研究等業績 - その他 - 西川 治
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Hulijeli L.
Resource Geology ( Resource Geology ) 74 ( 1 ) 2024年01月
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秋田県男鹿半島において得られた完新世柱状堆積物から産出する珪藻化石群集
嶋田 智恵子, 西川 治, 齋藤 めぐみ
Diatom ( 日本珪藻学会 ) 40 ( 0 ) 16 - 30 2024年
<p>Diatom assemblages, composed of totally 171 floral taxa from Holocene bore-hole sediment in the Iriai Lowland, Oga Peninsula, Akita Pref., northeastern Japan, are presented here with photomicrographs identified under light microscopy. Biostratigraphy of those diatoms is confirmed for a refined reconstruction of the past burial history of the lowland.</p>
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男鹿半島五里合低地を埋積する沖積層の層序と環境変遷
西川 治, 嶋田 智恵子
第四紀研究 ( 日本第四紀学会 ) 62 ( 3 ) 105 - 119 2023年08月
<p>男鹿半島北岸,五里合低地で掘削された6本の沖積層ボーリングコアの層相解析,放射性炭素年代測定,珪藻化石分析および花粉化石分析に基づいて,堆積盆の基盤を構成する地層,堆積盆の埋積過程と完新世の環境変遷を検討した.五里合低地では,約15~20 mの厚さの沖積層が,最終氷期の堆積面が削剥されて形成された幅広い堆積盆を埋積している.堆積盆の基盤は,上部更新統潟西層の砂層および約40,000年前の湿地堆積物からなる箱井層最下部である.五里合低地の環境は,後氷期の温暖化による海進の影響よって,扇状地から約10,000年前には氾濫原となり,8,500年前には湾となった.縄文海進高頂期には,汽水あるいは海水の影響を受ける淡水の水域に変化した.その後,海退に伴うデルタの前進によって水域は南から次第に縮小し,3,000年前ごろには全域が湿地となり,次第に乾燥化して現在のような低地に変化した.</p>
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Paleoseismic Analysis of the Walanae Fault Zone in South Sulawesi, Indonesia
Jaya A.
Indonesian Journal on Geoscience ( Indonesian Journal on Geoscience ) 10 ( 2 ) 215 - 227 2023年08月
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秋田大学大学院国際資源学研究科附属鉱業博物館 ―岩鉱分野の展示の見どころ―
西川 治
岩石鉱物科学 ( 一般社団法人 日本鉱物科学会 ) 52 ( 1 ) n/a 2023年
<p>秋田大学大学院国際資源学研究科附属鉱業博物館 ―岩鉱分野の展示の見どころ―</p>
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秋田地域新第三系の弾性波速度異方性:地層の圧密と広域応力場の影響
西川 治, 仁井田 拓己, 齊藤 温人, 今井 忠男
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2023 ( 0 ) 70 2023年
<p>秋田地域の新第三紀堆積盆には,中期中新世後期から更新世までの一連の海成層が累重している.その厚さは数千mにおよび,深部に埋没した堆積物は強く圧密されている.また,東北日本弧において鮮新世以降に強まった東西水平圧縮によって,これらの地層には逆断層や褶曲構造が発達している.秋田地域の堆積岩類が経験したこのような履歴の記憶は,岩石に刻まれ,その組織や物性に現れているはずである. 弾性波速度は岩盤物性の評価や地下構造の可視化に用いられており,堆積岩も多数測定されている.しかしながら,堆積時の層理面の発達や続成過程における圧密,造構応力による変形の影響が弾性波速度にどのように反映されるのかについて十分な検討は行われていない.本研究では,秋田県太平山南麓地域,北由利衝上断層上盤の褶曲帯,鳥田目断層下盤の強変形帯に分布する新第三系(権現山層,女川層,船川層,天徳寺層)の泥質岩試料を採取し,弾性波(P波)速度,密度および孔隙率を測定し,堆積,圧密および変形の影響を検討した.P波測定では,試料をZ軸 (層理面に垂直),X軸(走向方向), Y軸(X軸およびZ軸に垂直)を3辺とする一辺5cm~3cmのキューブ状に成型し,3方向の速度を測定した. P波速度の測定には,秋田大学岩盤研究室の超音波速度測定装置 ソニックビューア (応用地質)を用いた. 