで大仙市協和町でエゴマ油が製造されていることに着目した。エゴマ油はα-リノレン酸含量が高く、必須脂肪酸バランスの改善に有用な食用油である。令和3年度の研究では廃棄される搾りかすに着目し、これをウサギ飼料に混合することで、ウサギ肉のα-リノレン酸やEPA・DHAなどのn-3系脂肪酸の含量を高めることができ、食肉としての栄養価を向上させることが可能なことを証明できた。同時に、大仙市内で栽培されている杜仲の葉をウサギ飼料に混合する実験も行い、肉質改善に良好な結果を得た。これらのウサギ肉の官能評価を行い、食肉としての特性も調べた。また、うさぎ肉を活用した新メニューを開発し、中仙料飲店組合と協働で試作会を行った。 -
エゴマ搾油残渣を飼料としたウサギ肉の脂肪酸組成と食用肉としての活用
池本 敦、千葉哲也、菅原伶那
日本脂質栄養学会 第31回大会 (アートホテル弘前シティ(青森県弘前市)) 2022年09月 - 2022年09月 日本脂質栄養学会
【目的】日本の食用肉は牛・豚・鶏などが主流であるが、ウサギは伝統的に食用肉として利用されてきた歴史がある。現在でも秋田県大仙市中仙地区では日本白色種秋田改良種(中仙ジャンボうさぎ)が貴重な地域食資源として特産品となっている。食用肉の栄養成分は主にタンパク質と脂質であるが、タンパク質やそのアミノ酸には種間で大きな差はない。一方で、脂質を構成する脂肪酸の組成は、飼料などで大きく異なることが報告されている。本研究では、ウサギの飼料を分析し、n-3系脂肪酸を強化するためにエゴマ搾油残渣を飼料に混合した際の効果について調べたので報告する。
【方法】ウサギを通常飼料として子牛用の市販濃厚飼料(スターターモーレット)を使用して飼育した。8ヵ月齢から2ヵ月間通常飼料に重量比30%のエゴマ搾油残渣を混合して飼育し、10ヵ月齢で屠畜・精肉した。食用肉として用いる背(ロース)の部分の筋肉と肝臓を採取し、脂肪酸添組成を分析した。食肉としての利用性は、7段階尺度のSD法による官能評価を行い、比較対象としてトリ肉(むね)を用いた。
【結果】ウサギの通常飼料の脂質含量は3.3%、脂肪酸組成はn-6系のリノール酸が51.1%であり、n-3系のα-リノレン酸が4.7%であった。エゴマ搾油残渣の脂質含量は7.2%であり、脂肪酸組成はリノール酸が18.9%、α-リノレン酸が57.8%であった。ウサギ肉の脂肪酸組成は、エゴマ搾油残渣を混合することで通常飼料と比較してα-リノレン酸の組成を2倍以上に増やし、n-6/n-3比を顕著に低下させることができた。官能評価では、ウサギ肉の飼料群間では有意な差はなかったが、トリ肉との比較では味覚や総合評価はウサギ肉の方が低かった。
【考察・結論】通常飼料の原材料はトウモロコシや大豆油かすであるため、これらを反映してリノール酸含量が高かった。エゴマ種子の脂質含量は通常30~40%であるが、本研究で使用した搾油残渣は約7%の脂質含量であり、ウサギ飼料として十分な脂質含量であった。このため重量比30%の混合で食肉中のα-リノレン酸含量上昇に非常に有効であったと考えられる。ウサギ肉の食用肉としての特性は、トリ肉と比較して脂っぽくなく、硬くて歯ごたえがあった。このことから鍋物や串焼きに合うのではないかと考えられた。 -
日本白色種秋田改良種(中仙ジャンボうさぎ)の食用肉としての特性調査
池本 敦、千葉哲也
地域連携懇談会フォーラム (オンライン) 2022年03月 - 2022年03月 秋田大学教育文化学部
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地域食資源としてのアケビの有効活用
斉藤礼知、池本 敦
日本栄養・食糧学会 東北支部 第54回支部大会 (秋田県立大学(オンライン)) 2020年10月 - 2020年10月 日本栄養・食糧学会 東北支部
