学会等発表 - 小川 泰正
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Geochemical behavior of As originated from acidic thermal water during river transport and sedimentation mechanism
Y. Ogawa, N. Shikazono, K. Iwane, Y. Takahashi, K. Suto, C. Inoue
Goldschmidt2011 (Prague, Czech Republic) 2011年08月 - 2011年08月
秋田県玉川温泉を代表する源泉である大噴にはヒ素が含まれている.渋黒川―玉川はこの酸性河川が流入する.流下過程で支流が混入し,河川のpHが上昇するに従い,鉄水酸化物が生成され,上流から下流に向けてヒ素がこれらに吸着される.鉄水酸化物生成には,鉄酸化細菌の影響を受けるものと考えられる.これらを吸着した鉄水酸化物は下流の玉川ダムによる人造湖(宝仙湖)湖底に沈殿する.湖底に堆積した鉄水酸化物は,硫酸還元菌の作用により2価鉄イオンに還元され,吸着していたヒ素の一部は3価溶存成分として溶出されるが,大部分のヒ素は恐らく硫化鉱物に取り込まれ,固定化されているものと推測される.
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建設残土堆積情における重金属類の形態評価
増田俊介,小川泰正,須藤孝一,井上千弘
第18回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (川崎(神奈川)) 2011年06月 - 2011年06月
海性堆積物を主体とする建設残土処分場より採取した試料を用いて,嫌気性条件下で溶出試験を行った.カドミウム,鉛の溶出量が低かったことから,掘削後,直ちに処分を行ったため,硫化鉱物の分解が起こらなかったものと考えられる.一方で,5価ヒ素の著しい溶出が確認された.これらのことから,硫化鉱物の分解,その後の岩石成分への取り込み以外に,ヒ素の溶出挙動を決定する反応が存在することが示唆された.
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酸性河川での有害元素,レアメタルの分別,堆積挙動に及ぼす非晶質鉄,アルミニウム水酸化物の影響について
梶原雅博,小川泰正,土屋範芳
資源地質学会第61回年会 (東京) 2011年06月 - 2011年06月
酸性河川中での地球化学的挙動は,鉄やアルミニウムを主体とした懸濁物,河床沈殿物への吸着反応により支配される.ヒ素はpH2.5以下の酸性条件下でさえ,鉄水酸化物に効果的に吸着されることを確認した.ガリウムは,pH2.5以上から吸着され始め,鉄水酸化物,鉄―アルミニウム混合水酸化物,アルミニウム水酸化物の順に効果的に吸着除去される.インジウムは,pH3.5以上で,鉄水酸化物,鉄―アルミニウム混合水酸化物に吸着される.鉛は,pH2.5以上で,鉄水酸化物,鉄―アルミニウム混合水酸化物に効果的に吸着される一方で,アルミニウム水酸化物への吸着はより高いpHでないと起こりにくい.吸着反応は,塩酸酸性下よりも硫酸酸性下において,より促進される傾向が見られた.
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酸性温泉由来の有害元素,レアメタルの河川流下過程における地球化学的挙動と元素濃集に及ぼすダムの影響について
小川泰正,梶原雅博,土屋範芳,石山大三,岩根健太,鹿園直建
資源地質学会61回年会 (東京) 2011年06月 - 2011年06月
pH 2の群馬県草津温泉は,石灰投入により瞬時にpHが5以上まで上昇する.同温泉由来のほぼすべてのヒ素,インジウムは,中和過程で生成した鉄水酸化物に吸着され,鉄水酸化物は下流のダム湖に蓄積される.一方で,秋田県玉川温泉は,石灰投入と支流との混合により中和が進むため,ヒ素はpHの低い上流部で,インジウムはよりpHが高い下流ダム湖入口付近で吸着されるため,ヒ素,インジウム間の元素間分布が生じる.そのため,ヒ素に対してインジウムが効率的に下流ダム湖湖底に堆積する.