各層のP波の平均速度は,権現山層で3.35km/sec,女川層で2.77km/sec,船川層で3.14km/sec,天徳寺層で2.61 km/secである. P波速度は,試料の密度とは正の相関関係を示し,有効孔隙率とは負の相関関係を示した.これは埋没過程での割れ目や孔隙の閉塞によるものだと考えられる.3方向の弾性波速度を比較すると,測定値にばらつきがあるものの,速度平均では,天徳寺層を除く下位の3つの地層のサンプルで,Z方向の弾性波速度がほかの2方向にくらべて明らかに小さい値を示した.Z方向の速度が最小になる理由の解明は今後の課題である.秋田地域の新第三系泥質岩は,圧密作用によって堆積時の50%から25%程度の厚さにまでZ方向に短縮している(西川ほか, 2017 [日本地質学会第124年学術大会講演要旨])また,堆積時に形成された層理面や圧密による粒子配向がZ軸に垂直に形成されている.これらが弾性波速度にどのような影響を与えているかについて,さらに検討する必要がある.一方,X軸方向とY軸方向の速度を比較すると, Y軸方向の速度がX軸方向よりも速い試料が認められた.北由利地区および鳥田目地区の多くの試料において,X軸はN-Sに近い方位を向くことから,東西圧縮の広域応力の影響が示唆されるが,Z軸に垂直な面内での異方性は一般に小さい. 先行研究(長田・Adikaram, 2012 [ 第41回岩盤力学に関するシンポジウム講演集]など)では,堆積岩試料の含水量の違いによって弾性波速度が変化し,飽和度の減少とともに低下する傾向がZ方向において顕著であるとの報告がある.本研究では自然状態の試料を測定したが,今後,飽和度を変えたP波速度測定を行い,含水量の効果についても明らかにしていきたい.</p>
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Raman Spectroscopy of Natural Titanomagnetites
HULIJELI Leeysmon, WATANABE Yasushi, NISHIKAWA Osamu, Alen J. TUPAZ Carmela
International Journal of the Society of Materials Engineering for Resources ( 日本素材物性学会 ) 25 ( 2 ) 243 - 248 2022年10月
<p>The Raman spectral patterns of analyzed natural titanomagnetite samples revealed peaks at 670-680 cm<sup>-1</sup>, 544-603 cm<sup>-1</sup>, 407-495 cm<sup>-1</sup> and 373-392 cm<sup>-1</sup> that correspond to the A<sub>1g</sub>, T<sub>2g</sub> (2), T<sub>2g</sub> (3) and E<sub>g</sub> vibrational modes of the spinel <i>Fd3m</i> space group. Previous studies of titanomagnetite Raman spectra patterns have suggested the behavior of these peaks reflect the distribution of Fe<sup>2+</sup>-O, Fe<sup>3+</sup>-O and Ti<sup>4+</sup>-O bonds within the titanomagnetite crystal structure. The peak intensities of each vibrational modes are observed to be relative, reflecting the re-distribution of Fe<sup>2+</sup> and Fe<sup>3+</sup> in both the tetrahedral and octahedral sites as a function of Ti concentration. Existing titanomagnetite Raman spectroscopy studies are limited to analysis of synthetic titanomagnetite. In this study, Raman spectral patterns from natural titanomagnetite i.e., magnetite-ulvöspinel solid solution samples were analyzed to determine behavior of Raman spectrum peak positions and intensities due to changing content of Ti<sup>4+</sup>, Fe<sup>2+</sup> and Fe<sup>3+</sup>.</p>
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A system of the granite weathering degree assessment using hyperspectral image and CNN
Kim J.