現在の食用油はキャノーラ種の菜種油や大豆油などが主流であり、輸入原料から搾油工場で大量製造され、安価に提供されている。一方、歴史的には食用油は高価で貴重なものであり、秋田の郷土誌によると、戦前までは各家庭・農家で様々な天然植物から食用油が搾られていたことが記録されている。
その中の1つがアケビ油であり、通常廃棄されるアケビの種子から搾油してきた記録が歴史書に残されている。江戸時代には、秋田・角館の油問屋がアケビ油を買い集め、特産品として江戸の料亭に売っていたこが記録に残っている。「最高級の食用油」、「食用油の王様」と呼ばれ、大変美味しく、当時主流のゴマ油の5倍の値段で取り引きされていた。
我々はアケビ油の主成分が通常の植物油のトリアシルグリセロール(TG)とは異なった1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)であることを見出した。DAGAはTGと比較して、消化・吸収されにくく、体脂肪蓄積性が低い性質を有し、アケビ種子油は現代社会でも付加価値が高い健康油であることを明らかにした。
アケビ油を実用化して普及させるためには、原材料の種子を大量に確保し、製造コストを下げることが課題である。そのためには、種子以外の果肉や果皮などを加工食品として利用するなど、アケビを丸ごと地域食資源として有効活用することが必要である。アケビは白くて甘い果肉が全国的には食用とされている。種子と果肉を効率よく分離し、果肉の部分はジャムや甘味料としての活用を検討している。
一方で、紫色の部分のアケビ果皮は全国的には廃棄されているが、山形と秋田では食用として活用する食文化が保存されている。特徴的な苦味を有し、茄子のような繊維質のやわらかい食感である。地域食資源の有効活用の観点から、果皮の利用を拡大するために機能性を探索した結果、強いリパーゼ阻害作用を示し、食事脂質の吸収を抑制することが示された。これらの結果を活用して、アケビ果皮を抗肥満作用を有する健康食品素材としての活用することを目指している。
また、天然産の野生アケビのみでは収穫量が限られることから、秋田県内でアケビを栽培化する取り組みを進めている。本発表では、これらの最近の取り組みについての現状について紹介し、地域食資源としてのアケビの有効活用法について考察する。 -
秋田の伝統的食用油であるアケビ種子油の消化・吸収特性の解析
池本 敦、木村裕美子、鈴木 景子
日本脂質栄養学会 第29回大会 (東北大学青葉山コモンズ(オンライン)) 2020年09月 - 2020年09月 日本脂質栄養学会
【目的】 アケビ種子油は秋田の伝統的に搾油された食用油脂であるが、主成分がアセチル基含有脂質である1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(1,2-DAGA)であり、一般のトリアシルグリセロール(TG)を主成分とする植物油と異なる栄養学的特性を有している。本研究では、アケビ油やジアシルグリセロール油の消化・吸収特性を解析したので報告する。
【方法】 アケビ油(Akb)はアケビ種子より搾油し、脱ガム処理したものを用いた。ジアシルグリセロールは、1,3-DG:1,2-DG=7:3のものを使用した。合成アセチル化油脂(S.DAGA)は、、をピリジン触媒で無水酢酸によりアセチル化することで合成した。リパーゼによる加水分解特性は、豚膵リパーゼを使用し、遊離脂肪酸を測定した。培養細胞レベルでの消化・吸収特性の解析には、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞株を用いた。単回投与実験では雄性Wistar系ラット、長期投与実験ではを雄性ICR系マウスを使用した。
