科研費(文科省・学振)獲得実績 - 佐々木 雅子
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小学校英語科における異文化間コミュニケーション活動のデザイン、指導方法、評価方法
萌芽研究
研究期間: 2016年04月 - 2019年03月
平成28年度から3年間にわたる研究は、1年目に試行、2年目に実験、3年目に改善とまとめ、という流れで進められる。具体的な研究計画と方法については、上記1)、2)、3)の3つの角度(活動デザイン、指導方法、評価方法)から各年度順に記載する。
平成28年度
1) 異文化間言語教育(ILL)理論を基礎にした異文化交流活動のデザイン
ILLの理論研究と実践例の先行研究から着手する。ILLは、Ingram et al. (2008)が理論的説明をし実践例を提示しているCommunity Involvement Learningの別称とも言える。ただ、ILLがグローバル化に対応した国家戦略的な取組であり、実際に教育現場への支援が図られているという点で、以前と比べて現在の実践例は規模と内容において著しく発展した。したがって、ここ10年程度の理論的成熟と実践例の充実を追うことが必要である。また、平成24年度から毎年スカイプで交流しているオーストラリアの小学校を訪問し、ILLの実践について小学校の日本語担当教員など関係者にインタビューを行い、実際の授業を参与観察しカリキュラムについて直接的に情報を収集する。日本の小学校については、大学附属の小学校との共同研究を継続する形で進めていく。実際にデザインした活動は、附属小学校でで実施する。児童の反応を観察しながら、異文化間コミュニケーション能力と言語能力がどのように育成されていくかという視点から、その効果を観察とアンケートによって調査する。
2) 交流の中で言語能力と異文化間コミュニケーション能力を育成する指導方法
担当教員の授業を録画しトランスクライブして、現在の授業がどのような特色を帯びているか客観的に捉える。英語能力を育成するという観点から、フォーカス・オン・フォームに理論を置く指導方法とどのように異なるかについて理解し、意味から形式へ注意を向けるような指導について理解できるよう担当教員をサポートする。関連する図書も紹介し、実践に役立つような理論の理解を促進する。また、異文化間コミュニケーション能力についても、交流がどのように豊かになっていくか動機付けなどの情緒的側面によい影響をもたらす指導や支援について追究する。
3) 異文化交流活動における児童の評価方法
日本の小学校高学年の英語能力の熟達度レベルおよび発達段階を考慮した評価方法を試 行する。行動観察評価を授業時の記録をもとに録画から評価できる点を対象比較し、評価すべき点について網羅的リストを作成する。自己評価は、Can-Doリストとの段階的な連関を示し指導事項と一致させたものを試作する。パフォーマンス評価は交流の中での児童の
発信的活動について評価項目、規準および基準を試作する。ポートフォリオについては意欲を高められる学習効果を増幅させる形式と運用を試行する。 -
地域連携による『外国語活動総合教育システム』のモデル構築と検証
萌芽研究
研究期間: 2011年04月 - 2014年03月
大学、学校、教育委員会、海外の協定校が連携した外国語活動の発展を目的とした教育システムを構築し、その効果を検証する研究である。
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社会文化理論に基づくタスクとフォーカス・オン・フォームを機軸とした英語教員養成
基盤研究(C)
研究期間: 2009年04月 - 2014年03月
本年度(~平成22年3月31日)の研究実施計画
(1)理論研究
外国語教育における社会文化理論は、Lantolf (2000) に収められているいくつかの理論的、実証的研究によって、その詳細と展開が示されている。最新の動向についての調査を進めながら、日本の外国語教育への具体的応用が可能な理論的枠組みを構築する。
(2)プログラムの計画・実施・分析
タスクを中心に据えた対話交流を計画し実施する。英語教員を志望する日本人大学生とオーストラリアの日本語学習者、または、日本在住の外国語指導助手(ALT)との間で実施する。プロジェクト参加の日本人学生は15名程度を予定している。
a. タスク:Pica, Kanagya&Falodun (1993) は、言語習得に効果があると推測されるタスクの要素の特徴を提示している。他の先行研究も合わせて、言語学習に効果的なタスクを設定しプロジェクトの対話交流のタスクシラバスを作成する。
b. 内省:アウトプット仮説を唱えるSwain (1995) は、3つの機能(気づきの機能、仮説検証の機能、メタ言語的(内省)機能)を提示し、内省は、学習者が言語知識を内在化することを可能にするとしている。言語運用および異文化理解について、どのように内省のタイミングと方法を設定するべきかについて探る。
c. 言語運用能力:言語テスト (ISLPR Speaking, Listening) を使用し、事前と事後での言語運用能力を比較する。また、録画データを会話分析と正確さ、流暢さ、複雑さの3点から分析する。
d. 言語教育観:事前と事後の言語教育観を比較する。また、調査以前にどのような英語教育を受け、英語学習を行なってきたかについても調査する。
(3)プログラム評価
1.理論との整合性、2.タスク、3.内省、4.言語運用能力、5.言語教育観の5つの観点からデータを整理し、次年度につなげる。 -
多文化共生を目指す外国語教育の実証的研究:ICTによる国際学習コミュニティの創出
基盤研究(A)
研究期間: 2003年04月 - 2007年03月