International Journal of Mining, Reclamation and Environment ( International Journal of Mining, Reclamation and Environment ) 36 ( 5 ) 368 - 380 2022年
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東北日本の中・古生界石灰岩体に記録された古応力
野口 咲紀, 今井 宏太朗, 西川 治
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2022 ( 0 ) 52 2022年
<p>地質体が過去に経験した応力状態を明らかにすることは,構造発達史を理解する上で重要な手がかりとなる.しかし,日本列島のような変動帯に位置する中古生代の基盤岩類は複数のテクトニックイベントを受けている可能性があり,重複の恐れのある変形構造を利用した古応力解析の結果は複雑で,その解釈は困難であると予想されていた.多重逆解法 (山路, 2000 JSG)は複数の応力を分離することができるため,複数の応力イベントを経験した古い地質体への適用が期待できる.応力逆解法では,小断層のスリップデータを用いることが一般的であるが,方解石双晶の方位データも利用できる(Jaya and Nishikawa, 2013).方解石双晶を用いた応力解析では, 一つのサンプルから容易に多数のデータを収集することができることが利点である.また,花崗岩などの貫入による熱的影響で再結晶すると,双晶がリセットされるため,熱変成を受けた石灰岩や方解石脈に対しては,検出された応力の年代を制約できる場合がある.</p><p> 東北日本の中古生界は,北部北上帯,根田茂帯,南部北上帯,阿武隈帯に区分され,それぞれ異なった年代および構造発達史を示す(Ehiro et al., 2016; Kojima et al., 2016 など).また,これらの地質帯には前期白亜紀に花崗岩類が貫入し,周囲に熱的な影響を与えている(Nakajima , 2016など).本研究では北部北上帯(尻屋・八戸・安家地域),南部北上帯(旭の又,住田,東山,気仙沼,登米,相馬立石地域),阿武隈帯(滝根地域)において採取した計36個の石灰岩および大理石中に発達した方解石双晶に多重逆解法を適用し応力解析を行った.一つのサンプルから互いに直交する三つの面の薄片を作成し,ユニバーサルステージを用いて一サンプルにつき60~150個の方解石粒子の双晶ラメラの極とc軸方位の測定を行った.</p><p> 各試料の方解石双晶データから検出された応力の多くは,N-S~E-W方向水平にσ₁,N-S~NE-SW方向鉛直にσ₃が配置され,0~0.6(軸性圧縮~3軸応力状態)の応力比を持つ.阿武隈地域の主要な応力クラスターには応力比が大きいものもあり,南北引張の応力が検出された.北部北上帯および南部北上帯の石灰岩には褶曲によって折りたたまれた層理面やスレートへき開などの面構造が発達する.検出された応力は,面構造の発達方向から推測される応力配置と非調和的なものが多いが,北部北上帯の尻屋,八戸地域,南部北上帯の気仙沼地域では,面構造に垂直な方向にσ<sub>1</sub>のクラスターが認められる.北部北上帯安家地域では,小断層のスリップデータや石英脈の方向から推測される応力配置と調和的な応力も検出された.</p><p> NW-SE方向にσ<sub>1</sub>が配置される応力は,前期白亜紀花崗岩の貫入の影響で方解石が再結晶している地域においても検出されることから,東北日本に分布する中古生代の石灰岩に記録された応力は主として前期白亜紀以降の応力場であることが示唆される.東北日本では白亜紀にNNW-SSE方向の大規模な左横ずれ断層がいくつも活動しており,本研究で得られた主要な応力のNW-SE圧縮の応力場は,この左横ずれ運動と調和的となる.</p><p></p><p>文献:</p><p>Ehiro, M. et al., 2016. <i>In</i> Moreno, T. et al., eds., <i>Geology of Japan</i>, Geol. Soc. London,25-60.</p><p>Jaya, A and Nishikawa, O., 2013. JSG,55,34-49.</p><p>Kojima, S., et al., 2016. <i>In</i> Moreno, T. et al., eds., Geology of Japan, Geol. Soc. London,61-100.</p><p>Nakajima, T., et al., 2016. <i>In</i> Moreno, T. et al., eds., Geology of Japan, Geol. Soc. London,251-272.</p><p>Yamaji, A., 2000. JSG, 22,441-452</p>