【結果】 アセチル基含有脂質であるAkb及びS.DAGAは、TGと比較して、リパーゼにより加水分解されにくい性質を有し、ラットへの単回投与で他の食用油脂と比較して血中中性脂肪が上昇しにくかった。また、各種油脂を重量比10%添加した飼料をウスに4週齢から8週間与えたところ、アセチル基含有脂質であるAkb及びS.DAGAを与えた群では、他の食用油脂を与えた群と比較して、有意に体脂肪蓄積性が低く、体重の増加率が低かった。Caco-2細胞株を用いて解析したところ、アセチル基含有脂質は、TGと比較して消化・吸収効率が低く、中性脂肪に再合成されにくいことが分かった。
【考察・結論】 天然の1,2-DAGA及び合成アセチル化油脂のいずれも、通常のTGを主成分とする油脂よりも消化・吸収されにくく、異なった消化・吸収特性を示した。これらの油脂は肥満予防に有効であり、新しいタイプのの機能性食用油脂とし、健康志向の利用が期待される。 -
秋田の伝統的食用油であるアケビ油の栄養学的特性の解析
池本 敦、木村裕美子、鈴木 景子
第74回 日本栄養・食糧学会 大会 (仙台国際センター、東北大学川内北キャンパス(オンライン)) 2020年05月 - 2020年05月 日本栄養・食糧学会
【目的】 秋田の伝統的食用油であるアケビ油は、主成分がアセチル基含有脂質である1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(1,2-DAGA)であり、一般のトリアシルグリセロール(TG)を主成分とする植物油と異なる栄養学的特性を有している。本研究では、アケビ油及び化学合成したアセチル化油脂の消化・吸収特性を解析したので報告する。
【方法】 アケビ油(Akb)はアケビ種子より搾油し、脱ガム処理したものを用いた。合成アセチル化油脂(S.DAGA)は、ジアシルグリセロール(1,3-DG:1,2-DG=7:3)をピリジン触媒で無水酢酸によりアセチル化することで合成した。リパーゼによる加水分解特性は、豚膵リパーゼを使用し、遊離脂肪酸を測定した。培養細胞レベルでの消化・吸収特性の解析には、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞株を用いた。単回投与実験では雄性Wistar系ラット、長期投与実験ではを雄性ICR系マウスを使用した。
【結果】 アセチル基含有脂質であるAkb及びS.DAGAは、TGと比較して、リパーゼにより加水分解されにくい性質を有し、ラットへの単回投与でTGと比較して血中中性脂肪が上昇しにくかった。また、各種油脂を重量比10%添加した飼料をウスに4週齢から8週間与えたところ、TGやDGを与えた群と比較して、アセチル基含有脂質であるAkb及びS.DAGAを与えた群では有意に体脂肪蓄積性が低く、体重の増加率が低かった。Caco-2細胞株を用いて解析したところ、アセチル基含有脂質は、TGと比較して消化・吸収効率が低く、中性脂肪に再合成されにくいことが分かった。
【考察・結論】 天然のアセチル基含有脂質であるアケビ油及び合成油脂のいずれも、通常のTGを主成分とする油脂よりも消化・吸収されにくく、異なった栄養学的特性を示した。これらの油脂は肥満予防に有効であり、東北地方発の健康油としての利用拡大が期待される。 -
日本と中国の若年層の食事摂取状況と必須脂肪酸バランスの比較
池本 敦、黄 鐘倩
日本脂質栄養学会 第28回大会 (学術総合センター 一橋講堂(東京都千代田区)) 2019年09月 - 2019年09月 日本脂質栄養学会
【目的】過去60年間で日本の食生活は欧米化し、脂質栄養の状況は大きく変化した。それに合わせ必須脂肪酸バランスであるn-6/n-3比が上昇し、各種疾患の罹患率増加の一因となっている可能性が指摘されている。本研究では、日本と中国の小学校給食及び若年層の食事調査を行い比較することで、食物摂取状況と脂質栄養の現状を把握することを目的とした。
【方法】小学生の給食の分析については、秋田市立小学校と中国湖南省長沙市小学校を対象とし、それぞれ1か月分の給食献立の提供を受け、食物から各栄養素の摂取状況を分析して相違点を比較した。大学生の食事摂取状況の分析については、日本は秋田大学、中国は湖南省中医薬大学の学生を対象とし、1週間の食事を記録してもらい、各栄養素および必須脂肪酸の摂取量を分析して比較評価を行った。分析には、栄養管理ソフト・栄養マイスターを用いた。
