科研費(文科省・学振)獲得実績 - 山口 留美子
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非対称アンカリング界面による液晶配向現象の解明と超低電圧駆動ディスプレイの創製
基盤研究(C)
研究期間: 2023年04月 - 2026年03月 代表者: 山口 留美子
片側基板にのみ「弱アンカリング」界面を用いた非対称アンカリング界面構造とすることで,「液晶分子配向の弾性ひずみにより弱アンカリング界面上の液晶分子を制御する」新規な概念を導入し,低電圧駆動(~1V)の液晶ディスプレイ(LCD)の創製を目指す。
非対称アンカリング界面を利用した疑似TNモードを提案し,疑似TNモードが成立する条件(アンカリング力,液晶の弾性定数,液晶層厚)を,数値解析的に明らかにする。弱アンカリング配向膜材料探索と,アンカリング力制御を実験的に評価し,疑似TN素子の作製を試みる。数値解析結果との比較を行うことで,弱アンカリング表面での液晶分子の挙動を,弾性ひずみと外場エネルギー,および界面分子同士の吸着,の両面から考察し,「固体相と液晶相の界面現象」理解の液晶配向現象理解の進展をはかる。 -
新規光散乱メカニズムによる高分子・液晶複合系リバースモード素子の低電圧駆動化
基盤研究(C)
研究期間: 2018年04月 - 2022年03月 代表者: 山口 留美子
本研究は,光散乱型液晶素子の低電圧駆動化を目指し,そのための新規な光散乱メカニズムの提案と,素子作製技術の創成を行うものである。液晶中に~10%程度の高分子を分散させた高分子・液晶複合素子は,透明状態から光散乱状態への電気的切り替えを可能とするリバースモード特性を提供する。しかし,通常の液晶ディスプレイと比較しその駆動電圧は20-40 Vと10倍程高い。そこで,申請課題では低電圧駆動(~6 V)を可能とするため,従来の高分子―液晶間の屈折率差による光散乱の他に,液晶ドメイン間での光散乱機構を新規に提案する。さらに,この光散乱機構発現のための高分子相分離構造を作製する技術を検討する。これにより,従来の液晶ディスプレイの駆動電源回路をリバースモード液晶素子に適用できるようになり,素子の応用範囲が格段に広がることが期待できる。
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高分子安定化技術のハイブリッド配向液晶素子への適用とスマートガラスの創製
基盤研究(C)
研究期間: 2015年04月 - 2018年03月
種々の液晶・高分子材料の組み合わせ,高分子の分散構造制御により,この非対称な光散乱特性とそのメカニズムを明らかにした。高分子材料には,重合前の低分子状態では液晶と同じ棒状分子で光学異方性を有するもの(反応性メソゲン)を用いた。P型液晶を用いた素子に電圧を印加した時,素子中央での光学軸の傾きと同じ方向からの斜め入射に対して透明,それと反対方向からは散乱状態となる。N型液晶を用いた場合は,角度依存性がp型液晶とは反転していることを明らかにし,さらには2周波駆動液晶によって周波数でブラインドの角度調整と同様な機能を発現できた
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液晶分子の配向方向とアンカリング力の制御:液晶材料からのアプローチ
基盤研究(C)
研究期間: 2012年04月 - 2015年03月
従来の液晶分子の配向技術は,高分子配向膜によって液晶を一方的に制御するものだが,申請課題は液晶分子の影響を積極的に取り入れた配向制御を目的とする。すなわち,Ⓐいまだ数例しか報告のない“高分子配向膜上での液晶配向方向が,液晶化学構造によって90異なる”配向現象の検証を増やす。次に,Ⓑ配向方向の異なる2種類の液晶を混合することによって,配向規制力(アンカリング力)を制御する。これにより,学術的にはⒸ従来の液晶配向メカニズムに対して,新たな配向要因を加えることができ,応用面ではⒹ弱アンカリング力を用いたメモリ効果や双安定効果による電子ペーパーの創製へ寄与することができる。
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アンカリング力制御による光書き込み・消去型液晶電子ペーパーの創製
基盤研究(C)
研究期間: 2009年04月 - 2012年03月