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秋田地域新第三系の続成作用 炭酸塩ノジュールによる検討
西川 治, 長井 香, 石山 大三
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2022 ( 0 ) 280 2022年
<p><b>はじめに</b></p><p>秋田地域に広く分布する新第三系海成堆積岩類は,多くの炭酸塩ノジュールを含んでいる.炭酸塩ノジュールは,続成初期に極めて短期間で生成されると考えられている(Yoshida et al., 2015など).また,細粒な炭酸塩粒子が硬く緻密な組織を形成するため,ノジュールの中では圧密や溶解沈殿反応が抑制されている (西川ほか, 2020).このように,炭酸塩ノジュールは,堆積物の堆積後間もない時期の状態を保持しているため、組織や組成を母岩と比較することで,続成作用前後の堆積物の変化を定量的に議論することができる.著者らは,これまで秋田・庄内地域において,ノジュールを用いた堆積物の圧密量の見積もりや(西川, 2017),ノジュールを形成する鉱物相や酸素・炭素同位体組成,Sr同位体組成について報告してきた(安東ほか,2015;西川ほか,2018).本研究では,秋田地域の新第三系に産する炭酸塩ノジュール及び同層準の母岩の粒径分布,粒子構成及び化学組成を調べ,岩相の違いに及ぼす堆積物の供給源の変化と続成作用の影響について検討した.</p><p><b>試料と方法</b></p><p>秋田地域の3か所(太平山南麓地区,岩城地区,矢島・鳥海地区)で,新第三系最下部から上部(権現山層・女川層・船川層・天徳寺層)の炭酸塩ノジュールおよび同層準の母岩を採取し,粒度,粒子構成,鉱物組成,全岩化学組成および有機炭素量を比較した. 固結度の低い母岩や希塩酸処理で炭酸塩が除去できるノジュールについては,構成粒子を単離した.分解が困難な固結した岩石については、薄片を作成した。</p><p><b>結果と考察</b></p><p>珪藻や放散虫殻などの生物源粒子は、続成過程で船川・天徳寺層で約40%~50%,権現山層や女川層では80%以上が溶解している.全岩化学組成の変化は続成前後でほとんど認められないことから,溶解した物質はほとんど移動せず再沈殿していると考えられる.女川層と船川層の境界を挟んで、Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>が増加傾向を示す.粒子構成では秋田堆積盆北中部の太平山南麓では、火山ガラスの量が激増する一方、西部の岩城地区では大きな変化は認められない。秋田地域では,8.5Maを境に火成活動が活発化し、横手盆地北縁部では,安山岩質~デイサイト質のテフラが大量に噴出した(周藤, 2009など).女川層硬質泥岩から船川層塊状暗灰色泥岩への岩相変化は従来指摘されていた後背地の隆起による砕屑物の増加だけで無く,火山活動の活発化による火山砕屑物の増加も大きく寄与していると考えられる. 有機炭素量は,西部の岩城地区の女川層で非常に高い値を示す.また,全域で炭酸塩ノジュールは母岩に比べて有機炭素を多量に含んでいる.このことから,炭酸塩ノジュールの有機炭素はほとんど移動しておらず,続成前の堆積物に含まれる有機炭素量が保持されていると考えられる.</p><p>文献:</p><p>安東大輝ほか, 2015. 日本地質学会学術大会(長野)講演要旨.122.</p><p>西川 治, 2017. 日本地質学会学術大会(松山)講演要旨.124.</p><p>西川 治ほか, 2018. 日本地質学会学術大会(札幌)講演要旨.125.</p><p>西川 治ほか, 2020. 地質学雑誌,126,53-69.</p><p>周藤賢治,2009. 東北日本弧―日本海の拡大とマグマの生成―, 252p.</p><p>Yoshida, H., et al.,2015. Sci. Rep., 5, 14123.</p>
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Jaya A.