【結果】。小学生の給食では、料理数から内容物、食器まで、日本の方が中国より多様性が見られた。食材別ごと主菜を比較したところでは、日本側は様々な食材を用いたことが分かった。中国側においては、豚肉、魚介類、イモ類の使用頻度が日本より高かった。副菜では、日本側に野菜、イモ、海藻などビタミンやミネラル、食物繊維の給源になるものを中心に使用していた。中国側では、野菜が炒め物として広く使われていた。大学生の1日栄養摂取量を比較したところ、カルシウム以外の栄養素の摂取量はいずれも中国の方が多かった。食品群別摂取量については、穀類および魚介類の摂取は両国で同じレベルであり、日本食の特徴の一つである魚介類はあまり食べられていなかった。また、中国人大学生においては、肉類の摂取が日本人大学生の約2倍、油脂類の摂取が約4倍であり、オメガ6系脂肪酸を多く摂取していた。
【考察・結論】日本食の特徴は、従来、魚介類の豊富な食事によるオメガ3系脂肪酸の高摂取であると考えられていた。しかし、日中の若年者の比較では、その様な特徴はほとんど見られなくなっていることが分かった。一方で、日本の若年者の油脂摂取量は中国人よりも低く、オメガ6系脂肪酸の摂取量もこれに合わせて少ないこと、結果としてn-6/n-3比が低くなっていることが確認された。今後、このような食生活の現状を捉え、具体的な必須脂肪酸バランス改善の方法を検討していく必要がある。 -
地域食資源を活用した健康油や機能性食品素材の開発
池本 敦
日本脂質栄養学会 第27回大会 (サンラポーむらくも(島根県松江市)) 2018年08月 - 2018年09月 日本脂質栄養学会
各地域には特有な食文化が存在し、貴重な食資源を知恵を絞って活用してきた歴史がある。秋田にも、全国的にはあまり知られていない有用な素材が豊富に存在する。我々はこれらに着目し、油脂食品を中心に、健康増進や生活習慣病予防に有用機能性の高い健康食品素材の開発を目指している。
現在利用されている食用油は菜種油と大豆油が主流であり、サラダ油の大半はこれらの混合油である。輸入原料から搾油工場で大規模に製造され、安価に提供されている。しかし、歴史的には食用油は高価で貴重なものであり、秋田の郷土誌によると、戦前までは各家庭・農家で様々な天然植物から食用油が搾られていた。
その中の1つがアケビ油であり、通常廃棄されるアケビの種子から搾油してきた記録が歴史書に残されている。江戸時代には、秋田・角館の油問屋がアケビ油を買い集め、特産品として江戸の料亭に売っていたこが記録に残っている。「最高級の食用油」、「食用油の王様」と呼ばれ、大変美味しく、当時主流のゴマ油の5倍の値段で取り引きされていた。
我々はアケビ油の主成分が通常の植物油のトリアシルグリセロール(TG)とは異なった1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)であることを見出した。DAGAはTGと比較して、体脂肪がつきにくく太りにくい性質を有し、アケビ種子油は現代社会でも付加価値が高い健康油であることを明らかにした。本発表では、これまでの研究過程や地方における産学官連携活動による事業化の取り組みについて紹介する。
また、東北地方に特有な山菜等の天然資源や未利用農作物の中には、特に脂溶性成分に有用な生理機能を持った素材があることを見出している。油脂中には主成分のTG以外にも様々な微量成分が含まれているが、これらの安全性と有効性を検証することも脂質栄養学分野の重要な課題である。我々は、これらを有効活用して、健康食品や化粧品の素材として活用する活動を行っているので、プロジェクトについて紹介し、地域活性化に向けてどのような課題が存在するのか考察したい。