1.アンケート調査について「外国語学習が異文化に対する意識に及ぼす影響について」に関する調査については、最終のデータ確認後、論文として近々完成する予定である。秋田大学(日本人英語学習者、中国人日本語学習者)とグリフィス大学(オ-ストラリア人日本語学習者)との遠隔合同授業についてのアンケート調査と追跡インタビュー調査は論文として完成した。ハワイと文教大学との遠隔合同授業に対する学習者の捉え方については、事後アンケートによって探られた。 2.多文化共生実現を目指す外国語教育について実践的教育は次の5項目にまとめられる。1)秋田大学教育文化学部の学生と大韓民国新羅大学校の学生間の電子メールでの英語によるエッセイ交換を行うという授業実践研究。2)「多文化」を大きなテーマとして、Strategic Interactionのシナリオ作りとPower Pointを用いたプレゼンテーション(ハワイのKapiolani Community Collegeの学生との遠隔教育交流に発展)。3)交換留学生、Assistant Language Teacher(ALT)とのCommunity Involvement Learningの実施。4)オンライン上英語学習プログラム(English Town)を用いての海外の英語学習者とのディスカッション。5)英語科教員を目指す学生を対象とした、小学校への英語科教育導入を通して考える英語科教育。1)は学会発表と論文の形で発表された。2)〜5)については平成18年度に学会発表、論文発表を行う予定である。また、過年度に実施した多文化共生をトピックとする英語音声表現教育の実践について学会で発表し、論文にまとめた。文献調査も継続して実施。オーストラリアの言語教育政策を手がかりとして、多文化共生を目指す外国語教育に関して調査し考察を深めた。 3.遠隔合同授業について 10月29日にハワイのKapiolani Community Collegeと接続し、「食習慣とマナー」、「銃と社会」という2つのテーマで、意見交換を行った。5,6名ずつの少人数での遠隔教育交流であった。また、2月17日には神奈川県の文教大学と遠隔教育交流を実施した。小学校カリキュラムへの英語科教育導入の是非について英語で意見交換を行った。母語話者との遠隔合同授業と、国内の英語学習者との遠隔合同授業を体験することによって、学習や授業の目的に応じて通信相手を選択する必要を実感した。また、秋田県における「学術ネットワーク推進事業 遠隔講義システム公開実験」において、遠隔講義として「外国語教育における遠隔講義システムの活用」と題して実践報告を行った。
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国際衛星ネットワークによる教育交流支援の高度化に関する研究
基盤研究(C)
研究期間: 2002年04月 - 2005年03月
情報通信技術が語学、科学技術、文化等さまざまな分野での国際的な教育交流を支援するには、既存のシステムを円滑に運用するための高度化を図ると共に、実用化を視野に入れた構成が必要である。本研究では、総務省ポストパートナーズ計画と連携することにより、大学間衛星ネットワーク「スペース・コラボレーション・システム」(SCS)設置大学に対して国際教育交流を円滑に進める基盤を提供し、次世代国際ネットワークの構築を目指した。そのために、1)国際交流実験とその実験ツールの開発及び2)データ伝送ネットワークの構成検討を実施した。 1)国際交流実験とその実験ツールの開発国際交流の実用化段階においてシステム的制約、コーディネート等制度面での問題を検討するため、継続的教育交流として総務省新ポストパートナーズ計画の衛星地球局が設置されているタイ・モンクット王工科大学との間で国際衛星接続を行った。タイ・モンクット王工科大学での日本語授業に日本の大学との間でのコミュニケーションを図るという内容を想定し、交換映像に含まれる情報を有効利用する支援ツールを開発し、実装した。その結果、支援ツールの有効性を確認し、学習者の理解度向上に役立てられる可能性が示唆された。 2)データ伝送ネットワークの構成検討衛星通信を利用したコンピュータ・ネットワークの枠組みを検討するため、非対称衛星ネットワークの性能についてスペース・コラボレーション・システムを対象に計算機シミュレーションを実施した。信頼性マルチキャスト通信を行うためのネットワーク構成を評価し、同一セッション内に複数の送受信局が存在し、戻り回線が複数用意された場合の挙動を解析した。その結果、回線品質に従って送信帯域と戻り回線数を動的制御することによりスループット効率が改善される可能性が示唆された。
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遠隔合同授業による英語コミュニケーション能力の育成
基盤研究(C)
研究期間: 2002年04月 - 2004年03月
SCS、ISDN、IPベースのICTを活用して英語口頭能力育成を目指した合同授業を実施し、得られた知見や成果を学会や論文で発表した。また、本研究の基礎ならびに総括としての、英語口頭活動発表会や指導法検討会を行った。本年度実施した遠隔合同授業は3回である。まず、2003年5月に大学英語教育者を対象とした、遠隔合同授業の効果を論じる講演の一環として、秀明大学と秋田大学の間で遠隔合同授業を実施した。メディア教育開発センターの協力により、ISDNとSCSを介して接続し、パーラメンタリー・ディベートの一部を行った。7月には茨城大学が三重大学との間でSCSによる合同授業を実施した。茨城大学の学生が異文化間理解に関するプロジェクト研究の成果を口頭発表し、その後、三重大学の学生との間で質疑応答する形で行われた。10月にはメディアセンターを介し、SCSとISDNを接続して、秋田大学がハワイ大学との間で遠隔合同授業を実施した。多文化社会について双方でプレゼンテーションと質疑応答が行われた。いずれもEメールやインターネットの電子掲示板などを活用して学生、教員間で適宜、事前準備された。茨城大学では、FDの一環として、SCSとIPの接続実験が行われた。学内の複数キャンパスを結んで行われ、IPとSCSの長所と短所が比較検討された。さらに、本研究の根幹である、英語口頭活動発表会を12月に開催した。本研究の研究者らに加え、英語口頭能力育成に強い関心を持つ大学教育者らが指導する学生たちが一堂に会し、パフォーマンスを披露し、互いに批評しあった。