Marine and Petroleum Geology ( Marine and Petroleum Geology ) 133 2021年11月
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男鹿半島北岸五里合低地の完新統と環境変遷
西川 治, 嶋田 智恵子, 高島 勲
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2021 ( 0 ) 085 2021年
<p>五里合低地は,男鹿半島北岸基部に位置する,南北2.4㎞ 東西1.5㎞の小規模な沖積低地である.東縁を申川断層の断層崖で区切られており,直線的な地形境界が発達する.海成段丘が発達し隆起傾向を示している男鹿北岸地域の中で,東側の八郎潟低地帯(白石,1990)とともに南北走向の断層の活動に関連した構造的な沈降が示唆される低地である.これまで,地下5mまでの表層部に限って堆積相の解析が行われているが(藤ほか,1995),深部の調査はほとんど行われていないため,低地を埋積している地層の全体像はわかっていない.著者らは,2000年代に入って土木調査で基盤まで掘られた数本のボーリング試料を秋田県から入手し,堆積物の解析を行っている.本講演では,低地中央部で掘られた1本のコアについて,岩相記載,珪藻群集解析,放射性炭素年代測定および,砂層の熱ルミネッセンス(TL)発光特性の検討等で得られた成果を報告する.五里合低地の堆積物は,最終氷期に侵食されてできた谷が,後氷期の海進で埋積され陸化するまでの過程を詳細に記録していた.</p><p>解析したボーリングコアの長さは23.45mである.標準貫入試験のN値が急に大きくなることにより,基盤深度が17.5mから19.5 mの間にあると推定される.基盤は,シルト混じりの極細粒砂で,周辺の段丘を構成する潟西層の岩相に似ている.その上の層序は,砂礫層(厚さ1m),砂層(厚さ0.6m),腐食土層Ⅰ(厚さ1.4m),シルト質細粒砂層(厚さ2.6m),厚い粘土層(厚さ7.3m;深度12 8m~4.5 m),有機質シルト層(厚さ1m),シルト混じり砂層(厚さ1.5m),腐植土層Ⅱ(厚さ1.9m),現地表の水田土壌となっている.放射性炭素年代は,腐植土層Ⅰ下部(深度15.63 m)が8990±30 yBP, 厚い粘土層の上部(深度5.81m) の有機物が5580±30 yBP, 有機質シルト層(深度3.72 m)の中の炭質物が3990 ±30 yBP, 腐植土層Ⅱ下部(深度1.9 m)が2930 ±30 yBPである.</p><p>N値が変化する上下の砂層に含まれる石英の赤色領域のTL発光特性はよく似たパターンを示し,層準による大きな違いはない.基底の砂礫層の礫種は硬質泥岩や流紋岩,火砕岩からなり,男鹿半島西部山地の火山岩類および女川層が給源と考えられる.よく円摩された細礫および中礫であり,西部山地と五里合低地は水系がつながっていないことから,基盤の潟西層や鮪川層に含まれる礫のリワークであると考えられる.一方,五里合低地の南側に存在する寒風山の噴出物は堆積物中に確認できなかったことから,堆積物を供給した河川は,寒風山北東麓の滝の頭から流下し低地中央を縦断する鮪川川ではなく,低地東方の潟西段丘を開析する谷であると考えられる.この台地には申川断層の活動に伴って申川背斜構造が発達し、東方に傾動している。珪藻化石群集については,基盤の砂層は海生種からなるが,深度15.72mの腐植土層は海生種をほとんど含まない.その上位の厚い粘土層までの地層は,砂泥底質に付着する海生種を多産ないし随伴するようになるが,淡水種や汽水種も産する.さらに上位の地層では,次第に汽水種から淡水種へと変化する.</p><p>これ等の結果から,五里合低地の環境変遷と堆積過程をまとめると以下のようになる.最終氷期に基盤の潟西層を削剥した谷が形成されていた.後氷期の海進によって,まず,基底砂礫層の堆積が始まり,湿地に環境変化して腐植土層が堆積した.さらに,小河川等の陸水の影響が強い内湾へ変化していき,細粒の砂が堆積した.厚い粘土層の堆積時期に縄文海進の高海面期に至ったと考えられる.その後,4000年~3000年前ごろから再び湿地の環境を経て陸化した.堆積速度は,下部の海進期にあたる地層で2.9 mm/yと速く,上部の地層では1.3~1.7mm/yと見積もられる.</p><p></p><p>文献</p><p>白石 1990,秋田県八郎潟の完新世地史, 地質学論集, 36, 47-69.</p><p>藤 ほか 1995,男鹿半島五里合(いりあい)における完新世の古環境解析.日本海域研究所報告, 26, 1-35, 金沢大学.</p>
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秋田および山形北部地域の新第三系炭酸塩コンクリーションのSr同位体比と珪藻化石年代
西川 治, 安東 大輝, 嶋田 智恵子, 石山 大三, 山元 正継
地質学雑誌 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 126 ( 2 ) 53 - 69 2020年