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The applicability of dynamic reaction cell (DRC)-ICP-MS for determination of Cr, Fe and As in river water
Y. Ogawa, S. Yamasaki, N. Tsuchiya
6th International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2009年03月 - 2009年03月
ICP質量分析装置による鉄,クロム,ヒ素の分析では,アルゴンに起因する干渉が大きな問題となるが,アンモニアガスをDRCシステムの反応ガスとして用いることで,土壌,岩石,河川水中の鉄,クロムの定量分析を精度良く行えることがわかった.ヒ素の場合は,鉄,ニッケル,コバルトとアンモニアとの反応で生じたクラスターイオンの影響を受けるため,DRCシステムの適用は不適当であると考えられる.一方で,河川水中には,これら干渉に起因する成分はあまり含まれていないため,適用の可能性はある.これらの結果を踏まえ,鉱山廃水が流入する秋田県小坂川中の成分分析の実例を紹介した.
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The applicability of dynamic reaction cell (DRC)-ICP-MS for determination of Cr, Fe and As in river water
Y. Ogawa, S. Yamasaki, N. Tsuchiya
6th International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2009年03月 - 2009年03月
ICP質量分析装置による鉄,クロム,ヒ素の分析では,アルゴンに起因する干渉が大きな問題となるが,アンモニアガスをDRCシステムの反応ガスとして用いることで,土壌,岩石,河川水中の鉄,クロムの定量分析を精度良く行えることがわかった.ヒ素の場合は,鉄,ニッケル,コバルトとアンモニアとの反応で生じたクラスターイオンの影響を受けるため,DRCシステムの適用は不適当であると考えられる.一方で,河川水中には,これら干渉に起因する成分はあまり含まれていないため,適用の可能性はある.これらの結果を踏まえ,鉱山廃水が流入する秋田県小坂川中の成分分析の実例を紹介した.
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The influence of grain sizes and chemical weathering level on extractability of elements from sedimentary rock
Y. Ogawa,S. Yamasaki,N.Tsuchiya
5th International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2008年09月 - 2008年09月
土壌中からの有害元素溶出リスク評価に関しては,環境省に定められた規定があるが,岩石に対してはリスク評価法が確立されていない.土壌とは異なり,試験室レベルで評価を行うには試料を粉砕,粉末化しなければならない.従って,岩石の粒径の違いが溶出に対してどのように影響を与えるのかを調べる必要がある.2-1,1-0.5,0.5-0.25mm,0.25mm以下に粉砕,整粒した黒色粘板岩及び粉末試料を用いて,環境省告示18号試験に準じた方法で溶出試験を行った.2mm以下に粉砕すれば再現性があり,過剰溶出も起こらないことが判明した.一方で,粉末試料を用いた場合は,再吸着が起こり,溶出量を過小評価してしまう恐れがあることがわかった.
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The influence of grain sizes and chemical weathering level on extractability of elements from sedimentary rock
Y. Ogawa,S. Yamasaki,N.Tsuchiya
5th International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2008年09月 - 2008年09月
土壌中からの有害元素溶出リスク評価に関しては,環境省に定められた規定があるが,岩石に対してはリスク評価法が確立されていない.土壌とは異なり,試験室レベルで評価を行うには試料を粉砕,粉末化しなければならない.従って,岩石の粒径の違いが溶出に対してどのように影響を与えるのかを調べる必要がある.2-1,1-0.5,0.5-0.25mm,0.25mm以下に粉砕,整粒した黒色粘板岩及び粉末試料を用いて,環境省告示18号試験に準じた方法で溶出試験を行った.2mm以下に粉砕すれば再現性があり,過剰溶出も起こらないことが判明した.一方で,粉末試料を用いた場合は,再吸着が起こり,溶出量を過小評価してしまう恐れがあることがわかった.
