研究等業績 - 原著論文 - 大橋 純一
-
北奥方言に見られる狭母音音節の諸相―調音・口形の構造的分析―
大橋純一
国語学研究 ( 59 ) 274 - 287 2020年05月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
東北方言の狭母音音節は中舌音となる傾向があり、またそのことが/-i/を欠く北奥方言とその逆の南奥方言を区画する有効な分類指標ともなってきた。しかしこれについては、同じく現象が指摘されている低母音化や、円唇・非円唇といった口唇上の特徴もあわせ考えることが重要である。本稿では、以上の実相を舌調音と口唇とが連動する構造的な現象と捉え直し、新視点からの分析を行った。
-
相手への働きかけの態度と韻律など音声諸現象との関連
大橋純一
『生活を伝える方言会話ー分析編ー』ひつじ書房 25 - 42 2019年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
本稿は、場面設定による会話資料を音声データとして見た場合、設定場面に応じてどのような特徴が抽出されうるかを考察するものである。分析の結果、F0の現れ方や強さのバリエーションはもとより、話速や間にも大きな差があること、長音化に情感を込めるタイプのほか、リズム調整や発話自体のコントロールにも通じる要素がありそうなことなどが明らかとなった。
-
書評 林直樹著『首都圏東部域音調の研究』
大橋純一
日本語の研究 15 ( 2 ) 102 - 109 2019年08月 [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
首都圏東部域音調の特殊性とあいまい性を考察した本書について、その成果と意義を概説するとともに、当該音調の追究を進めるうえで課題となる事項、および今後に展望される事項の提言を行った。
-
新潟県から見た信州方言
大橋純一
学海 ( 3 ) 3 - 16 2017年03月 [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
「方言に残る古語」をテーマに、新潟・信州の県境などに観察される歴史的な古音(ハ行唇音、ガ行鼻音、オ段長音)を取り上げ、その実態と歴史的な意味について考察した。具体的には、当該の地域に全国的にもほとんど類例のない発音が観察されること、それらと古文献を対照すると両者には思いもよらない一致がみとめられること、以上はいずれも相応の地理環境を背景とした中央語の名残と受け取れることを論じた。
-
地域言語・方言 日本語学界の展望
大橋純一
日本語の研究 12 ( 3 ) 99 - 106 2016年07月 [査読有り] [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
日本語学会の研究の動向や展望について、「地域言語・方言」の立場から、その特徴的な動きと成果を論じた。具体的には、当該研究分野の母体である「日本方言研究会」が創立50周年という節目の年を迎えたこと、その経年的な節目であることを後ろ盾に、研究の実質的な展開(中でも「新しい研究」への志向)が模索されたこと、その結果、各言語要素の研究において、次世代に繋がる重要な成果の得られたことを論じた。
-
口唇の特徴から見た東北方言の合拗音の諸相―ハ行唇音との比較を通して―
大橋純一
方言の研究 ( 1 ) 5 - 27 2015年09月 [査読有り] [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
東北方言に痕跡のみとめられる合拗音について、主に口唇特徴の面から分析を行い、その衰退過程に聴覚だけでは認識されない段階的諸相が内在することを明らかにした。次いで、同様の分析から既に実態の得られているハ行唇音の場合と比較し、両事象に主として口唇形状の差異に由来する変化の諸相が辿られること、しかしそのバリエーションを含め、両事象の痕跡の在りかたには大きな相違があることを明らかにした。またその差が生じる要因について、両発音の調音法上の差異の観点から考察を行い、口唇面で得られた知見とも照らし合わせながら、指摘しうることを論じた。
-
日本全国イチオシ方言―新潟県
大橋純一
日本語学 2015年09月 [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
新潟県方言を特徴づける2つのことばをとりあげ、意味・用法・語源等の言語学的解説を行うとともに、それらの表現の面白さ、良さ、および県民の使用実態について論じた。
-
書評 高田三枝子著『日本語の語頭閉鎖音の研究―VOTの共時的分布と通時的変化―』
大橋純一
日本語の研究 8 ( 4 ) 37 - 43 2012年10月 [招待有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
日本語の語頭閉鎖音が破裂直前の声帯振動の有無において明確な地域差があるとする論に対し,その分析手法や解釈にどのような功罪があるかを論じた.また当著の成果を踏まえ,今後当分野が学界に寄与しうる事項について具体的な展望を述べた.
-
口形分析によるハ行唇音の諸相と展開-東北方言における-
大橋純一
音声研究 15 ( 3 ) 37 - 47 2011年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
東北方言に痕跡がみとめられるハ行唇音の実相とその衰退の様相を,高年層話者の口形分析と音響分析との対照を通して明らかにしようとした.その結果,唇音が唇歯音や平唇音の段階を経て声門音化していくこと,またその過程に唇音の痕跡を口形のみにとどめるもの(実際音は共通語音相当の声門音)があることが明らかとなった.
-
若年世代の言語動態に関する一考察
大橋純一
ことばとくらし ( 第22号 ) 18 - 30 2010年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
言葉には,時代とともに社会的な認知を伴って変容し,徐々に定則化していくものがある.「やらさせて下さい」のような“サ入れ言葉”,「すごい美味しい」のような“形容詞の副詞的用法”などがそれである.本稿では,こうした言語動態を若年世代の多人数調査によって把握し,日本語の推移の方向性を予見した.