<p>秋田・山形北部地域の海成新第三系に発達する炭酸塩コンクリーションおよび共産する貝化石殻試料のSr同位体比を検討するとともに,コンクリーションに含まれる珪藻化石年代を決定した.珪藻化石の保存状態が良好な5試料について,後期中新世に相当する珪藻化石帯を認定した.コンクリーションのSr同位体比は,生成した当時の海水の同位体比とこの地域の火成岩類が示す低い同位体比との中間的な,<sup>87</sup>Sr/<sup>86</sup>Sr=0.709013-0.706749の広い範囲の値をとる.これは,マグマ起源のSrが間隙水を汚染し,そこからコンクリーションが生成したためと解釈できる.コンクリーションと貝化石殻両者の鉱物相とSr同位体比を検討した結果,コンクリーションの多くは,続成初期の間隙水の同位体的特徴を保持していると推定された.</p>
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Jaya A.
Earth, Planets and Space ( Earth, Planets and Space ) 71 ( 1 ) 2019年12月
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Mezaki Y.
Heliyon ( Heliyon ) 5 ( 12 ) 2019年12月
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スラウェシ島中部で発生した2018年ドンガラ・パル地震の地表地震断層の現地調査報告
西川 治, アスリ ジャヤ, サハブディン ジュマール
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2019 ( 0 ) 2019年
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秋田県および山形県北部地域の新第三系炭酸塩岩のセメント鉱物とSr同位体比
西川 治, 安東 大輝, 齋藤 洋爽, 石山 大三, 山元 正継
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2018 ( 0 ) 2018年
【災害のためプログラム中止】 平成30年北海道胆振東部地震により学術大会のプログラムが大幅に中止となりました.中止となったプログラムの講演要旨については,著者のプライオリティ保護の見地からJ-STAGEに公開し,引用可能とします.ただし,学術大会においては専門家による議論には供されていませんので「災害のためプログラム中止」との文言を付記します.(日本地質学会行事委員会)
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細矢 卓志, 橋本 智雄, 加賀 匠, 平井 孝明, 西川 治
日本地質学会学術大会講演要旨 ( 一般社団法人 日本地質学会 ) 2018 ( 0 ) 2018年
【災害のためプログラム中止】 平成30年北海道胆振東部地震により学術大会のプログラムが大幅に中止となりました.中止となったプログラムの講演要旨については,著者のプライオリティ保護の見地からJ-STAGEに公開し,引用可能とします.ただし,学術大会においては専門家による議論には供されていませんので「災害のためプログラム中止」との文言を付記します.(日本地質学会行事委員会)
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Townend J.
Geochemistry, Geophysics, Geosystems ( Geochemistry, Geophysics, Geosystems ) 18 ( 12 ) 4709 - 4732 2017年12月
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Jaya A.
Lithos ( Lithos ) 292-293 96 - 110 2017年11月
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Bedrock geology of DFDP-2B, central Alpine Fault, New Zealand
Toy V.G.
New Zealand Journal of Geology and Geophysics ( New Zealand Journal of Geology and Geophysics ) 60 ( 4 ) 497 - 518 2017年10月
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Extreme hydrothermal conditions at an active plate-bounding fault
Sutherland R.
Nature ( Nature ) 546 ( 7656 ) 137 - 140 2017年06月
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Chuenpee T.
Applied Radiation and Isotopes ( Applied Radiation and Isotopes ) 120 30 - 39 2017年02月