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Possible mechanisms of REE fractionations as colloidal particles during the chemical weathering
Y. Ogawa,S. Yamasaki,N.Tsuchiya
Water-Rock Interaction 12 (Kunming, China) 2007年07月 - 2007年08月
岩石の風化レベルの違いが希土類元素の溶出に対してどのように影響を与えるのかを調べる必要がある.風化レベルの異なる黒色粘板岩を用いて,溶出試験を行った後,0.45,0.2μm,限外ろ過(100kDa)を連続的に行ったところ,未風化岩石からは,真溶存種として希土類元素が溶出するのに対し,風化岩石からは真溶存種としての溶出は起こらず,コロイド粒子として環境中に放出され得ることが判明した.また,コロイド粒子と各希土類元素間の結合力には違いがあり,このことは,希土類元素が風化過程でコロイド粒子溶出される場合,化学的性質が類似していると希土類元素間でも分別が起こり得ることが示唆される.
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Possible mechanisms of REE fractionations as colloidal particles during the chemical weathering
Y. Ogawa,S. Yamasaki,N.Tsuchiya
Water-Rock Interaction 12 (Kunming, China) 2007年07月 - 2007年08月
岩石の風化レベルの違いが希土類元素の溶出に対してどのように影響を与えるのかを調べる必要がある.風化レベルの異なる黒色粘板岩を用いて,溶出試験を行った後,0.45,0.2μm,限外ろ過(100kDa)を連続的に行ったところ,未風化岩石からは,真溶存種として希土類元素が溶出するのに対し,風化岩石からは真溶存種としての溶出は起こらず,コロイド粒子として環境中に放出され得ることが判明した.また,コロイド粒子と各希土類元素間の結合力には違いがあり,このことは,希土類元素が風化過程でコロイド粒子溶出される場合,化学的性質が類似していると希土類元素間でも分別が起こり得ることが示唆される.
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REE behavior during anhydrite and gypsum formations of the Kuroko type massive sulfide-sulfate deposits
Y. Ogawa, N. Shikazono
3rd International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2005年11月 - 2005年11月
黒鉱鉱床産硬石膏中は,ストロンチウム含有量,同位体比,コンドライト規格希土類元素パターンより,2つのタイプに大別される.どちらの硬石膏も,生成温度,熱水/海水混合比など大きな違いはないものと推測されることから,初生的にはType I硬石膏が生成されたものと考えられる.また,硬石膏水和により2次的に生成した石膏中も,Type IIと類似する特徴を有するものが存在していた.以上の結果より,Type IIの硬石膏は,Type Iが熱水に富んだ条件の中で再結晶をする過程で,軽希土類元素が溶出したものと推測される.
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REE behavior during anhydrite and gypsum formations of the Kuroko type massive sulfide-sulfate deposits
Y. Ogawa, N. Shikazono
3rd International Workshop on Water Dynamics (Sendai, Japan) 2005年11月 - 2005年11月
黒鉱鉱床産硬石膏中は,ストロンチウム含有量,同位体比,コンドライト規格希土類元素パターンより,2つのタイプに大別される.どちらの硬石膏も,生成温度,熱水/海水混合比など大きな違いはないものと推測されることから,初生的にはType I硬石膏が生成されたものと考えられる.また,硬石膏水和により2次的に生成した石膏中も,Type IIと類似する特徴を有するものが存在していた.以上の結果より,Type IIの硬石膏は,Type Iが熱水に富んだ条件の中で再結晶をする過程で,軽希土類元素が溶出したものと推測される.
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Geochemical behavior of rare earth elements in altered rocks in Kuroko mining area
N. Shikazono, Y. Ogawa
Goldschmidt2004 (Copenhagen, Denmark) 2004年06月 - 2004年06月
黒鉱鉱床が点在する地域に酸性岩は広く分布する.秋田県大館市より採取した酸性岩中の希土類元素の化学分析を行った.黒鉱鉱床下盤では負のユーロピウム異常が見られたことから,選択的に2価ユーロピウムイオンの溶出が起こったものと考えられる.対して,鉱床上盤では正のユーロピウム異常が見られることから,2価ユーロピウムイオンが付加された可能性がある.また,La/Yb比は酸素同位体比と正の相関関係にあり,このことは,熱水中の軽希土類元素が岩石中に付加された可能性を示唆している.