本研究の最終的な目的は,光書き込み・光消去方式による液晶電子ペーパーの創製である。表示原理として,液晶分子配向膜のアンカリング力(配向規制力)を変え,バルク中の液晶配列状態を制御する手法を提案する。すなわち,無偏光照射による配向膜のアンカリング力可変を実現し,加えて液晶分子の配列状態と表示特性のシミュレーション解析によって,本表示方式における素子パラメータと表示性能の関係を明らかにする。
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液晶素子における分子配向の耐光性とそのリアルタイム評価技術の開発
基盤研究(C)
研究期間: 2007年04月 - 2009年03月
レーザ光照射により、液晶素子に発生する劣化内容を明らかにする。すなわち、液晶分子の配向状態においては、面内・面外方への配向容易軸の変化、およびそれらの配向規制力(アンカリング力)変化に着目し測定を行う。さらに、液晶および配向膜材料の分解等による電気特性(抵抗値、静電容量)および物性値(相転移温度、誘電異方性、屈折率異方性、弾性定数)の変化に関する測定を行う。
次に、劣化に伴う上記変化を、光照射を行いながらリアルタイムで観察・測定するためのシステムを構築する。また、多くの液晶・配向膜材料に関するデータを蓄積し、耐光性評価に有効な測定指標を見出す。以上の研究結果から、光照射下の液晶素子の配向現象に関する知見を得ると共に、高効率・高精度な耐光性評価技術を確立する。 -
高分子膜表面改質による液晶分子配向の制御と高機能化
基盤研究(C)
研究期間: 2005年04月 - 2007年03月
今日、液晶はディスプレイ(LCD)として広く応用され、機能性有機材料としても研究が盛んに行われている。液晶のデバイス応用において、液晶分子の界面配向特性は非常に重要であり、一般にはドラムに巻いた布でラビング処理された高分子(主にポリイミド)が液晶配向膜として用いられ、これにより均一な初期配向を発現させている。一方、LCDの新規表示方式や高性能化、種々の液晶光学デバイス作製に対応した新しい界面配向性能の要求が高まっている。
このような背景のもと、本研究課題は ”高分子表面改質技術の適用により、液晶配向膜の高機能化を達成する” ことを目的とする。すなわち、ラビング処理によって発生する均一な高分子膜の配向容易軸(液晶分子長軸が揃う方向)およびアンカリング力(界面における液晶の配向規制力)を、光・プラズマ・放射線等の照射により部分的に表面改質を行うことで変化させ、任意の液晶分子配向状態の面内分布を創出するための諸条件を明らかにした。 -
増感発光効果を用いた液晶表示素子の高輝度・高コントラスト化
基盤研究(C)
研究期間: 2002年04月 - 2005年03月
液晶表示素子(LCD)は非発光型の表示素子であり、2枚の偏光板の使用と、白色光源の中から赤、青、緑の3原色をカラーフィルターによって取り出し、これらを再び混色して表示を行っていることから、エネルギーの利用効率が低い。上記の問題の解決策として発光型LCDが提案されている。本申請課題は、液晶中に蛍光物質を溶解した液晶表示素子において、増感発光現象を発現させ、その増感効果を電気的に制御することにより、発光表示輝度およびコントラストの大幅な増加をはかることを目的としている。
さらに、本研究では、増感剤として溶媒でもある液晶そのものを用いることを検討する。増感剤として液晶を用いることで、増感剤が異方性を有するという機能の他に、増感剤と発光色素との分子間距離が非常に接近し、エネルギー移動効率も増加することが期待できる。すなわち、吸収・発光の異方性の増加による高コントラスト化、および分子配向方向の電圧制御の点において、液晶増感剤を有効に機能させることを目的としている。また、本申請課題の研究過程において、異方性溶媒中における増感発光機構とその偏光特性、および吸収・発光の2色比と配向秩序度の影響等、光物理化学に関する知見を得る -
光型液晶表示素子の高輝度化に関する研究
基盤研究(C)
研究期間: 2000年04月 - 2002年03月
本研究における発光型LCDでは、液晶中に2色性の蛍光色素を混合し、液晶溶液中における高い吸収異方性とそこから放射される偏光蛍光を得ることが不可欠である。これらの特性に関しては液晶材料、蛍光材料の各特性、およびその組み合わせによるところが大きい。そのため種々の蛍光色素と液晶材料、特に3原色(赤青緑)の蛍光体をネマティック液晶に混合し、溶解度、吸収スペクトル、発光スペクトル、混合物による液晶物性値の変化の測定を行った。
次に、液晶セルに電圧を印加することにより、多色蛍光色彩表示が可能ないくつかのスイッチングモードを提案した。上記の結果を基に、最適な蛍光液晶セルの作製とそれぞれの組み合せを検討し、表示特性を測定評価した。