-
<特集>平成17年 18年国語国文学界の動向-国語学 方言・音韻
大橋純一
文学・語学 ( 第190号 ) 73 - 78 2008年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
2005~2006年に公刊となった方言・音韻関連の著書・論文を言語要素別に概観するとともに,そこからうかがえる学界の潮流,特徴,意義等を論じ,その今後を展望した.
-
新潟県方言音声の研究-岩船郡関川村南赤谷方言の音声-
大橋純一
ことばとくらし ( 第18号 ) 1 - 15 2006年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
新潟県関川村は,山形県との県境に位置し,新潟県方言にありながらも,それ(山形県南西部方言)との過渡的な性格を有する.本論では,その音声特徴を,母音・子音の双方にわたって体系的に記述した.
-
新潟県南部方言のオ段長音開合現象-老年男・女各1名の音響的実相及び発音口形の比較-
大橋純一
日本語科学 ( 第19号 ) 31 - 53 2006年04月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
新潟県津南町方言に残存するオ段長音開合現象を追究.実相のフォルマント分析と口形のビデオ解析を通して,特に合音系の語にu~o狭の段階的な諸相がみとめられること,それに即して円唇・非円唇の度合いや開口度にも諸段階があることを明らかにした.
-
新潟県阿賀北地域における語中・尾ガ行音
大橋純一
社会言語科学 第7巻 ( 第1号 ) 30 - 40 2004年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
新潟県阿賀野川以北の小域に,いわゆる入り渡り鼻音の分布が存在する.全国的にも稀少となった当現象の現状を阿賀北全域の地理学的調査によって分析.上記の現象が当域にはなお根強く残存すること,ただし,実相の現れ方に当該音節末の母音をはじめとする音環境の規制が強く働いていることを論じた.
-
福島県相馬市方言における語中ガ行入り渡り鼻音
大橋純一
国語学研究 ( 第43集 ) 39 - 51 2004年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
福島県浜通地区に残存する語中ガ行入り渡り鼻音について追究.中世来の入り渡り鼻音が当方言において急速に衰微しつつあること,その結果,鼻濁音と明確には弁別されない一種の音声的・バリアント的性格に落ち着きつつあることが明らかになった.
-
新潟県方言オ段長音開合現象の研究-中魚沼郡津南町大字結東前倉方言における一老年女性の口形・音響的実相について-
大橋純一
ことばとくらし ( 第15号 ) 1 - 10 2003年10月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 国内共著
新潟県津南町前倉のオ段長音開合現象について,老女性1名を対象とした重点的追究を行った.具体的には,開合各90語強の発音実態を全てフォルマント数値によって定量化し,その開的性質・合的性質を考察した.
-
東北方言におけるガ行鼻音の動向
大橋純一
文芸研究 ( 151集 ) 19 - 28 2001年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
国語史上,長く標準語音の地位を占めてきたガ行鼻音が,近年,衰微の傾向にある.その現状が東北方言においてどのようであるかを,拠点方言の多人数調査と諸方言の多地点調査により検討.東北方言の衰退が他域のそれよりも後行していること,その傾向は北奥北部域に最も顕著であり,まさに周圏論的な動向を歩みつつあることを論じた.
-
北奥方言・南奥方言における/si/ /su/・/ci/ /cu/・/zi/ /zu/
大橋純一
国語学研究 ( 第39集 ) 24 - 37 2000年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
北奥・南奥接境域方言における/-i/の合一化現象を,音響学的な観点から,また既報告とも対照しつつ,調査追究した.その結果,合一化は非中舌音から生じた現象であるとする従来説よりも,接触する北奥・南奥の各中舌音が相克葛藤して生じた現象であると解する方がより合理的であることを論じた.
-
.宮城県山元町方言における語中・尾カ行子音の有声化・半有声化現象について-多人数話者の場面差および音意識の面から-
大橋純一
国語学研究 ( 第36集 ) 23 - 32 1997年03月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
従来,論じられることの少なかった半有声化音に焦点をあて,それがどういった音響的性質を有し,どのような条件下で生じるのかを宮城県山元町の多人数話者を対象に検討を行った.それにより,その曖昧な中間音は,当人の音意識と実際の発音傾向との相克葛藤から生じているものであることを論じた.
-
埼玉特殊アクセントの個人差と地域差-三領域間における二拍名詞の体系的変化動向を比較しつつ-
大橋純一
国語学 ( 187集 ) 1 - 14 1996年12月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
埼玉特殊アクセントに特徴とされる個人差と地域差を,多地点・多人数の実態を対照することを通して明らかにしようとした.その結果として,各領域には類対立に基づく共通の体系的変化がみとめられること,また,地点内・地点間の差異は,いずれも変化の遅速差による相対的な現象であることを論じた.
-
埼玉県蓮田市高虫方言のアクセント-二拍名詞の変化動向に注目して-
大橋純一
音声学会会報 ( 209 ) 24 - 32 1995年08月 [査読有り]
研究論文(学術雑誌) 単著
埼玉特殊アクセントの典型地点である蓮田市に焦点を絞り,そこに生じている変化動向を多人数の実態に即して検討.従来,曖昧~一型化の過程上にあると言われてきた当アクセントに,多型的な性格とそれに基づいた変化の道筋が認められることを明らかにした.