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Geochemical behavior of rare earth elements in altered rocks in Kuroko mining area
N. Shikazono, Y. Ogawa
Goldschmidt2004 (Copenhagen, Denmark) 2004年06月 - 2004年06月
黒鉱鉱床が点在する地域に酸性岩は広く分布する.秋田県大館市より採取した酸性岩中の希土類元素の化学分析を行った.黒鉱鉱床下盤では負のユーロピウム異常が見られたことから,選択的に2価ユーロピウムイオンの溶出が起こったものと考えられる.対して,鉱床上盤では正のユーロピウム異常が見られることから,2価ユーロピウムイオンが付加された可能性がある.また,La/Yb比は酸素同位体比と正の相関関係にあり,このことは,熱水中の軽希土類元素が岩石中に付加された可能性を示唆している.
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Several factors controlling the chemical composition of the hydrothermal solutions in the hydrothermal system
Y. Ogawa, N. Shikazono,D. Ishiyama,H. Sato,T. Mizuta
Goldschmidt2003 (Kurashiki, Japan) 2003年09月 - 2003年09月
玄武岩,玄武岩質安山岩,安山岩,流紋岩と硫酸イオンを含まない疑似海水を用いた実験において,カルシウム,カリウム,鉛を多く含む岩石中との反応で,同元素の高濃度の溶液が生成されるが,亜鉛,銅ではそのような傾向は見られなかった.反応前の脱気の有無を比較すると,脱気を行わなかった場合の方が反応溶液のpHは低く,亜鉛,銅は溶出される傾向にあった.
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Several factors controlling the chemical composition of the hydrothermal solutions in the hydrothermal system
Y. Ogawa, N. Shikazono,D. Ishiyama,H. Sato,T. Mizuta
Goldschmidt2003 (Kurashiki, Japan) 2003年09月 - 2003年09月
玄武岩,玄武岩質安山岩,安山岩,流紋岩と硫酸イオンを含まない疑似海水を用いた実験において,カルシウム,カリウム,鉛を多く含む岩石中との反応で,同元素の高濃度の溶液が生成されるが,亜鉛,銅ではそのような傾向は見られなかった.反応前の脱気の有無を比較すると,脱気を行わなかった場合の方が反応溶液のpHは低く,亜鉛,銅は溶出される傾向にあった.
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Water - rock reaction experiments for application to the formation of Kuroko deposits
Y. Ogawa, N. Shikazono,D. Ishiyama,H. Sato,T. Mizuta
Goldschmidt2002 (Davos, Switzerland) 2002年08月 - 2002年08月
未変質流紋岩,玄武岩を用いた疑似海水―岩石反応において,玄武岩を用いた実験ではカルシウム,流紋岩を用いた実験ではカリウムに富む熱水が生成され得ることがわかった.また,水―岩石反応に伴い,疑似海水中のマグネシウム,カルシウム,ストロンチウムが岩石中に取り込まれてスメクタイト化が進行するのに対し,スメクタイトを含む弱変質デイサイトを用いた実験では,マグネシウムのみが岩石中に取り込まれ,カルシウム,ストロンチウムが溶出されることから,黒鉱地域に広く分布する酸性岩の熱水変質に伴う元素の挙動には,少なくとも2つのステージがあることが判明した.
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Water - rock reaction experiments for application to the formation of Kuroko deposits
Y. Ogawa, N. Shikazono,D. Ishiyama,H. Sato,T. Mizuta
Goldschmidt2002 (Davos, Switzerland) 2002年08月 - 2002年08月
未変質流紋岩,玄武岩を用いた疑似海水―岩石反応において,玄武岩を用いた実験ではカルシウム,流紋岩を用いた実験ではカリウムに富む熱水が生成され得ることがわかった.また,水―岩石反応に伴い,疑似海水中のマグネシウム,カルシウム,ストロンチウムが岩石中に取り込まれてスメクタイト化が進行するのに対し,スメクタイトを含む弱変質デイサイトを用いた実験では,マグネシウムのみが岩石中に取り込まれ,カルシウム,ストロンチウムが溶出されることから,黒鉱地域に広く分布する酸性岩の熱水変質に伴う元素の挙動には,少なくとも2つのステージがあることが判明した.